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ドラゴンさんのお肉をたべたい  作者: 寛喜堂秀介


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その89 幼女を屋敷につれ帰ろう



「影の魔女が、キミの妹?」


「なのだ! リーリンの方がふたつも年上なのだ!」



 えっへんと、赤髪幼女が胸を張る。


 そうかー。

 影の魔女ってこんな子供子供した幼女の妹なのかー。

 なんというか、ワイングラスと黒ドレスが似合いそうな、妖艶な毒蜘蛛系美女のイメージだったのが、一瞬にして黒ゴスロリ幼女になってしまった。かわいい。


 ん?

 影の魔女ってたしか王族だったよね?



「っていうことは、キミもローデシアの王族なの?」


「んー……たぶん? ずーっとウラの工房に篭もってたから、王宮でどんな扱いなのかはわかんないのだ!」


「ウラ……って、王都フランデルの背後にあるウラ山脈のことだよね?」


「そーなのだ! 素材はシェリルが持ってくるし、鍛冶だけやっててもシェリル以外は誰も文句言わないから快適なのだ! シェリル以外は!」



 うーん。

 やってることは、間違いなく彼女の超越した技術の囲い込み。

 窓口を一本に絞ることによって、自分の権力を強化する意図なんだろうけど……

 この子の性格じゃ王族としての務めとか無理だろうし、あんがい彼女への配慮なのかもしれない。



「ちゃんと食事を取れとか、ちゃんと寝ろとか、ちゃんと歯を磨いたか、とか、毎日やってきてリーリンの邪魔をするのだ! 口うるさいのだ!」



 うん。過保護なだけだこれ。

 本人も宰相の仕事で忙しいだろうに。


 というか食事と睡眠はちゃんと取ろうよ。



「力尽きたら眠るのだ! 起きたらご飯を食べるのだ! それ以外は鍛冶仕事なのだ!」



 想像以上にブラックな日常送ってるぞこの幼女。そりゃ心配になるよ。


 というか。



「そんな日常送ってて、よくロザンさんと知り合いになれたね?」



 わりと真剣に疑問だ。

 百年単位で引きこもってて、たぶん影の魔女にその存在を隠蔽されてたっぽいのに。



「シェリルが連れて来てくれたのだ!」



 おや?

 なんだかすごい情報を聞いちゃった気がして、ロザンさんに顔を向ける。



「修業時代にローデシアの王宮に潜りこんだことがあってな。そのときにこの人のところへ行って、何度か料理を振る舞った」



 またこの人王宮に入り込んでるよ。

 しかもやっぱり普通に出ていってるよ。

 そして超いい笑顔だよ。牙が輝いてるよ。



「……でも、影の魔女がよく手放したね? この子の存在や居場所まで知ってる存在を。普通放っておかないと思うんだけど」


「まあ、場所はさすがに目隠しで連れていかれてたが、普通に考えりゃそうだよな……修業半ばで囲われるつもりなんざ、さらさらなかったが」


「リーリンが怒ったのだ! 職人の修行を邪魔するとか最低なのだ!」



 うわ宰相弱い。

 まあ、影の魔女がこの子に弱いのなら、それは望む所だ。

 なんというか、政治利用するのが申し訳ないような単純な子だけど……ローデシアが乱れるのを避ける意味もあるので、許して下さい。







 とりあえず目処が立ったので、リーリンちゃんを屋敷に連れ帰って、エレインくんに相談することにする。

 いつも通り執務室に居たエレインくんに、一通りの経緯を説明する。



「と、いうわけで、槌の魔女リーリンの案内で、影の魔女シェリルと接触しようと思うんだけど……どう?」


「それはいいのですが……当人が……」



 エレインくんは、赤髪幼女に不安げな視線を向ける。



「だいじょうぶ、だいじょうぶなのだ……女神様が庇ってくれるから、黙って山を出たことをシェリルに叱られてもだいじょうぶなのだ……水竜の骨が欲しいのだ……」



 呪文のように自分に言い聞かせる幼女。

 うん。大丈夫。最大限の便宜は図ります。



「まあ、それが最良の手段だというのは分かります。だけど、心配ですね」


「なにが?」


「タツキ殿がたぶらかされないか、です。ライムングの太守イザークが古狸なら、影の魔女は狸の幻獣です」


「なにそれかわいい」



 ぽんぽこりんな黒ゴス幼女を想像して和む。



「……たとえが不適切でした。しかし彼女と会うなら、くれぐれもお気をつけを」


「大丈夫! 通信機渡して、交渉はエレインくんたちに全力で投げます!」



 拳をぎゅっと握りこんで全力で主張する。

 というか、エレインくんがそこまで恐れる相手に交渉とか怖くてしたくないです。



「タツキ殿のご期待に添えるよう、がんばりましょう」



 苦笑しながら、エレインくんは応えてくれた。







 その日はリーリンちゃんも屋敷に泊まることになった。

 のは、いいんだけど……大問題が発生した。



「なにこの子……かわいい……かわいい……」


「な、なんなのだ!? リーリンになにか用なのか!? なんでにじり寄ってくるのだ!? なんで抱きつくのだ!? 助けてなのだ女神様!」



 廊下でリディちゃんと出会ってしまったのだ。


 そして当然といえば当然と言うべきか。

 可愛いもの大好き病の発作を起こしてしまった。



「ごめん。この子の病気みたいなものなんだ。すぐに収まるから」


「怖いのだ! なんだか怖いのだ!」


「はいはい、リディ、この子も怖がってるし離れようね」



 幼女が悲鳴を上げるので、無我夢中って感じのリディちゃんから幼女を引きはがす。



「――はっ!? す、すみません! あんまりかわいすぎて!」


「だろうね……この子は槌の魔女リーリン。大事なお客様だから、以後失礼のないようにね」



 話を聞いて、リディちゃんはあわてて腰を直角に折った。



「な、名持ちの魔女様でしたかっ! 申し訳ありませんっ!」



 全力で謝るけど、赤髪幼女は私の影に隠れて出ようとしない。

 リディちゃんがちょっと涙目になったところに。



「なんの騒ぎですの……ああ、タツキさん、お帰りなさいまし」



 騒ぎを聞きつけたアルミラさんが、部屋から顔を出した。


 ……冷静に考えると、涙目になった赤髪幼女を背に張りつかせて、いっしょにいる金髪少女も涙目になってるって絵面は、ちょっとヤバいかもしれない。




次回更新7日20:00予定です。

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