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群青の召喚魔術師  作者: ばる
9/9

八話 英雄との出会い

すみません、かなり遅れました。

この世界はなんでも努力で解決できるだろうか。


答えは「否」だ。

生まれた時から人が持ってる能力にはそれぞれ差がある。

努力によってその差を多少埋めることはできるだろうが、才能という大きな壁は越えられない。

現実は非情だ。


しかし才能があってもその使い方を間違えば、その人は才能のない人以下の存在となる。

そうならないためには「選択」が必要だ。

「選択」を誤れば今までしてきたことのすべての価値がそこで無くなる。

生きることで1番大切なことを「選択」と言ってもいいだろう。




「じゃあ、…俺はどうすればよかったんだよ。ルイーゼ先生…」












時は3ヶ月前だ。


入学してから4年、早いものだ。

「えー、ルターもう卒業なの!?」

アリスが驚いた声で聞いてくる。

「うん」

研究成果はもう出ている。

俺の研究は自作魔法についてだ。

俺はきちんと自作魔法を作ったし、どのようにしたら作れるか、コントロールの仕方など、色々調べて核心に着くことができた。

自分で言うのもあれだが、はっきり言って俺の研究成果は過去最高だと思う。

そこらへんの科学者や軍部がまだ発見していないことを研究成果とするのだからな。


そういえば俺もリヴァイアサンをうまく操れるようになった。

なんとか消費魔力もかなり少なくできるようになったし、それでもかなり強い。最上級召喚のヘラクレスよりももっと強いと思う。


「私はまだ2年あるのよ」

「がんばれー」

「はぁ、ルターがいなくなった学校なんて魅力のかけらもないわ」

「なんで?」

「だってルターがいないと面白くないし、それに…」

「それに?」

「なんでもない!」

「お、おう」

なんだこいつ。



そういえば勇者のひ孫のガリフもかなり丸くなった。

今では俺のいい友だし、幼い頃にやったことを深く反省している。

まだアリスには気があるようだが。



「ふぅ、さすがだルター君」

そう言ったのは、俺の論文を読み終わった校長のグリアドス先生だ。

「歴代最高の研究成果だったといえよう」

「いや、流石にそこまでは…」

「謙遜しなくてもいい。君は本当にいい研究成果を残してくれた。そこで相談だ。君が卒業した後、どうかこの学校で研究を続けてくれはしないか?」

なるほど、研究生か。

「いえ、自分はやることがあるので」

「そうか、もしもそれが終わったら戻って来てくれるか?」

「ええ、あいにく仕事がないので」

「はは、面白いことを言う。ルター君だったらどんな職でも就けるだろうに」

貴族の基準で考えんなや。




さて、俺がこの歳で卒業したのは理由がある。

白銀のバリアスこと、バリアス・ケンブリーのパーティに参加するためだ。

彼は各地のダンジョンや遺跡を探検し、『英雄』と呼ばれるところまで上り詰めた。どうやらルイーゼ先生のかかっている黒死病の治し方を古代の遺跡で入手したらしい。現代よりも古代の方が医療が発達してるってどういうことなんだよ。魔術はいいものなのか悪いものなのか。人間は魔術に頼らないと生きれなくなってしまったな。


たしかガリフも白銀のバリアスみたいになりたいとか言ってたな。

目指してたのは勇者じゃないのかよ。

そんな彼が王都に3日後に着くという報告があった。

なのでそこから俺も合流して、一緒に旅をするという考えだ。

まあ俺みたいなやつをパーティに入れてくれるかもわからんが。


彼のパーティは彼も合わせて4人だ。

1人目は雷槍のバーネット。彼は雷魔法で雷の槍を作り出し、それを使って攻撃するらしい。なんという厨二病設定。

2人目は獄炎のルイ。彼女は2つ名の通り炎魔法を得意としていて、作り出した火球はあらゆるものを焼き尽くすという。なんという厨二病設定(2回目)

3人目は癒しのアリア。彼女は補助魔法を使い、どんな病気や怪我も治してしまうという。(大嘘)

