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ドラゴンさんのお肉をたべたい  作者: 寛喜堂秀介


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その45 ニワトリさんとお話しよう



「えーと……」



 巨大なニワトリを前に、ほほをかく。



「私がアトランティエの新しい守護神獣、みたいなものやってる、タツキです」


「タツキ!? タツキ!? ふーむ……コケッ!」



 考えながら、ニワトリさんは意味なく鳴いた。

 獣っぽさが残ってるのは、大変いいことだと思います。



「小さいな!」


「まあ、あなたから見たらそうでしょうね」



 会話するにはサイズ差がすごい。

 というか、焼き鳥さんが無理して私と目線の高さを合わせようとするので、かなりしんどそうだ。


 こっこっこ、と、焼き鳥さんは首をひねって考える。



「すこし話しにくいな! ……よし、コケーッ!」



 突然、守護神鳥ドルドゥは両の翼を広げ、叫んだ。

 応じるように、その白い巨体は光に包まれて、どんどん縮んでいく。

 本物のニワトリサイズまで縮んだ焼き鳥さんは、すたっと、目の前にあった止まり木っぽいものに着地する。


 たぶん、人間と会話する時用のものなんだろう。ぴったり目線が合った。



「どうであるか? これで話しやすかろう、であーる!」


「……減った」


「減った!? 縮んだじゃなくてであるか!?」



 私のつぶやきを聞き咎めて、量を減らした焼き鳥さんが叫んだ。悲しい。


 ……いやまて。たぶん魔法を使ってなんだろうけど、伸縮可能ってことは。



「量を増やすこともできるの?」


「量!? なんの量であるか!?」


「イヤ ナンデモ ナイデス」


「なんだか卿の視線から、余の野生的危機感に訴えるものをヒシヒシと感じるのだが、どうなのかねそのへん!?」


「キノセイ デスヨ」



 私が誤魔化すと、焼き鳥さん(小)は疑るようにくるくると鳴いてから、あきらめて話を始めた。



「まあよい。聞け、アトランティエの新しき守護神よ。余と守護神竜アトランティエ殿は、はるか昔に盟約を交わした盟友である!」


「うん」



 焼き鳥さんの言葉に、うなずく。

 アトランティエの名を冠した王国。そこに属する都市の守護神獣ってことは、守護神獣同士でも主従関係とか、そういうのがあったんだろう。



「だが、アトランティエ殿は不幸にも身罷られたと聞く! 古き盟約も失効したということであーる! 太守イザークらはともかく、余個人がアトランティエに従う根拠は、もはや無くなったのであーる!」



 なるほど。

 太守さんが頭を痛めるはずだ。

 神鳥ドルドゥが、神竜アトランティエとの個人的な盟約によって従っていた以上、神竜亡き今、王国に所属する理由がない。太守と守護神鳥の利害がかみ合わなくなってるのだ。



「ふうん? じゃああなたはアトランティエの敵ってこと?」



 こくりと首を傾けると、焼き鳥さんはぎょっと目を見開いた。



「待てっ! どうしてそうなるのであるかっ!? どうして舌なめずりするのであるかっ!? どうしてじりじり近づいて来るのであるか!? お願いだから最後まで話を聞くのであーる!」


「最後まで聞いたらかじっていい?」


「いいわけあるかーっ、であーる!? 頼むから余に話をさせろーっ、であーる!!」



 止まり木の上で、ばたばたと翼をはためかせる焼き鳥さん。

 軽い調子で言ったら手拍子で了承してくれないかなって期待したけど、上手くいかなかった。残念。



「コケッ! いいか、余とアトランティエ殿の間には、盟約があった! それは……アトランティエ殿に従うかぎりにおいて、余が敵に襲われたとき、アトランティエ殿が余を守ってくれるというものだ!」


「それってたんなる庇護――」


「盟約であーる!」



 焼き鳥さんは強硬に主張する。

 まあ、焼き鳥さんも、神竜アトランティエと比べてそれほど見劣りはしないから、焼き鳥さんがそう言うなら、それでいいんじゃないかな。



「ともあれ、アトランティエ殿亡き今、盟約は失われた! だが、余のもうひとつの盟約の血族、イザークは都市アトランティエとの関係継続を望んでおる! ゆえに――余は望むのだ! アトランティエの守護神たる卿との新たな盟約を!」



 コケーッ! と、焼き鳥さんは主張する。


 えーと……つまり。



「アトランティエが死んじゃって不安だから守って欲しいってこと?」


「わかりやすく言わないでほしいであーるっ!」



 コケーッ、と、焼き鳥さんは悲鳴を上げた。







「ああ、だからか。太守さんとかその一族の人の前で、保護を頼むのもバツが悪いし、それで人払いしたんだね?」



 ぽん、と手を打つ。



「たいへん理解がよろしくてケッコー! だけどここにいる余に、すこしばかりの優しさを分けてくれまいか、であーる!」


「私にすこしばかりの肉を分けてくれたら考えるけど……」


「余のセクシーな肉体が狙われている!?」



 翼で身を庇う焼き鳥さん。



「まあいいか。で、盟約の話だけど」


「流していいのであるか? しっかり流れてるのであるか今の話? のちのち復活しないであろうな、である?」


「べつにアトランティエの盟約、私が継承してもいいんだけど……ひとつ、教えて欲しいことがあるんだ」



 にっこりと、笑顔で語りかける。



「な、なんであるか?」


「盟約を交わしたのは大昔の話だ。その時と今では、きっと状況が違うんだろう。でも、キミはいまこの状況で、新たな盟約を必要としてる。ってことは……」



 確信をもって、私は推理を告げる。



「居るんでしょ? 仮にも守護神獣であるキミが、今まさに危険を感じてる。そんな相手が」



 焼き鳥さんは、息をのみ。

 しばらくしてから、嘴を開いた。



「ご名答、であーる。余には、古くからの敵手が居るのであーる。古よりにらみ合いを続けている、いまもなおこの地と余の命を狙っておる相手が」


「それは、幻獣?」


「で、あーる。幻獣ガーラン。手ごわい相手ゆえ、いざという時には、手を貸してもらえるとありがたいのであーる」


「幻獣ガーラン……」



 その名をつぶやく。

 名前だけじゃどんな獣なのか分からない。



「幻獣ガーラン。これより東、ダウの二重山の内に棲む、赤の神牛であーる」



 その、説明を聞いて。



「守護神獣ドルドゥ。私は、神竜アトランティエの盟約を継承し、キミの危機には駆けつけることを約束する」


「おお、ありがたーい! であーる!」


「で、それとは別に、幻獣ガーランは狩りますね?」


「……コケッ?」



 私の超本気の瞳に、焼き鳥さんは鳩が豆鉄砲食らったような顔になった。


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― 新着の感想 ―
水炊きは諦めてすき焼きにしようって事ですね! ひとまずは
[一言] ウシさん逃げて!!超逃げてーーー!?
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