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ロマニストがサーフィンをして見た景色  作者: 雨竜三斗
第二章 ツンデレニーソックスとサーフィン
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2-4 売上に貢献してあげたんだから、感謝しなさいよね

 優里亜がオサムを異性として意識し始めたのは中学の頃だった。


 最初はただの幼なじみ。腐れ縁とも言っている。それほど付き合いは長い。


 だからオサムがいじめを受けていて不登校になったと聞けば、なんとかしてあげたいと思うのは当然のこと。人一倍正義感の強い優里亜ならなおさらだった。


 オサムは状況を話してくれないので、自分で調べた。先生にも相談したが、ろくに対処をしてくれない。


 なら自分でやらないと、そう思った。


 優里亜が行動に移す前に、オサムが久しぶりに登校してきた。当然いじめっこから呼び出され体育館裏に連れて行かれる。


(絵に描いたような不良のすることね)


 いじめっ子たちの行動に呆れながら優里亜はオサムを助けに行こうとした。


 だが優里亜が口や手を出すことはなかった。


 優里亜が助けに行く前に、オサムはいじめっこを全員泣かせていたのだ。


 顔が真っ赤になったやつ、土下座して謝ってるやつ、それでも歯向かってきてオサムに投げ飛ばされるやつ。


 オサムは引きこもってなにをしていたのかと言えば、筋トレと格闘技の練習だった。ジムとかには通っていない。インターネットで調べて独学で学んだらしい。


 その後オサムは先生にこっぴどく叱られたが、いじめっこたちが自首して大事には居たらなかった。


 守ってあげなきゃと思った相手は、自分で強くなって、ひとりで立ち上がった。


 彼にはそれだけの強さがある。優里亜は破けたシャツの下に見える体を見てそう思った。


 もうひとつオサムが不登校になっている間、していることがあった。


 筋トレと平行して小説を書いていた。いつの間にかネットに投稿された挙句に出版社のおメガネにかない、本屋に並ぶことになっているらしい。


 書籍になる小説は投稿サイトから消えてしまう。なので優里亜は馴れない小説を頑張って読んで、もちろん本になった後もこっそり購入して熟読している。


「おっ、幼なじ――じゃなくて腐れ縁のよしみよ。売上に貢献してあげたんだから、感謝しなさいよね」


 という作中のキャラのような言葉まで言って、買ったことを伝えた。あくまで義理だということを強調したが、それが伝わったかどうかは分からない。


 思った以上に面白かったので、その感想も言ってしまった。オサムの力強さを、文章に落とし込んだような描写や台詞。身近なひとが書いているからか、感情移入しやすいキャラクター。中だるみせずに完結したこともあって、最後までちゃんと読むことができた。


 その続きは難しくても、オサムの文章をもっと読みたいと優里亜は思っていた。


 そんな小説を書いた印税で、大学の学費は全て払っているらしい。対して、優里亜はもちろん親から借りている。


 文武両道にしてどちらでも自立するオサムを、優里亜はただただ見つめていた。

 自分も立ちたい。彼と一緒に肩を並べていたい。

 それからは彼を追いかけるばかりだった。武道、スポーツで自立するために始めたのがサーフィンだった。


 だが、そのサーフボードに乗っても、彼には未だに追いついていない。

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