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勇者、男を見せる

 海の魔物やハイゴブリンとはレベルの違う相手。

 これまでも無力感を感じる機会は多々あったが、今回のそれは今までとは桁違いだ。


「人間の分際で……グゴオオオ!」


 斬られた翼を抑えながら、鳥人王が咆哮を上げる。

 するとそれに呼応するように、どこからともなく鳥型の魔物の群れが現れた。


「少しは時間を稼げよ、お前たち……」

「こら、待てっ!」


 配下の魔物に紛れて逃走を図る鳥人王。

 ブリスはそれらを薙ぎ払い進もうとするが、なにぜ数が多い。


「……はぁ……はぁ」

「アコ、無理はするなよ」

「……平気」


 明らかに平気ではない様子で答えるアコ。

 戦線への復帰はまだ難しそうだ。


「でやあっ!」


 俺が状況を見ている間にブリスは増援の魔物を片付けていた。

 流石の連戦にブリスも堪えているのか、玉のような汗が額に浮かんでいるのが見える。


「流石は勇者。足止めにすらならぬか」

「さぁ、次はお前……」


 斧を振り回そうとしていたブリスの動きが止まる。

 理由はすぐに俺にも分かった。

 鳥人王の手に握り掴まれた子供。鳥人王はそれを見せつけるようにわざとらしく挑発するような動きをしてくる。


「卑怯者っ!」

「いいのか? そんな減らず口を言っておると……」

「ぐぬぬ……」


 鳥人王が手に力を込めると、握られた子供が小さくうめき声を上げた。

 それを見て流石のブリスも斧から手を離す。

 これまで人質を取るような知能を持った魔物はいなかった。だからこの行動はあまりにも想定外すぎる。


「そうだ、それでいい」


 じわり、じわりとあくまでも警戒は解かずブリスへ近づく鳥人王。

 

「おっと、そこの女も妙な真似は起こすなよ?」


 防壁を詠唱しようとしていたアコが釘を刺されて杖から手を離す。

 こんな状況でも俺は眼中にないのか。

 確かに、登場の突風すら防げなかった俺を警戒する意味などないのかもしれない。

 だが今はそれが好都合だ。


(一瞬でいい。隙が作れれば……)

「先ほどのお返しをしてやらんと……なっ!」

「ぐ、はっ……」

 

 鳥人王の蹴りが今度はストレートにブリスの腹へ叩き込まれる。


「すぐには殺さぬぞ。この翼の礼をたんとしてやらねばな」

「……後悔するよ、それ」

「ふん、戯言を」


 いくら、無双を誇るブリスといえども人間は人間だ。

 強化魔法も防壁もなしに魔物の攻撃をそう何度も受けれるはずはない。


「まずは貴様の片腕を貰おうか」

「……」

「反撃したらどうだ? 出来んよなぁ、お前たち人間というやつは」


 俺の頬を冷たい汗が伝う。強がってはいるがブリスも同じような気持ちだろう。

 鳥人王が左手を振り上げた。

 猶予はもう今しかない。


「ぐ、が……あっ」

「なっ……!?」

「イークッ!?」


 口の中に手地の味が広がり、ブリスの斧をモロに受けたような衝撃が傷口から全身を走る。

 いつもならここで完全に意識を失っているかもしれない。


「……クソ、がっ」


 唇を噛み、痛みに耐えながら爪にすがりつく。これなら左手の爪は使えまい。

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