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ロマニストがサーフィンをして見た景色  作者: 雨竜三斗
第二章 ツンデレニーソックスとサーフィン
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2-7 お兄さん積極的で~、奈美ちょっと戸惑っちゃったな?

 優里亜の指定した時間の少し前。ソーニャの来るようになったサーフィンショップに、今日もオサムは顔を出す。


 風鈴より涼しい音のベルと、本当に涼しさを感じるクーラーの風を、ドアを開けた直後に感じたところで、

「あら、オサムお兄さん」

「こんにちは、奈美ちゃん」


 最近来るこのオサムという人物を奈美は気にしていた。優里亜の幼なじみで、同じく最近よく来るようになったソーニャの友達で、サーフィンをして欲しいと思った人材のひとり。どうにかしてサーフィンに誘いたいとチャンスを伺って、オサムの前では暇を装って声をかける。


「ソーニャちゃんは一緒じゃないんだ?」

「今日は優里亜が来るよ。

あれこれあって、俺が優里亜の波乗りが見たいって頼んだんだ」


 オサムをサーフィンに誘うことは優里亜が、反対しているのでそこをどうしようか考えていた。そこでその優里亜を介してサーフィンを見学しに来たというのであれば、これは待ちに待ったチャンスだ。


「へぇ~、お兄さんやっぱり波乗りに興味湧いてきたんだね」


 営業スマイルとは違う笑顔で、潮が満ちるように少しずつオサムに近づく。


「まだやるか決めてないけどね」

「いいじゃん、奈美はお兄さんがサーフィンしてるの見たいなぁ~」


 そしてススッと奈美が距離を詰めてくる。オサムとは頭一つ身長が低い奈美は、上目遣いでオサムを見つめる。


 オサムの元に健康的な褐色と、夏は涼しそうな氷のような銀髪が迫ってきた。


「いや、だからそれを考えに来たわけで――」

「奈美的に言わせれば、お兄さんがサーフィンしてくれたら嬉しいなーって」


 さり気なくボディタッチしようとするも、

「……オサム、奈美、なにしてるの?」

「あら、優里亜ちゃん、こんにちは」

「……こんにちは」


 店の入口にふたりを睨んでいる優里亜がいた。その目つきは真夏の海も凍るような冷気を放っている。


「オサムあんた、ナンパする男だっけ?」

「ち、違う」

「そうなの、お兄さん積極的で~、奈美ちょっと戸惑っちゃったな?」


 奈美が予想もしないことを言い出した。オサムが反論しようと口を開くその前に、奈美は作ったような声を続けて、

「でもダメだよお兄さん、今日は優里亜ちゃんとデートなんでしょ?」

「で――」

「デートなわけないでしょっ!?」


 オサムが言う前に優里亜が日焼けしたように真っ赤な顔と、津波のような強さの声で反論する。さっきの冷たい目は奈美の『デート』という単語で一気にオーバーヒートしていた。


「こいつがっ!

 あたしのっ!

 サーフィン見たいって言うからっ!

 わざわざ来たのっ!」


(そんなに否定したいか?)


 オサムは特にデートという感覚は持ってない。そもそも優里亜は単なる幼なじみで、それ以外の感情は持っていない。なので優里亜のその様子を不思議な動きをする動物を見ているような目で見ていた。


 対して優里亜はそういうわけではない。大きく否定してしまったが、肯定したい自分も優里亜の中にはいる。

 肯定するだけではなく、今の奈美みたいにあざとく攻めていければいいと、羨ましさに近い感情もあったりする。


「とにかく着替えてくるから待ってなさいっ!」


 優里亜は地面の木の板を音を立てて踏みしめながら更衣室へ入っていくのを、見送ると、

「奈美ちゃん、なんであんなこと」

「うん? なんのことかな? 奈美分かんないや」

 と奈美は舌を出してごまかす。


 オサムはもういいやと思い違う話題を振る。

「そいえば、奈美ちゃんもサーフィンするんでしょ?」


 背中にお化けが出てきたように背中を伸ばす。妙な反応だと感じ、オサムは奈美の顔を見つめる。


「うん……まあ」


 今までの奈美と比べれば曖昧な返事で、目線も海に漂うように泳いでいる。

「よければ奈美ちゃんのサーフィンも見たいんだけど――」

「やだな、お兄さん。本当に積極的じゃない……」


 やっぱり曖昧な受け答えだ。オサムがおかしいと思ったそのとき、カーテンの開く音がする。


「さ、あたしの波乗り見せてあげるわ」


 優里亜はオサムの返事を待たずに、ずいずいと手を引っ張っていく。


「だからはえーよ」

「今日は乗るわよーっ!」


 やる気に満ちた独り言を言って、優里亜は振り向いて奈美にウインク。


「だから引っ張るなって。優里亜といいソーニャといい……」


 店を出て行くふたりを見て奈美はほっと一息つく。

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