ちなみにルイとアリアは双子らしい。ちなみにルイが姉で、アリアが妹だ。


どうやらもう1人いたらしいが、ダンジョンの探索中に亡くなってしまったらしい。


「ルター君、話しておきたいことがあります」

イリスか、彼女とも仲良くさせてもらってるが、あのきつい性格はなおらない。

「はい?」

「ユグニス軍についてです」

なるほどね。

「ユグニス軍は王家の配下に加わっていますが、最近は王宮の命令を無視したような行動が続いています」

「なるほど」

ユグニス王国内の勢力は2つだ。王宮側と、反乱軍。こちらは郊外の農村が多い。どちらかというと王宮側に対しての反乱ではなく、軍側に対しての反乱だ。

さて、さっきの話でもあったが、最近は軍が王宮の命令を無視した行動をしている。噂では、王宮に対して近いうちに反乱を起こすとかなんとか。

軍の本部は王都ではなく、ユグニス王国第2の都市、ニベニアだ。

王都がユグニス王国の西側の中央に位置するのに対して、ニベニアは東側の中央に位置する。


「どうするんですか?軍が攻め込んで来たら」

「どうもしませんよ。ただ迎え撃つだけです」

「と言っても相手は軍です。こちらはなんの力も持っていません」

「ええ、なので反乱軍に手を貸してもらおうかと」

ちなみに反乱軍の拠点はユグニス王国最南端のタザマスカという都市だ。

「そんなに遠い都市まで行くんですか?途中で暗殺とか…嫌ですからね?」

そう心配するのは王宮の今後のためでもあるが、1人の友人としてでもある。

「問題ありません。白銀の達のパーティに護衛してもらうことは決まっています。もちろん、王都付近のダンジョン探索の後ですがね」

「それはありがたいです」

「そこで、あなたの意見を聞きたいと思いまして思いまして」

「僕のですか?」

「ええ、私の行動は100点満点中何点だと思いますか?」

俺は迷いなく答えた。

「100点だと思います。反乱軍に力を貸してもらうと聞いた時は少し驚きでしたが、それもいい策だと思います」

「それはどうも」


そう言ってイリスは去って行く。

さて、俺も帰るか。

「今までありがとうございました」

そう言って4年間お世話になった学舎をあとにした。



さて、白銀達のパーティが王都に着くのは2日後だ。それまでに俺はダンジョンに潜る準備をしなくてはいけない。

「ロキシー先生、行ってきます」

「わかりました。夕方までには帰ってきてくださいね」

「はい」


さて、まず行くのは武具屋だ。ここで装備の調達をしよう。


「いらっしゃい!」

そう言ったのはここの店主のリカルドさんだ。見た目は中年の体格がいいおっさんみたいな感じで、髪色は黒だ。俺とは面識がある。

「えっと、ダンジョンに潜るための防具を探してまして」

「おっと、剣ではないのかい?」

「ええ、僕は召喚魔法で剣を召喚できますから」

「ほお、ここの店の剣を買わないんだからかなりの切れ味なんだろうね」

「そうですね」

苦笑いしながらそう言う。でも実際その通りだ。選りすぐりの鍛治職人が作った上質な剣だって俺の召喚剣には敵わない。


「さて、防具だったな。どんな防具がいい?」

「軽くて、動きやすい防具がいいです」

「なら魔術師御用達のローブだな。そのローブなんかどうだ?」

そう言ってリカルドさんが指差したのは真っ赤なローブだった。

「これは1ヶ月前に白銀達のパーティが火炎竜相手に戦って勝ったんだ。それをギルドに売ってくれてな。これは熱をシャットアウトして、火なんて燃え移らない」

この世界には冒険者ギルドというものが存在する。冒険者は冒険者ギルドで依頼を受け、それをクリアしたり、魔物の素材を売って生計をたてている。

まあそれだけだとギルド側が儲からないので、依頼主が依頼金を出したりする。あとは王国の援助だ。王国側はかなり冒険者ギルドのおかげで助かっているので、援助金は当然だ。

「値段はいくらですか?」

「聞いて驚くなよ?なんとたったの1万バルクだ!」

「ぶへっ!、高いわ!」

1万バルクと言ったら前世のお金でいう100万円だ。そんな高いもの買えるか!

