第一章 皇子は芸人になれるのか? - 07 - ヤバイ奴ら
第一章 皇子は芸人になれるのか? - 07 - ヤバイ奴ら
しかも年が若く、腰に吊っている剣には派手な意匠が施してあり、柄の先には宝石まで誂えてある。
どう見ても、どこかの貴族のバカ息子といったところだろう。
そんな連中が三人つるんで、こんな所にやってくるなどまともな要件のはずがない。
そいつらは、まっすぐこっちに向かって歩いてきている。
ライトには大体、なにしにやって来たのか想像がついている。
普段なら近づくことなく、距離を置いて避けるところだが、今路上に転がっているのは、帝都をくまなく歩き回った末、ようやく見つけることが出来た相方である。
正式にはまだだが、いかなる苦難を排してもかならず口説き落とすつもりだった。
なにしろ、自分にとっての生涯の夢がかかっているのだ。
それも、二度にわたる人生分の。
「なぁ、相棒。やばいやつらが近づいて来てるんだが、どうするね?」
ライトは自分が見つけた相方が、素直に起きてくれないことを確信しながら言った。
「やばいって? ほなよかった。てっきり、ワテ殺されるかと思った」
暫定相方は、ほっとしたようにそう言った。
「いや、だから。殺されるよ、たぶん」
話している間に近づいてきた三人のバカ息子は、はっきりとライトと暫定相方のことを目に止めて腰に吊っている剣にてを掛けている。
想像していた通り、どうやらこいつらは貧民窟に人を斬りに来ていると思って間違いないだろう。
舌なめずりするかのように、ライトと暫定相方のことを見ている。
獲物を見つけたというつもりになっているのだ。
なにしろライトも暫定相方も武器を持っていないので、普通に考えたら一方的な狩りになる。
幸いなことに、ライトはその三人には見覚えがない。相手もどうやらライトの正体に気づいていないようだ。
気づくようなら、幻影魔法で誤魔化すので問題はないのだが。
手間を省けるのは助かる。
とは言っても、対応する必要はありそうだ。
ヤクザのように難癖をつけてくるというようなことはせずに、三人はそれぞれ黙って剣を抜き始める。
話し合いなどするつもりはなく、はなっから斬る気気満々であった。
ライトや暫定相方のことを同じ人間だとは思っていない。
それだけは間違いはない。
つまり、このまま何も対処しなければ、確実に二人共斬り殺されるということである。
「あっちゃあ、そりゃ大変や。かなんなぁ」
暫定相方は、困りながらもまったく起きる気配がなかった。