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群青の召喚魔術師  作者: ばる
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二話 バイアスアビリティ

この国の話をしようと思う。


我が国、ユグニス王国は500年の歴史がある君主制の国家だ。

まあ君主制と言っても最近は軍の権力が伸びてきて、今は君主制側と先軍政治側に国が二分されている。


世界的に見るとユグニス王国は中堅国家で、他の大国に勝らず劣らず(若干劣る)という感じだ。


地理的に見ると、世界の中央に位置するイジオス大陸の右上端に位置する。


隣国としては、国境線に接している国は中央アルグ帝国と東アルグ帝国になる。

北のアルス大陸ではドルバド帝国が一番近く、昔から戦争を重ねてきた。今、ドルバド帝国は、隣国のサルバド帝国と戦争をしていて、ユグニス王国とは同盟を結んでいる。と言ってもユグニス王国とサルバド帝国は地理的に少し離れているため、物資などを援助しているくらいだ。


今現在ユグニス王国にはユグニス8世が即位しているが、32歳という若さにも関わらず持病の糖尿病を患っている。

王位継承権を持っているのは1人で、イリス王女だ。

イリス王女は俺と同い年の7歳で、容姿端麗で勉強面もでき、ユグニス王国出来て以来の天才王族と言われている。

これは噂なんだが、そんな彼女は階級ごとの差別がすごく、貴族以下の人達は全員農奴だと思っているらしい。

同い年なのでもしかしたら王都魔術学校に入学してきて俺の同級生になるかもしれない。

まあ俺が王都魔術学校に合格できるなんてまだ決まってないんだがな。


ユグニス王国には階級制度がある。明確に決まっているものではないが、一応説明しようと思う。

階級は王族、貴族(名誉貴族なども)、平民、下民(奴隷)に分かれている。

貴族の中にも色々順位があるらしく、貴族の中でも最下級に位置する貴族は結構差別されたりする。

ルイーゼ先生のような名誉貴族は、国王から直々に功績を認められた人がなれる。貴族の順位的には最上位に位置するらしいが、血縁の関係で差別する貴族もいるらしい。


うん、複雑だな。7歳の子供にはそんなの関係ないよ。

王族、貴族はクソ、とりあえずそう思っとけばいいや。

あ、ルイーゼ先生はクソじゃないよ。


今、俺とルイーゼ先生は王都を出て近くの平原まで歩いてきた。

今日は昨日言っていた魔術の授業の実技だ。

昨日寝る前に初級の魔法の詠唱は全部暗記してきたから今日は楽しみだ。


「今日は魔術の授業の実技をやります!」

「おー!」

「おお、いいねですねルター君!昨日よりもテンションが高いですね!」

俺は7歳だからな、年相応の対応をしないといけないのだよ。(昨日と矛盾してる)

まあ昨日は座学だったからな、実技と座学じゃそりゃテンションは違うよ。


「ルター君。昨日の夜、先生とした詠唱はまだ覚えてますよね?」

「もちろんです」

「それじゃあ先生がお手本見せるので、それを真似してみてください」

「はーい」


「…大いなる火神よ、我に力を与えたまえ、ファイアボルト!!」

次の瞬間、先生の右手から火球がうまれ、すごいスピードで前に飛んでいった。

「おおー!」


す、すごい。これが俺にできるのか?絶対できなさそうなんだけど。

「それじゃ、ルター君!やってみてください!」

マジかよ…。まあやるしかないな。


「大いなる火神よ、我に力を与えたまえ、ファイアボルト!!」


……ん?何も出ないよ?


…これってもしかして、…俺に才能がないってこと?


横からルイーゼ先生が焦った目で俺を見てる。


やめて…、そんな目で俺を見ないで…。

「だ、大丈夫ですよルター君!ま、まだ才能がないと決まったわけではないですし!」

あ、やっぱり俺才能ないんだ。

先生の期待に応えられるように頑張ってたんだけどなぁ、俺。


一応初級の破壊魔法と補助魔法を全部詠唱したんだが何も起こらなかった。

「だ、大丈夫ですルター君!魔術の才能が無い人も剣術だけを鍛えて名誉貴族になった人もいますから!」

いやそれもう俺には魔術の才能が無いっていってるようなものだよね?ちょっと傷つくんだけど。


次は召喚魔法だ。

まあどうせ詠唱しても何も起きないと思うよ?

