第一章 皇子は芸人になれるのか? - 21 - 告白
第一章 皇子は芸人になれるのか? - 21 - 告白
つまり姉弟だからと言って、ある程度の年齢になると男女の関係が疑われるような行為を避けることは常識であった。
剣の稽古をつけたがるのも、できるだけライトと一緒にいる時間を作りたいという思いから来ているのだろう。と思うのが普通である。
だが、正直な話し、ライトはアルテ姉姫のことを見くびっていた。焦りもあっただろうが、ここまで読みが鋭いということがわかっていたら、不用意に剣を見せたりはしなかった。
だがもう遅い。
すでに見せてしまった後である。
下手な言い逃れが出来るような相手ではなかった。
それに、クズ息子のことは放置していい問題ではない。
自己保身を考えながらだと、どうしても限界というものがでてくる。
そもそも、今掘った墓穴はどう見ても自己保身の産物であった。
無意識のうちに目をそらそうとしたのだろう。アルテ姉姫がライトの顔を両手で掴んで自分の方を向ける。
「世界の全てが敵になっても、わたしは絶対にあなたの味方です。例え父上……いえ、アクラ帝国皇帝ザフト陛下その人が敵になろうとも、わたしはライトのためにのみ行動します。ですから、わたしから絶対に目をそらしてはだめです」
一切声を荒げたりはせず、ただまっすぐライトの目を見てアルテ姉姫は話しかける。
間違いなくそれは心の底からの本心の言葉であった。
そのくらいのことはライトにだってわかっている。
だが、それとライトの夢とはまた別の話しだ。
その夢は生まれ変わる前からずっとライトの内にあるものだった。
そして、一度はその夢を抱えたまま死んでしまった。
その痛恨の想いもまた、今のライトの中でくすぶったままである。
だからこそ、たとえそういう姉姫であったとしても、いやそういう姉姫だからこそ簡単には話せない。
自分のエゴである夢に、アルテ姉姫を巻き込みたくはなかったから。
そうだからこそ、この期に及んでなお迷っているのだ。
そんなライトの迷いを、あっさりとふっ飛ばしてしまう者がいた。
「その剣はさっきライトはんが、貴族のボンボンから取り上げてきはったもんやねん。でな、そいつら人を斬り殺して遊んでたねん。ワイが斬り殺されそうになったとこ、ライトはんが魔法で助けてくれはった。えろう、助かりましたわ。ホンマに、命の恩人ですわ」
それはライトの相方であるドゥイであった。




