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エピローグ

「あ、ごめんなさいね」


 すっと、胸に押し付けられていた鉄パイプが引かれた。


 お? おおん?

 周りは真っ暗、じゃなくて夜。

 リゼットちゃんの魔法で作られた火があたりを照らしている。


 しばらく何が起こったのか分からなかったけど……これは、レティシアさんに会う前に戻ってきたのか。


 ……って、何にも変わってなーい!!

 女神パワーで何もかもなかったことに~♪ みたいなイメージだったけど、何にも変わってない~!

 周りは物騒だし、エリヴィラちゃんとマリオンちゃんはゴーレムの中だし、俺はメイド服だし!


 いや、メイド服はいいや。

 かわいいから!

 この髪で耳作るやつ、めっちゃ可愛い!

 セットに時間かかるし、頭がかゆくなったら地獄な感じがするけどめっちゃ可愛いの前には我慢できそう。

 他の子にもやってみてほしい!

 流行れ!

 いやいやいや、メイド服にケモ耳はかわいいけど、これどうすんのレティシアさん!?


「もー、危ないわよ。気をつけなきゃ」

「はい。すいません。よいしょ」


 ん、状況は変わっていないけど、なんか雰囲気がゆるゆるしている。

 レティシアさんと話す前までのビリビリとは大違いで。


「モーリア先生ー、やっぱりここダメです。地盤がゆるゆるですね」


 ゴーレムからエリヴィラちゃんが身を乗り出す。

 長い髪はツヤツヤサラサラで、肌を汚していた血も傷も全くない!


「エ、エリヴィラさん! 大丈夫なのね! ケガはないのね!?」

「お姉さま! ケガなんて。私にはこのくらいしかできませんけど……ゴーレムの扱いは慣れてますから」

「本当、エリヴィラさんが居てよかったわ。急にこんなことになるなんて」

「ここの木の根っこが腐ってたみたいですぅ。土の中がスカスカになってしまって地盤がぐらぐらになっちゃったみたいですよぉ」


 リゼットちゃんに、エリヴィラちゃんの隣からマリオンちゃんが伝える。


「とりあえずはこの鉄棒を入れてなんとか時間を稼ぎましょう。エリヴィラさんお願いできるかしら?」

「もちろんです」

「マリオンさんはエリヴィラさんがケガをしないようにお願いします」

「はーい! 魔法じゃなかったらマリオンは無敵だもーん」


 お、お、おおぅ?


 レティシアさんが、状況は変えられないけど意識とか記憶とかがどうとかってこういうことか?

 あの状況を、なんかエリヴィラちゃんが急な工事の手伝いかなんかをしてるってことに捻じ曲げたのか!

 無理があるような気がするけど、うまくまとまってるならそれでよし!


「お義姉さま~。ほら、メイドにも出番はないですよ」


 グローリアちゃんがちょっと膨れて、俺のスカートをツンツンと引っ張る。


「え? あ、そうね?」

「メイドのふりしてお手伝いなんて……させるわけがないですよ。メイドは学園じゃなくて生徒についているんですから」

「そうなのねー。あまり詳しくなくて。うふふ」


 困った時は笑ってごまかすに限る。

 しかし、メイドになってお手伝いか……俺ならやりそう!!

 レティシアさん、イイ設定もってくるな。


「レティシア様、ここにいてもできることはありませんし、お部屋でエリヴィラさんたちが戻られた時の準備をしませんか?」


 エダがそんな提案をしてくる。


「エリヴィラさんはふだん共同浴場をお使いとか。今からでは大変ですし部屋のお風呂を使ってもらえたらと」

「それは! いい考えね!!」


 レティシアの入っているお風呂に、エリヴィラちゃんとマリオンちゃんが……いや、まさかとは思うが二人で入ったりしたら、スライム風呂。

 女の子スライムと女の子とか!!

 あー!!

 エッチなのは――いいと思いますが、エッチすぎるのはよくないんじゃないかな!?

 あー、マリオンちゃんがミニレティシアのままでも、形のないスライムでも、ほにょぽにょボールのスライムでも何でもおいしい。

 いや、三倍おいしい!


「早速準備しましょう!!」

「おおおお義姉さま! それならあたしの部屋でいいんじゃないですか!? そんなエリヴィラさんとマリオンちゃんだけずるっじゃなくて、あたしのお部屋のお風呂の方が大きいですし!」

「それは素晴らしい考えね!!」

「ほわぁ!?」


 俺はグローリアちゃんの手を思わず握っていた。

 ちっちゃいぷにぷにした手なのに、爪はけっこうしっかりしてるのがやっぱ獣人だなー。

 しかし、広いお風呂となれば一緒に入る可能性が上がるのではないか!!

 もちろん覗いたりはしない!

 女の子たちの素敵空間を、覗きなんていう犯罪で汚したくはない。

 だが、ドア一つ隔てた向こうに花園があると思うだけで……寿命が十年は伸びる。

 (尊すぎるとその時点で終わるが)


「そうと決まれば、早速準備しに行きましょう!」

「はぁい、お義姉さま♪」

「リゼットちゃん、終わったらエリヴィラちゃんたちと一緒に、グローリアちゃんの部屋まで来てね。休めるように準備しておくから」

「ありがとう、助かるわ」


 リゼットちゃんに一声かけて、グローリアちゃんの部屋に。

 エリヴィラちゃんがいないだけで妙にさみしく感じられたものだけど、人数が少なくてもこれからみんな揃うんだってわかってたら、もうめちゃくちゃ楽しい。


 あったかいお風呂に、軽く摘める軽食とお茶も準備していると……エリヴィラちゃん、マリオンちゃん、リゼットちゃんがやってくる。

 ああ、この部屋にエリヴィラちゃんがいるって、なんて素敵なことなんだろう。


 そして、俺はどうしてリゼットちゃんのことを忘れていたのだろう。

 リゼットちゃんだって、火であたりを照らし続けていたんだから暑かったし汗もかく。

 つまり……お風呂は三人で、ですよ!!


