やらかしたー!
「持ってきなさい! 私の全部くれてやるから、これ以上誰かを傷つけるのは許さない!」
胸にごりっとした鉄を感じる。
あーあーあー。
やらかしたー!
本当にやらかしたわー!
やー、これヤバいよなー。
なんかただの鉄パイプ突き付けられてるだけっぽいので、緊張感まるでないんだけど。
いや、鉄パイプとか武器にするってかなり物騒だけどね?
けど、先生たちのシスター服に鉄パイプってアンバランスさがこんな時だけど……グッときます!
昔の映画にセーラー服と機関銃ってのがあるんでしょ?
観たことないけど。
ギャルに日本刀持たせたりするゲームとかあるし、やっぱこのアンバランスな魅力ってのは世代を超えてくるものがあるんだと思います!
それどころじゃないんですけどね!!!
今、ころされかけてるんで!
まーねぇ、死ぬのはいいんだよ。
よくないけど。
全然よくないけど、俺多分一度死んでるし、今の状態ってボーナスステージみたいなもんじゃん?
そんな俺のために、エリヴィラちゃんたちが悪者にされたりとかありえないわけで。
心残りは、レティシアの体を傷つけてしまうことと、みんなを悲しませてしまうことだけ。
特にエダとリゼットちゃんは、二度もレティシアと別れなきゃならないわけで。
あー、ごめん。
ごめんなさい。
やっぱみんなの言う通り、隠れてればよかったかなぁ?
けれど、学園全体を巻き込んでここまでするやつらは何をしてくるかわからないわけで。
レティシアに擬態したマリオンちゃんもマジ狙われてたし。
魔法じゃなきゃ平気だもん! とか言ってたけど、なんかの拍子に魔法使ってくるかもしれないじゃん!
エリヴィラちゃんのゴーレムもすごいけど、先生たち寄ってたかってだし絶対危ないじゃん!
やっぱこうするしかなかった。
ごめんな。
ああ、見たかったなぁ。
大人になったエダを。
先生として活躍するリゼットちゃんを。
レディになったグローリアちゃんを。
胸を張ってゴーレムを操るエリヴィラちゃんを。
自分だけの姿を見つけたマリオンちゃんを。
みんなのこれからを見たかったなぁ。
みんなが恋をして、愛を知っていくのを傍らで見守りたかった。
それにレティシアがいつか帰って来るまで、この体を守ってたかったけど。
「……ごめんね、レティシア。だけど、守りたいの。私の全部で」
守りたいんだ。
もうできないけど……信じてる。
みんなの行く先に、美しい百合が咲くことを――




