みんなでおてつだい
飛竜便がやってきてから、エリヴィラちゃんは始終ソワソワ。
一体何が届いたのかしらないけど、よっぽどいいものなんだろうなぁ。
届いた荷物を楽しそうに開封するエリヴィラちゃんを想像するだけで心はホッコリである。
いや、荷物の中に淡い恋心を抱いていて、お互いに気にしつつもそれが恋なのかがわからずなんとなく距離を取ってしまって、けんかしたわけでもないのにじわじわ疎遠になってしまった幼馴染の女の子からのお手紙が入っていて……なんて展開とかはないですかね!?
欲張りすぎですかね!?
まぁ、そんな神展開がなくても、エリヴィラちゃんが嬉しいものが入っているならば俺もうれしい。
女の子たちが幸せなことが俺の幸せなのだ!!
「はい。それでは本日のホームルームは終了です」
『ありがとうございます』
リゼットちゃんの言葉に反応して、みんなでお辞儀をする。
毎日の儀式なんだけど、前の学校の起立―、礼―、着席―。のおざなりなアレとは違って、ふわっとスカートを摘んで優美な一礼!
かっはー!
いいね!!
特に帰りの一例は放課後のことを考えながらも、お嬢様たちに刻まれた動きであくまで優美な一礼!
じっくり眺めたいところなのだが、俺も現在そのオジョウサマの一員なので一緒にお辞儀しちゃうんだよな。
惜しい。
エリヴィラちゃんは慌て気味に帰り支度をして鞄を胸に抱く。
「お姉さま、私今日は……」
「急ぐの?」
と、聞いたのは俺じゃなくてグローリアちゃんだ。
「ええ。荷物が届いてるはずだから」
「ああ、今週はちょっと遅かったけど、着てたわね飛竜便。でも今行っても無駄よ。検査があるから受け取れるのは夕食の後だし」
「そうなの?」
「いつもそうじゃない」
「……荷物、受け取るの初めてだから知らなくて」
あー、グローリアちゃんの所にはいろいろ届くもんなぁ。
レティシアにもほとんど届かないし、たぶんグローリアちゃんが特別な方だと思う。
「じゃあ、受け取り方教えてあげるわ!」
「ありがとう」
「グローリアさんいつも自分で行かないじゃないすか」
「リリアーナさんとニコーレさんの仕事だよね〜」
「あ、あたしにだって受け取り方を教えるぐらいできるわよ!!」
「じゃあ、夕食の後は、マリオンとお姉ちゃんの二人だけで遊べるね」
マリオンちゃんがするっと腕を組んでくる。
「マリオンちゃんは寮が違うじゃない!!」
「消灯までに帰れば問題ないもーん」
じゃれ合うグローリアちゃんとマリオンちゃんの隣で、エリヴィラちゃんは沈んだ様子。
よっぽど荷物が待ち遠しいんだろうなぁ。
なんとかできればいいけど……残念ながら、できることないしなぁ。
ま、グローリアちゃんやマリオンちゃんと話でもしてればすぐだな!!
ふふふ。
仲良しの娘とのおしゃべりは時間を忘れさせてくれてるものだ。
俺もいつまででも眺めていられるし。
「気を付けてね」
「はい」
「先生―、これなんですが」
「なにかしら?」
教卓のリゼットちゃんもいつも通り忙しそうだ。
……いつも通り?
んん?
んー、んー、んんー?
「お姉ちゃん?」
「少しごめんなさいね」
マリオンちゃんに腕を離してもらって教卓に。
「リ……モーリア先生」
「ファラリスさん、何かしら?」
「お手伝い、いりますか?」
「今日は特に」
「お手伝いしますね」
ない。って言われる前に強引にかぶせる。
「……そう、なら、お願いするわ」
「はい。荷物をまとめてきますね」
「ええ」
席に戻って手早く帰り支度をする。
「お姉さま、モーリア先生がどうかしました?」
「うーん、ちょっとね。気分が悪そうだから」
「え? そんな風には見えませんけど?」
グローリアちゃんがリゼットちゃんの方を見て首をかしげる。
「わかるのよ。親友だもの」
正確には、リゼットちゃんと一緒に過ごしたレティシアの記憶からの推測ですけど。
気分が悪い時のリゼットちゃんの顔、あんなのだったからなぁ。
「くぁ!」
「んっ」
「むぅー」
グローリアちゃん、エリヴィラちゃん、マリオンちゃんがそれぞれに変な声を上げる。
何それ。
「あー、きっついのきたっすね」
「先に出会ったアドバンテージは~、どうやっても縮まらないから~」
「まー、幼馴染とかじゃないだけましっすよね」
「それ一番きついやつ~」
ラウラちゃんとイルマちゃんが楽しそうなこと話してるけど、涙を飲んでリゼットちゃんのお手伝いを!
その話、またいつか聞かせて!!
「お姉ちゃーん、マリオンもモーリア先生のお手伝いをお手伝いするー!」
「ちょっ、あたしもします!」
「……じゃあ、私も。荷物が届かないならすることないし」
「それじゃあ今日はみんなでモーリア先生のお手伝いね」
かー! 具合の悪い先生を気遣ってみんなでお手伝い。
心根が優しい!!
そしてリゼットちゃん人気の先生!!
なんてしあわせな風景か!
しっかり心に焼き付けねば!!
リゼットちゃんの準備室にみんなで荷物を運ぶ。
職員室もあるけど、ここでは教師の一人一人に準備室っていう小さな部屋が与えられてる。
教師でもあるけど、魔法の研究をしてる人も多いからそのせいかな?
「どうもありがとう」
「なんでもないわ」
いや、ほんと。
イルマちゃんとラウラちゃんも手伝ってくれたから、総勢6名のお手伝い。
運ぶ荷物なんてみんなで分け合えば片手で持てる量しかない。
まあ、お手伝いなんてただの口実だしな。
「それより大丈夫? 今日は早く部屋に戻って休んだほうがいいんじゃない?」
「平気よ。少し頭痛がするだけだから。最近多いの」
「平気じゃないわ。熱は?」
「ないわ」
「本当?」
実は辛いのに無理して言ってるんじゃないの? ってリゼットちゃんの額に触れた。
レティシアの少し青白い指と桜色の爪が、リゼットちゃんのオレンジが強い金髪に差し込まれる。
うう~む。
色味がいい!
レティシアはどーしても青白さがあるので、リゼットちゃんやエダみたいに健康的な子と並ぶと両方が引き立つのだ。
視点変更ぅうぅぅ!!
まだ実装されてねぇぇぇぇ!!!
「うん、熱はないみたいね」
本当はおでこどうしコツン。
が! ジャスティスだと思いますが!
中身が俺なので!! ダメです!!
百合に挟まる男には死あるのみ。
「だから言ったでしょ? でも、なんだか楽になったみたい。レティシアちゃんのおかげかしら?」
「私、何もしてないけど? おかしいわね」
「ふふ。そうね」
「ふふふ」
「お、お義姉さま。あたしも熱があるかも知れないです!」
グローリアちゃんがビシッと手を上げた。
「言われてみれば……私も?」
「マリオンもめまいが……するような気がしたり?」
「大変!!」
まさか、伝染病かこれっ!?
https://ncode.syosetu.com/n9297fy/
に、ちよこっと番外編?置いてますー。