「は?何言ってるんだ?これでも5割引いたんだぞ、ロキシー様のお弟子さんだから」

さすがにロキシー先生の財布にダメージを与えるわけにはいかない。

「んじゃ、そこの黒いローブはいくらですか?」

「あれか?あれは500バルクだ。…まさかあっちを買うんじゃないだろうな?」

「そのまさかですよ」

試着してみる。そうすると、なんだか温かみが感じられた。

「うん、これにします」

「本当にそれでいいのか?」

「はい」

お金を払い、足早に出て行く。



次は道具屋だ。ポーションを大量に買わないといけない。ちなみにポーションは回復薬のことだ。まあ俺がポーションを大量に買うのは治癒魔法が全く使えないからである。



買い物も終わり、帰路につく。もう夕方だ。


はあ、もう14歳か。これで心は30年生きてることになる。ということは先生も30歳ということになる。といっても体は14歳のままだ。俺の状態と同じということになる。…先生はどんな気持ちなんだろう。


「ただいま帰りました」

「んー、遅いですよルター君」

いや、あんたとの約束ちゃんと守ったからね。

「…本当に行くんですね、ルター君」

「はい。でも安心してください、すぐに魔道具の解除方法を見つけて帰ってきますよ」

「それは頼もしいですね」




お風呂から上がり、ベッドに着こうとすると、ルイーゼ先生が話しかけてきた。

「バリアスとも14年ぶりに会います。彼はかっこいいですからね、ルター君は惑わされないでください」

「僕にそんな趣味はありませんよ。というか本当にバリアスさんと結婚しないんですか?彼は先生との別れの時に求婚したんでしょう?」

ありがちの展開だ。この戦いが終わったら俺、結婚するんだってやつね。あかん、それ死亡フラグや。

「ええ、『君の病気と、魔道具を解除したら、君のすべてをもらっていいか?』って言ってました。少し驚きました。もちろん私をそんな風に見ていてくれたのは嬉しかったですが、私にその気はありませんでしたから」

