第一章 皇子は芸人になれるのか? - 30 - 裁断開始
第一章 皇子は芸人になれるのか? - 30 - 裁断開始
完全に利用する形になってしまったが、大裁断場というのがこういう所なのだということを知らなかったライトの責任であった。
今更遅すぎるのだが。
なんにしても、もう裁断は始まる。
裁断席に座る裁断官の一人が木槌を持って机を叩いた。
裁断場全体に音が響き渡り、一瞬で会場全体が静まり返る。
会場の作りや被告と告発者の座っている構図は、ライトの前世の記憶にある裁判所の造りとほぼ同じであった。
「今から、ニノラ子爵家長男ゲノ・ニノラ、タグ子爵家次男オーゾ・タグ、ラセ男爵家長男ケーリ・ラセ三名による市民連続殺害事件ならび殺人未遂事件に関する裁断を開始する。裁断前にあたり、この場参加できないオーゾ・タグとケーリ・ラセに関しては代理人である弁護人をもってこれの代わりとする。では、まず告発を受けて逮捕を行った警邏側より本事件の告発罪状を読み上げなさい」
ついに裁断が開始された。
帝国とは言っても、法による秩序はちゃんと存在する。
そうでなくては、まともな秩序など望めないからだ。
当然、法によって裁断がくだされるのだが、一体どういった罪にあたるのかをまず最初に警邏が判断して、裁断官に提示するのだ。
裁断官に指示された警邏官が、裁断場中央にある裁断官正面にある証言台へと進む。
「被告ゲノ・ニノラ並びオーゾ・タグ並びケーリ・ラセは、ゴーバン区ダートラにおいて告発人を殺害しようした殺人未遂並び、証言者ククル・ロノの両親を殺害したことによる殺人罪の適用を求めます」
その証言が元警邏官の口から発せられた瞬間に、会場全体がどよめいた。
この場にいる誰もがそれが認められたら、極刑になるということを意味していると悟ったからだ。
つまり斬首刑である。
「それでは弁護人。反証がある場合、それをこの場で述べよ」
警邏官が戻ると、すぐに裁断官が弁護人を呼び込む。
弁護人は入ってくるとまず傍聴人席に向かって一礼した後、証言台の前で裁断官に向かって一礼する。
入り方は見事なものであった。
「わたくしめは、ゲノ・ニノラ並び他二名の弁護人を努めます、カリュ・ドゥーラと申します。まずは最初に申し述べたいことは、この度の逮捕に至るまでの経緯につきまして、まことに遺憾としか申し上げられません」
カリュ・ドゥーラと名乗った弁護人の話の切り出しはそう始まった。
「一体どういうことかね?」
すぐに裁断官から質問が返ってくる。




