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勇者、覚醒?

「うりゃあああっ!」


 背中の方でブリスの雄たけびが聞こえた。

 その声で一瞬消え入りそうになっていた意識が再びハッキリしてくる。

 

(サンキュー、ブリス)


 俺がそう心の中で呟くと同時に地を蹴る激しい衝撃が地面を通じて伝わり、空を切る風が頬を掠めた。


「貴様、このガキがどうなっても……ぐぼほっ!?」


 鳥人王の言葉がブリスの鉄拳で中断させられる。

 右手に子供を握り、左手に俺が突き刺さっているので防御は出来なかったのだろう。

 ミシミシと鈍い音が俺の耳まで届いてくるほどの一撃。

 視界の端で鳥人王が握っていたはずの子供がどさりと地面に落ちたのが見える。

 これで再び形勢逆転だ。


「ぐ……きさ、まっ……!」

「はぁーっ……はぁーっ……」


 という俺の希望とは裏腹に鳥人王の背は地に付かず、逆にブリスのほうが地に膝をついている。

 こんなに連続で魔物と戦ったのは初めてのことで、そこからさらに全力の一撃を撃ったのだ。

 逆に今まで戦えていたのが不思議なくらいの状態だったのか。


(ブ、リ、ス……)


 手を伸ばそうにも身体は動かず。

 叫ぼうとしても口からは赤い泡が漏れ出るばかりで。


「今度は容赦、せんぞ……!」


 再び爪を振り上げる鳥人王。

 ブリスからは反撃の気力も回避の余裕も感じられない。

 

「……させない」

「あ、アコ……ちゃんっ」


 ふらふらとブリスの前に歩み出るアコ。

 防壁の詠唱はしているようだが、果たしてどれほどの魔力が残っているのか。


(……俺が、本当に……勇者、なら……!)


 俺は口から血を吐き出しながら、それでも声にならない声で叫ぶ。

 

(隠された力でも……なんでも、いい……! 二人を守ってくれ……!)

 

「死ねっ!」 


 俺の願いも空しく、鳥人王の爪がアコとブリスを襲う。

 そう、確かに襲ったはずなのだ。


「ぬぅ……ま、まだここまでの防壁を張る力が残っているとは……っ」

「……」

「……?」


 一人で何か早合点をしている鳥人王。

 鳥人王も力を振り絞っていたのだろう、不発に終わったせいもあってか今度は鳥人王のほうが膝を突く。

 おそらく、アコの防壁の魔法はほとんど機能していなかった。

 ということは。


(まさか、本当に俺に……隠された力が……?)


「……轟け」


 かすんでいく視線の端で、バチバチと閃光が弾けるのが見える。

 それが俺の、最後の記憶になった。



「お前は本当に、何をやらせてもダメだな」


 誰かの声がする。


「えーん、えーん……」


 誰かの泣く、声が聞こえる。


「ボクが強くなって、キミを守るよ」


 誰かの声が、する。


「イーク、イーク! 死んじゃやだよ、イーク!」


 誰かの、叫ぶ、声がする。

 

(大丈夫、俺は死なない)


 そう答えたつもりが声は出ず。

 代わりにゆっくりと、意識がはっきりしていった。

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