 ああー、ああ。

 三人でお風呂。

 女の子同士で、お風呂。


 なんかね、もう、語彙がないんですよ。

 なにも、言わなくても、わかるだろう?

 なぁ……


 そう、今、目の前に、お風呂であったまって、ホコホコしている、女の子、三人がいるんだ。

 さっきまで、一緒にお風呂に入っていた三人が。


 はぁ。


「――お義姉さまはどうするんですか?」

「は?」


 グローリアちゃんの言葉に脳が現実に戻ってきた。

 いや、現実にいても一緒のお風呂に入ったばかりの女の子が三人いるぞ?

 この嬉しいバグ何?


「だからー、お義姉さまは夏休みどうするんですか?」

「夏休み」


 夏休みか。

 そう、このリリア女子魔法学園にも夏休みはある。

 まだそんなに暑くないから実感はなかったけど、そんな時期なのか。

 別にいらんのに!

 つまんない学校ならともかく、ここでなら百年いられる。


「そうねぇ、家に帰るのも大変だし、寮に居させてもらおうかと」


 あの尻痛馬車で往復して、美形兄ちゃんに囲まれる生活はいやだ。

 お姉ちゃんたちなら考えてもいいか、兄ちゃんしかいないから考えるまでもなく拒否である。

 寮でエダと一緒に過ごす方が、百万倍いい。


「それなら――」

「あ、私も寮にいるんです。私も家は遠いので」

「わたしもそうよ」

「マリオンもです!」


 グローリアちゃんの声を遮って、エリヴィラちゃん、リゼットちゃん、マリオンちゃんが言う。

 え、嬉しい!


「まぁ、それは楽しい夏休みになりそうね」


「そんなのダメです!!」


 グローリアちゃんが叫んだ。


「せっかくの夏休みなんですから、もっと楽しいことをするべきです!! パーティとかピクニックとかコンサートに行ったり! 小旅行をしたり!」

「それも楽しそうねぇ」


 だけど、ヴェロネージェ家とレティシアたちとでは家の太さというのが違うのだ。


「ですから、皆さんをワタシの家に招待します! 家だったらここからも近いし、ゲストルームもいっぱいあるし!」

「けれど、悪いわ」

「お義姉さまはあたしのお義姉さまなんですから! ちっとも悪くないし!!」

「あ、そう、ね」


 そう、なるべく忘れようとしているので、とっさに出て来なくなるがグローリアちゃんのお兄さんと婚約してるんだよなぁ。

 いやだが、レティシアさんによると結構カワイイ男の娘だとか。


 男の娘は百合に入るのかは難しいところだ。

 外見と心問題。

 ついているか、ついていないかの問題。

 未だ俺に答えは出せない。


「だから、いいでしょ? 来てください~」

「そうね、お家の方がいいと言われたら」

「ダメなわけないです!!」

「けど……私たちは」


 エリヴィラちゃんがリゼットちゃんとマリオンちゃんを交互に見る。

 三人ともちょっと困った感じだ。

 レティシアはまあ、(あんまり認めたくないところでもあるが)いずれ親戚になる予定だけど、三人にはそういう接点がないもんなぁ。


「来てよ! あたしの友達なんだから、歓迎されないわけがないし!」

「友達……」


 エリヴィラちゃんが繰り返す。


「と、友だちよね!? モーリア先生は先生だから、先生だけどっ! 休みの間は友達でもいいんじゃない? いいはず!」

「グローリアさん、んな強引っすよ」

「でも~。休みの間なら~?」


 イルマちゃんとラウラちゃんが、ちらっちらっとリゼットちゃんを見る。


「そ、そうね……休みの間なら、まぁ……いいかもしれないわね」

「やった~」

「うひょー、楽しい夏休みになりそうっすね!」


「お友達、ですか?」


 マリオンちゃんが探るようにエリヴィラちゃんを見て、


「そうなんじゃない?」


 エリヴィラちゃんがそっけなく、だけどちょっと赤くなって紅茶のカップを口に寄せる。


 くはっ。

 心臓に来ますな!!!


 エリヴィラちゃんのごたごたがあるまで、みんなここまで仲が良くなかった気がするんだけど……

 なかったことになってしまったとはいえ、あの日々のことはきっとみんなの心の奥底に残っているのだろう。


 女神レティシアさん、なんていい仕事をしてくれるのか!!


 今も彼女は俺たちを見守っていてくれるのだろうか?


 愛だとかなんたか俺にはよくわからないけれど、どこか遠い場所で彼女がほほ笑んでいられるように……俺は女の子たちを見守り続けるのだ!


 そこに美しく百合が咲く限り!!


ゆるゆると第一部完となりました。

長くお付き合いありがとうございます。


そしてこれから何も変わらず2部というか、とりあえず夏休み編入りますので、皆さんよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです これからも投稿頑張ってください
[一言] 男の娘と女の子のカプは百合にあらず、性別上どうあがいても野郎なんだよなあ... そもそもガールズラブ名乗っておきながら男の娘がメインだったりしたら大体荒れる...というかそんな作者居たらミュ…
[気になる点] 展開に困って無理矢理方向転換したでしょう...w 叩かれるよ? この作品を本当に好いている人がいるならだけれど...
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