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勇者、洞窟を抜けるとそこは

「あ、出口だ!」


 先ほどのハイゴブリンがこの辺りのリーダーだったのだろう、あれからこれといった障害もなく俺たちは洞窟を抜けた。


「んひー、眩しっ」

「……まぶ」


 暗闇に慣れてしまった目に太陽の光が突き刺さる。


「……ん」


 両隣の二人に習って目を細めると、木々の隙間から旗がはためいているのが見えた。

 

「あれが辺境の都か」

「かな?」


 周囲を見渡してみても他にめぼしい目的地はない。

 とりあえず向かってみるほかなさそうだ。


「……嫌な、気配」


 旗がさっきよりも二回りほど大きく見えるくらいまで近づいたところでアコが小さく呟く。

 俺も微弱に感じていた魔物の気配。聖職者のアコはより敏感に感じれるのかもしれない。

 

「なら、急がなきゃだねっ」


 アコの言葉を合図のようにしてブリスが駆け出した。

 確かに時は一刻を争いそうだ。俺とアコもブリスの後を追うようにして走り出す。


(魔物の気配、か)


 ゴブリンやオークなどの魔物は一帯にいる個体全てが一つの群れに集まる習性がある。

 あの洞窟を中心にハイゴブリンが群れを作っていたということは、つまり都が魔物の襲撃を受けているとするならば。


「う、うわああぁ」


 人の声。それも急を要するような声だ。

 急いで森を抜けた俺たちの目に映ったのは、鳥型の魔物に襲われる男の姿。

 鎧を身に纏った姿を見るに衛兵だろうか。手にした槍で抵抗を試みているが、誰の目から見ても形勢は明らかだ。


「……退け、邪悪」


 アコが額に杖を当て短く詠唱すると、衛兵の周りを保護するように四角形の壁が現れる。

 

「ギャギャッ!?」


 今まさに衛兵の喉笛に咬みつこうとしていた魔物が、突然現れた光の壁に阻まれてもんどりうった。


「……今」

「ナイス、アコちゃん!」


 生まれた一瞬の隙を見逃すブリスではない。

 思い切り斧を振りかぶると、態勢を立て直そうとする魔物目掛けて叩き伏せた。


「ひいいっ」


 斧を叩きつけた衝撃でアコの展開した障壁が激しく揺れる。

 余波だけで障壁を揺らすとは。いや、というか障壁があるとはいえやりすぎだ。

 魔物並に恐れられてどうする。


「……癒しよ」

「あ、ありがとう……助かった。あんたらは……?」

「ゆっくり説明したいけど、今はそんなことしてる場合じゃなさそうだよね」


 門の向こうの慌ただしい気配を察知してか、ブリスが斧を担ぎなおしながら言う。


「確かにそうだ……頼む、この街を救ってくれ!」

「どんと任せておいて!」

「……どんと」


 旅を始めてからやたらこういう流れが多いな。

 魔王が復活したことによる影響は思っているよりもはるかに大きいらしい。

 

(これは早く魔王の居場所を突き止めないとな)


 そんなことを考えながら、俺は先行する二人の背を追った。

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