第一章 皇子は芸人になれるのか? - 11 - 勝利
第一章 皇子は芸人になれるのか? - 11 - 勝利
怒りに任せて剣を振り上げると、ライトに向かって切りかかってきた。
だが、一歩足を踏み出したところで、いきなり顔から地面に激突する。
剣を放り出して、先の二人と同じように地面の上を転がり始めた。
顔面が地面に激突した衝撃で、鼻の骨が折れて横を向いている。もちろん、鼻血も大量に噴出していた。
この惨状に関しては、ライトは一切何もやっていない。
やる予定はあったのだが、その前に踏み出した足を掬って地面への顔面激突を演出したのは、それまで地面の上で大の字になっていたライトの暫定相方である。
「助かったぜ、相棒」
ライトが嬉しそうに話しかけると、
「勝手に石に躓いたんやろ。ワイはしらん」
暫定相方はしれっとそんなことを言っていた。
「そりゃそうだ。それにしても最近の貴族様は、歩くのもままならないって悲しいねぇ。ハイハイからやり直したほういいんじゃないか?」
暫定相方の話しを聞いたライトは、それに同意すしながら嘲笑の言葉を付け加える。
「きさまぁ、石ころの分際で! これで終わると思うなよ? かならず貴様を探し出して、細切れにしてやる。我ら貴族を馬鹿にした報いを受けさせてやるからな!」
鼻を押さえたクズ息子がライトのことを下から睨みつけながらそんなことを言っている。
黙ってライトは近づくと、押さえている手の上から鼻に向かって靴の踵をぶち込んだ。
「なぁ、あんた。後のことを考えるより、今の心配をした方がいいんじゃないか? 蹴られるととっても痛いらしいよ。とくに、鼻の骨が折れちゃってる場合はね」
そう言いながら近づくと、また地面の上でのたうっているクズ息子の鼻を目掛けて思いっきり踵で踏みつける。
「こんな風に」
すると、クズ息子は白目を向いて体をピクッと痙攣させて静かになった。
「あらら、聞いちゃいないね、これは」
残念そうにライトは呟いた後、そいつが落とした剣を拾い上げる。
そして、腕を斬られた他二人のクズ息子の剣も拾い上げた。
「どうするつもりだ?」
苦痛に悶ながらも、一番最初にライトと話していたクズ息子が聞いてくる。
「こいつは俺が預かる。家紋が入ってるから、然るべきところに持っていったら面白いことになるんじゃないかな?」
脅すつもりはなかったのだが、ライトはけっこう素直に答える。
というのも、最初からそうするつもりだったからだ。
放置していたらかならずこいつらはまた人間を狩る。