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ロマニストがサーフィンをして見た景色  作者: 雨竜三斗
第五章 江ノ島どたばたデート
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5-4 わざわざ髪型とメガネまで変えてきたのになんでバレたの?

 静佳はいつもとは違う格好をしていた。白い肩が大胆にも露出した涼し気な袖なしの薄手のニットにタイトスカート、髪はポニーテールにまとめ、自他ともに認める豊かな胸もあって、まるで大人のお姉さんの様なスタイルだった。

 メガネも赤縁の細いフレームのではなく、黒色のアンダーリムにして普段とは違うものにしている。


 今日は仕事ではなく、保護者役としての監督だ。


 ソーニャとオサムと優里亜がデートをするというのだから、それを見守るのは当然。どんな面白いことが起こるのか、どういう会話をして盛り上がっているのか、確認しなければいけない。


 そんなわけで江ノ島電鉄の江ノ島駅で合流した三人の後をつけながら、江ノ島までやってきた。人混みに紛れて今のところバレずに来れている。


「静佳……さん?」

 と思っていた江ノ島の入り口、鳥居のところで声をかけられる。


「あら、奈美ちゃんじゃない」


 銀に染められた髪をツインテール、涼し気な海の絵が入ったプリントシャツに、ハーフパンツの奈美。化粧なども含めて、普段とは雰囲気が違う。こうしてまじまじと見なかったら分からなかったかしれない。


「わざわざ髪型とメガネまで変えてきたのになんでバレたの?」

「髪型とメガネ程度じゃ変装とは言いがたいです」


 呆れたようなジト目で静佳を見る奈美。呆れているのは変装についてだろうか。


「そうね……次はもうちょっと凝ってみようかしら。で、どうしたの?」

「それはこっちの台詞です。なに物陰から見てるんですか?」

「あれ」


 そう言って指差した先には奈美も見慣れた三人。


「オサムお兄さんに、優里亜ちゃんにソーニャちゃん……。コソコソと尾行なんて、趣味悪いですね」


 思ったことをさらっと言ってしまう奈美。


「でも、気にならない?」


 そう聞かれて奈美はもう一度、三人を見直す。ソーニャが笑って、優里亜がプンプン何かを言ってて、オサムが困った表情をしている。


 一見すると両手に華だ。だが、優里亜がソーニャにオサムを取られまいと無駄に気を張ってしまっているし、そのソーニャ自身はと言うとその気が全く感じられないし、オサムはそんな状況に気がついてない。まるでラブコメ漫画だ。


「……気になります」



「並んでるわね」


 恋を叶えるべく、騒がしくしてるのは人も蝉も同じだった。

 夏休みシーズンの土日というだけあって、神社にも人は多かった。お参りの列は本堂の階段まで伸びており、観光に来た人たちやカップルがたくさんいる。


「俺は並ぶの平気だけど、今日はやめておく?」


 一応オサムは聞く。優里亜は好きじゃないかもしれないし、ソーニャはこういうのが我慢できないかもしれないと思った。


「ダメ! 今日オマーリする!」


 オサムが思ったのと真逆の答え。


(ソーニャって『する』って決めたら押し通すよなぁ。それに決断も早いし、彼女の頭の中の辞書には『腰が重い』って言葉は確実にない気がする)


 違うことを考えているオサムに代わり、優里亜が、

「オマーリって……お参り?」

「する!」


 頑固というかこだわりがあるというか、意志の強さを感じる。サーフィンをしにロシアからわざわざやって来たほどの女の子だ。サーフィン以外にも日本を堪能したいという気持ちは、オサムにも分かる。


「あたしも今日じゃなくてもいいんだけど……ま、いっか」


『あたしとこのひとの縁を結んでください』と神様に具体的にお願いすれば、もしかしたら叶えてもらえるかもしれないと優里亜は思った。



「神社にお参りするみたいね」

「静佳さん、あれ」

「なに? あの三人以外に見応えが……って何あの子」


 奈美が指差したその先には、重そうなレンズのカメラを構えた黒髪メガネの女性。


「奈美たち以外に、オサムお兄さんたちを尾行してる人がいますね」


 江ノ島はドラマなどの舞台にもよく使われる、ロケーションの良い場所だ。なのでカメラマンや観光客がカメラを構えているのはよく見る。

 だが、この場所で鳥や飛行機を撮影するのに使われる望遠レンズを構えているのは、非常に不自然な姿だとふたりは思った。


 レンズの向いた先は自分たちが見ているのと同じ人達だと静佳は思って、ふたりは女性の方へ。

 近づいて見るけど、女性はまったくそれに気が付かず夢中でシャッターを切っている。


 その表情は心底楽しそうだった。


「理衣」

「ひょっ!?

 ああ、静佳姉様……ご機嫌麗しゅう」


 素っ頓狂な声を上げた理衣。本当に静佳が近くに来るまで気が付かなかったようだ。


「ああ、理衣にも分かっちゃうのねこの変装」

「静佳さんのそれが変装かどうかはさておき。理衣さん、なんですその挨拶」

「淑女の嗜みっすよ。なーみん、あの時はお世話になりました」


 丁寧に礼をする理衣だが、頭を下げた時にカメラの重みでふらついてしまう。


「ううん。今度また一緒に買い物しようね」

「もちろんっす」

「ふたりになにがあったのかはいいけど、理衣がなにをしてたのかは気になるな」


「オサムくんがソーニャちゃんと優里亜ちゃんと両手に花状態で江ノ島デートなんて『カップルで江ノ島にくると別れる』というジンクスも恐れない行為に出ると聞いて居てもたってもいられなくなったっす」


 息継ぎせず早口で、興奮気味に説明する理衣。


「仕事は?」


 奈美が呆れた目で理衣を見つめる。静佳はいつものことだと知っているので、特に聞くことはない。


「休みっすよ。別にサボったわけでもないし、仮病を使ったわけでもないっす」

「ならいいですけど……」


「静佳姉様たちこそ、どうしたんすか?

 おふたりが一緒に行動なんて珍しいっす」


 そもそも、奈美と静佳に接点があったことにびっくりした。友達の友達は友達とというリア充理論が通じることを理衣は感じた。


「あんたと一緒よ」


 腕を組んで簡潔に静佳は答えるが、奈美はそれに異議ありとゲームの弁護士のような声をあげる。


「違います! 奈美はオサムお兄さんたちが、変なことを起こさないように見張ってるんですよ!

 そしたら静佳お姉さんがなにかを企んで、三人のあとをつけてたので、奈美はその野望を阻止するべく行動してたんですよ!」


 静佳と一緒にしてほしくないというのが奈美の意見。これは裏に違う理由があるなと察した理衣。


「本当は?」

「優里亜ちゃんを応援しにきた!」


 一転して恋話に花を咲かせる女子の顔で答えた奈美。理衣はかわいいなと思ったが、静佳は生意気な顔だと感じた。


「なるほどー。それじゃ一緒に行動しません?

 ひとりよりふたり、ふたりより三人がいいって聖書にも書いてあるっす」

「そうね、あんたを野放しにしたら警察沙汰になりそうだし」


 なぜ聖書から引用したのだろうかと疑問に思ったが、それ以上に、

「えっ、警察のお世話になったことあるです?」


 ということが気になり若干噛み気味に奈美が聞く。


「ないっすよ! えっちなゲームだってちゃんと高校卒業してからやってます!」

「男子みたいなこと言わないでください!」

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