第一章 皇子は芸人になれるのか? - 38 - 判決
第一章 皇子は芸人になれるのか? - 38 - 判決
それに対して、全員が起立して同じように敬礼した。
もちろん、ゲノ・ニノラを除いた全員だ。
「な、なんはよ? あんは、なにもんなんはよ?」
まだ全然舌の回らない声で、ゲノ・ニノラが聞くと。
その横に立っていた弁護人のカリュ・ドゥーラが小声で叱責するかのように言う。
「まだ分からないのですか? 恐れ多くもアクラ帝国の第一帝位継承者であらせられる、ライト皇子殿下です。あなたは、とんでもないお方に罪をなすりつけようとされていたのですよ!」
それを聞いたとたん、ゲノ・ニノラは椅子から滑り落ちる。
「そ、そんな、そんな……」
そして、なんとゲノ・ニノラはおんおんと声を上げて泣き始めた。
もちろん、誰一人として同情する者などいなかったが。
一方責務を果たしたライトは、泣きじゃくり始めたククルを抱きかかえて、アルテ姉姫の元に向かう。
「なぁククル。俺の屋敷で暮らさないか?」
途中、ライトはククルに話しかける。
天涯孤独になったククルに、実は最初からそう提案しようと思っていたのだ。
もちろん、メイドの一人としてだが、さいわいにもライトの屋敷はいやになるくらい広い。
少女の一人くらい増えたところで、どうということないくらいに。
ククルは泣きながら、頷いた。
「よし、決まりだな」
満足気に話した辺りで、アルテ姉姫を見つけた。
近寄ると、向こうから聞いてくる。
「ご立派でしたよ、ライト殿下。でも、あれでよろしかったのですか? おそらく、彼らはずっと墓穴を掘り続けますよ?」
そう、ライトの判決では墓穴が出来たとき、としか言っていなかった。期限も決めてなければ、どのような墓穴かも指摘していない。つまり、彼ら自身が墓穴が出来たと言わなかったら延々と掘り続けることができる。
そして、掘っている間は死ななくてすむのである。
「姉上、どうしても俺は許せなかったのですよ。無為に遊びで人を殺すような犯人のことがどうしても。ですから、一瞬で死なせたくはなかった。生きて生きて生きて、そして無為に死んでいく。たとえば、自分の墓穴だけを一生掘り続けてるような。……そういう人生を彼らに送らせたかったのです」
ライトの話しを聞いたアルテ姉姫は、小さく苦笑を浮かべた。
「あなたは、意外に怖いひとですね。でも、嫌いではないですよ。そういうところ」
結局この後このことに、二人がこれ以上触れることはなかった。




