第一章 皇子は芸人になれるのか? - 37 - ライト登場
第一章 皇子は芸人になれるのか? - 37 - ライト登場
まだしびれてよく回らない舌で、必死になって言っているのはゲノ・ニノラである。
ライトはそれを無視して話し始める。
「傍聴席でご覧のみなさん、私が本件の告発を行ったライトです」
その名前がでた瞬間、傍聴席が一斉にざわめいた。
もちろんそれだけではない、傍聴席の全員が片膝を付き胸に手を当てて深々と礼をする。
もちろんそれは、裁断官も同じでゲノ・ニノラの弁護人であるカリュ・ドゥーラも同様であった。
それを見ても、ただ一人ゲノ・ニノラだけは頭を下げようとはしない。
「な、なにひてんだよ、みんな? こ、こんなゴミに、なにひてんだよ?」
もしかすると、薄々気づいたのかは知れないが、それを認めてしまうと自分自身のアイディンテティが崩壊してしまいかねない。
なにしろ、ゲノ・ニノラにとって唯一の誇りが、貴族であるということだけであったのだから。
だが、ライトはゲノ・ニノラにはまったく目を向けることもなく話しを続ける。
「今回の事件に関しては、あまりにその様相が酷すぎました。この話しを聞いたとき、私は正直自分の耳を疑いました。まさか、このような非道なことが行われているのかと思い、自分の目で確かめることにしました。そこで、私は一人の男性を斬り殺そうとしている被疑者三人を相手に戦うこととなり、魔法を使ってどうにかその剣を奪うことができました。その剣を証拠品として警邏に通報し、被疑者が逮捕された後はご存知のような展開になったわけです」
まず最初にライトが行ったのは、今回の事件の告発人としての証言であった。
証言をする間も、ゲノ・ニノラ以外の全員が頭を垂れたままであった。
「それでは皆さん、頭を上げてください。ここからは、本件を裁く裁断長としての判決を申し渡します」
すると全員が膝を付いたまま、顔だけをライトの方に向ける。
もちろん腕は胸に当て、敬礼をしたままの姿で。
「ゲノ・ニノラ並びオーゾ・タグ並びケーリ・ラセの三人は、貴族の称号を剥奪の上、斬首刑とします。ただし、斬首にあたり、三人の墓穴はそれぞれが自分で掘るものとします。墓穴が出来上がり次第、斬首は実行されます」
そこまで話すと、ライトはしばし黙った。
その間ゲノ・ニノラも含めて一切誰一人として声を上げるものはなく、静寂が広がった。
「以上で本事件の裁断は終了いたします」
判決の終了を告げ終えると、ライトが全員に向かって敬礼をする。




