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プロローグ 最強な女魔王は失敗しただけ


「ぐああああああああああ!!! やらかしたああああああああああ!!!」


 複数の古風なランプによって薄暗く保たれている、小さな研究部屋の隅にある椅子に座りながら私____魔王アーヴェナ=シェイストームは絶叫していた。

 別に国を一つ滅ぼしたとか、くしゃみして地殻変動を起こしたとかそういう類の叫びではない。


 そう、確かに私は魔王として魔術を極め、世界の理にまで手を伸ばした偉大な魔術師だ(と自負している)。

 そこに至るまで約三百年と四十日と.........まぁいいか、いちいち数えるのも面倒だし。

 とにかく、そんなことに途方もない年月を費やした私には悩みがあった。

 それは____________


「恋がッ! 恋ができない!!!」


 そう、魔王である私は今生で一度も恋をしなかったのだ。

 一般的に『喪女』と呼ばれる類であることの自覚はある。そう、自覚だけなら。

 実際私は恋もしてみたかったし、庶民の女のように結婚生活へのあこがれも持っていた。

 

 しかし私は魔王。

 圧倒的な権力と恐怖によって万物を支配するべき存在。

 もちろん周囲の目もあることだし、私は今まで満足に他人と恋愛ができなかった。

 そしてもう仕方がないため魔王としての世界征服を、膨大な年月をかけてやり遂げて悔いもなくなった私はある魔術を研究していた。


 それは【転生魔術】。

 なんとも安直なネーミングセンスではあるが、この魔術は魔王である私が直々に開発した前代未聞の魔術なのだ。

 死後に肉体から離れる霊体を________うん、まぁとにかく色々やって何千年か後の世界に住む誰かに生まれ変わるというわけだ。


 これを趣味で研究していた私は、ふと思った。

 『私は生まれ変われるようになった。そして私の願いは意中の相手との結婚.........!?』

 そう、この身も蓋もない願い事を叶えてくれる絶好のチャンスが今目の前に転がってきた。

 逃すわけにはいかない!!


 というわけで現在私は遺書を書いて、相続人や次期後継者などの諸々の手続きを済ませて、ようやく研究室の床に転生術式用の魔法陣を描いていたのだったが。

 思わぬアクシデントが発生してしまったのである。


「やっ、やばい、転生時刻が二分後に設定されてる!! まだ心の準備もできてないのに!?」


 慌てて円から出ようとするが、すでに術式は発動し始めていたため身体が固定されて出るにも出られない。

 同時に円が紫の神秘的な光を帯び始め、徐々に紋様全体が回転し始める。

 ぎょっとした私は、とりあえず棚のほうに手を向けた。そこには趣味で集めていた魔道具や葡萄酒などの本がぎっしりと乱雑に詰め込まれている。


 【知識吸収術式】、いわゆる本の内容を瞬間的に自分の頭に叩き込む魔術を発動し、急いで数冊の本の知識を得る。もしかしたら転生先でこれらの知識が使えるかもしれない、と思って発動した術式だったが、それが裏目に出た。

 溢れ出た僅かな魔力によって【転生術式】の発動が急速化してしまい、一気に魔法陣が上昇してくる。

 魔法陣が通過した足を見ると、すでに転生が始まっているのか、細かい粒子となってなくなってしまっていた。


「ああああああああ、準備が、準備がぁぁぁぁぁあああああああああ!!!」


 叫んでもどうにもならない。

 虚空へと手を伸ばす私だったが、その努力も空しく。

 あっという間に私は魔法陣によって、強制的に【転生】させられてしまうのだった______










新シリーズ始動です。

おそらくこれが一番手をかける作品になると思います。

お読みいただけたら、ぜひ評価のほうをよろしくお願いします!!


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