なんだっけ、魔獣召喚で最上位魔法だったやつ、…そうそうヘラクレスだ。

この世界でヘラクレスがいたのはびっくりしたけど一緒なのは名前だけで、見た目はケンタウロスに似てた。

そのヘラクレスなんだが、この200年の間、召喚できたという事例はないらしいな。

「はぁ、ヘラクレスでも召喚できればなぁ」


…次の瞬間目の前に雷が落ちた。

「うわっ!?」

「きゃっ!?」


そして目を開けた瞬間…、そこにいたのは…

「ヘラクレス…?」

ルイーゼ先生がそう呟いた。

そう、ルイーゼ先生の言う通り目の前にいたのは、まさしく…

「す、すごいですルター君!ルター君がヘラクレスを召喚したんです!」

…そう、俺が召喚したヘラクレスだった。


え?俺って魔術の才能がなかったんじゃないの?なんかすごいの召喚できちゃったんだけど。


「た、たぶんですがルター君は、私は明言できないんですが…、バイアスアビリティだと思います」

「…な、なんですかそれ?」

「この200年いなかったんですが、200年前にヘラクレスを召喚したのも、召喚魔法のバイアスアビリティだということをきいたことがあります。つまりルター君、あなたは召喚魔法のバイアスアビリティです!」

な、なんだ?いきなり厨二っぽくなったぞ?

「あ、あの?、状況が掴めないんですが?」

「あ、あとその前にヘラクレスを引っ込めてもらっていいですか?なんだかこわいです」

おっと、まだ召喚したままだった。

ヘラクレスが消えるようなイメージをすると、ヘラクレスはスッと消えていった。

「す、すごいですね…。本当は帰還詠唱をしないといけないんですが…」

へ、へーそうなんだね…。


「とりあえず状況を説明してもらえませんか?」

「そ、そうですね。ルター君にはなんのこっちゃかわからないでしょうからね。まずバイアスアビリティは1つの系統の魔法しか使えません」

「そ、それって弱いんじゃ…?」

先生の授業では3つの系統の魔法を組み合わせることで初めて魔術としての真価を発揮しますとかなんとか言ってたような…。

「いえ、そんなことはありません。1つの系統の魔法が強すぎるので魔術のバランスを崩壊させます。」

なるほど、ゴリ押しってことね。よくわかるよ。

「まあ、バイアスアビリティと戦ったことがある人はかなり少ないのでほとんど文献が残っていません。そのため強いか弱いかはまだ断言はできません。しかし、極めればかなり強くなるのは間違いないでしょう」


ということは…。

「先生、…僕は才能が無いってわけではないんですかね?」

「才能どころの話じゃありませんよ!ルター君、あなたは世紀の大天才です!」

お、おう。それはどうも。

「さすがは私の弟子です!ルター君!私は君が大好きです!」

ギュっと抱きつかれた。

…やっぱりルイーゼ先生かわいいなぁ。恋しちゃいそう。


その後に召喚魔法の最上級魔法を色々試してみた。

できない召喚魔法は無く、世界で数人できるかできないかくらいの魔法も成功した。

両方の手で同時に2つの魔法を発動できることもできた。

なかでもリフレクター召喚はかなり便利だ。

リフレクターは相手の魔術も跳ね返すことができるし、自分自身までもを反射させることができる。

跳ね返す力は自由に調節できて使い勝手がいい。

移動などでもかなり便利だ。

ただ消費魔力がかなり多いので、多用するとすぐに魔力切れになりそうでこわい。

このリフレクターを召喚できたのも、200年前のバイアスアビリティ以来だそうだ。



気がつくと日が暮れていた。

昨日と今日は早く過ぎ去ってしまった感じがする。


「さて、帰りましょう!」

「…先生、元気ですね?」

「当たり前です!ルター君がここまでの才能だとは思いませんでしたからね!ヘラクレスを召喚した時はとてもびっくりしましたよ!」

そうだよね、俺もびっくりした。

「今日はとても機嫌がいいのでルター君に抱きついて寝ちゃいます!お風呂も一緒に入りましょう!」

「ま、まあいいですけど」

「やったー!むふふ!」

やばい、可愛すぎて頭がショートしそう。


ふぅ、まあよかったよ。俺に才能があって。

先生の期待に応えられなけばどうしようかと考えてたもん。

そういえば200年前のバイアスアビリティってどんな人だったんだろう。

家に帰ったら調べてみよう。


そんなことを考えながらルターは家に帰った。








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