「なるほど…」

「ルター君も私にいつでも求婚してくれていいんですよ?」

「いえ、やめておきます。断られそうです」

「わからないですよ?」

ニヤニヤしながらそう言ってきた。

「そういえばルター君も14歳ですよね?私と同い年じゃないですか」

「体は、ですけどね」

「そうですね。私もルター君となら結婚してもいいかもしれませんね」

「何言ってるんですか?僕にその気はありませんよ」

「ふふふ、冗談ですよ」

そう言ってルイーゼ先生は俺のことを子供扱いしてくる。一応ルイーゼ先生には話していないだけで、俺も同じような境遇にあるんだけどな。

「ルター君、…死なないでくださいね?」

「何言ってるんですか?僕はルイーゼ先生の一番弟子ですよ?そんな言葉は必要ないです」

「まあ、1人しかいないんですけどね」

「そうですね」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


3日後、彼らがきた。

それはもうパレードみたいだった。

なるほど、この人たち人気があるのか。

「久しぶり、ルイーゼ!」

「ええ、久しぶり、バリアス」

そう言うとバリアスはルイーゼにハグするような仕草をするが、ルイーゼはそれを拒否する。

「そうそう、君の黒死病の治し方を見つけたんだ!これであと1つ、魔道具の解除の仕方を見つけるだけだ!」

「ありがとう、バリアス」

ルイーゼ先生はニコッとしてそう言う。

「えっと、ルイーゼ、彼は?」

「紹介が遅れたね、彼はルター、私の弟子よ!バイアスアビリティなの!」

「バイアスアビリティって、あの勇者のやつか?」

「初めまして、ルターと申します」

「初めまして、ルター君。僕はルイーゼの幼馴染のバイアス・ケンブリーだ。よろしく」

「よろしくお願いします」

バイアスはルイーゼに対してこう言う。

「そういえば前の返事、まだ聞いてなかったね」

「返事?求婚の話?あれはもう断ったでしょ?」

「いいや、納得いかない。逆に聞くけどルイーゼは僕以外の誰と結婚できるんだい?」

ルイーゼ先生は俺の方を指差す。

「ルター君となら結婚してもいいよ。実際彼からも結婚を迫られたし」

「そんなことは一切していません」

冷酷な言葉で返す。

「えっと、ルター君?聞くけど、君とルイーゼはどんな関係なんだい?」

「見ての通り師弟関「家族です!」ってちょ!」

まああながち間違ってはいない。ルイーゼ先生は親代わりだからな。

「まあその通りですけど、僕はルイーゼ先生に恋愛感情なんて一切抱いていないので安心してください」

「は、はぁ」

ルイーゼ先生は本当に紛らわしいことを言う。やめて欲しいんだがな。


「バリアスさん、改まってお願いがあります」

「何かな?ルイーゼをもらうとか言ったら…、わかるよね?」

こわい…。

「いえ、実はバリアスさんのパーティに入れてもらおうと思って」

「本当かい!?これで"手間"が省けたよ!」

「手間?」

「いや、なんでもないよ」

「そ、そうですか」

もともと俺を誘う予定でもあったんだろうか。

「それじゃ、3日後に王都を出発する予定なんだ。それまでに準備してくれよ」

「わかりました」


3日後、俺は久しぶりに王都を出る。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


3日がたった。今日は出発の日だ。


「では、ルイーゼ先生、行ってきます!」

「ルター君…、帰ってきてね?」

「もちろんです!」


そう告げて俺は王都をあとにした。


「今日はニスリア大渓谷付近にちょっと用事があるからそっちによるよ」

揺られる馬車の中で、バリアスはそう言った。

「どんな用事ですか?」

「まあ、行けばわかるよ」

その時、俺はまだ気づいていなかった。バリアスの本性に。



3時間馬車に乗って、ニスリア大渓谷についた。

そこにいたのは…?

「アリス!」

「ルター!助けて!」


なんだこれ…。そう思ってバリアスを見ると、彼は笑っていた。


「ははは、無様だね、ルター・グランホルン。君がルイーゼと同じ姓を名乗ることなんて僕が許さない!」

「は?何を言ってるんですか?」

「わからないか?君は僕のルイーゼに近寄りすぎた。今ここで罰を与える!」

「ふざけるな!」


本当にそう思った。というより頭がパニックだ。こいつはなんなんだ?


「ふざけているのはお前だ!毎日のようにルイーゼといちゃつきやがって!」

「そうだ、ふざけているのはお前だルター」


雷槍のバーネットがそう言う。今までとは血相が違う。彼は俺に対してそんな顔は絶対しなかったはず。


「バリアス様に対してこんな無礼を働くとは、処刑だけではすますまい!」

「その通りです、ねえ、アリア?」

「その通りです、ねえ、姉様?」


なんだこいつら…。それより


「なんでここにアリスがいる?」

それが1番許せなかった。

「彼女に何をする気だ!」

「もちろん、君に罰を与える際の道具となってもらう。アリアあの魔道具を」

「はい、バリアス様」


なんだバリアス様って。昨日まではきちんと対等な関係だったじゃないか。


「よく聞きなさい無礼者。これはマグリス、魔道具です。これを使うことで彼女を大きな魔石の塊の中に入れることができる。そうすれば彼女は一生魔石の中から出てくることはできないでしょう。それを見せしめにします」

「どういうことだ!そんなことが許されると思っているのか!」

「お前こそ…、ルイーゼに近づくことが許されると思っているのか!」


くそ、なんなんだこいつ…。


「見せしめというのは、お前がこのようなことをやったと、王都中に広めるためです」

「やめろ!そんなことをしたら俺はもう王都に戻ることができなくなるじゃないか!それよりアリスはどうなるんだ!」

「はぁ、まあ確かにあなたは王都に戻ることができなくなりますね」


そう言うと、アリアはアリスに向かって魔道具を掲げ…


「マグリス!」

「あああああああああ…」


アリスは…、魔石の中にいた。


「うわああああああああああああああ!!」

「ふははは、これが罰だ!」


ふざけやがって!


「お前ら全員…、殺してやる!!」

「はは、それは無理だな」


くそっ!実力差は圧倒的だ。だけど…、やるしかない!


「リヴァイア…」

「そうはさせない!」


雷の槍が飛んできた。あぶない、今のを避けなかったら死んでいた。

リヴァイアサンの召喚には少し時間がいる。なんせ魔力をかなり消費するからな。


「くそっ、ソード!」

そう言って剣を召喚する。


「ほう?僕達と近接戦闘でやる気かい?」

「はあああああああ!」

バリアスに切り込んでいく。しかし…。


「甘いね」

バリアスは軽くかわし、俺のみぞおちにパンチをした。


「かぁっ!?」

俺は跪いた。はっきり言って今の一撃は、俺の人生のなかで1番痛かった。


「さて、君にここから落ちてもらう。まあ、もちろん死ぬけどな」


そう聞こえたのが最後、俺は渓谷に落とされた。下は真っ暗でどのくらい深いかわからない。ただ1つだけわかることがある。

それは…、俺は死ぬということだ。








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