2話
2話目ですね。更新もっと早くしたいんですが…
「お母様!お手伝いにまいりました!」
「あら汐、きてくれたのね。じゃあそこにあるご飯をよそっておいてくれないかしら?」
「はい、わかりました」
お兄様達と別れて台所でお母様のお手伝いをします。私はよくお母様の手伝いをしているのでこれくらいならできます。簡単な料理くらいなら1人でもできるんです!
準備をしていると支度が終わったのかお兄様達がやってきました。その後ろにはお父様もいらっしゃいます。
「お父様、おはようございます」
「あぁ汐、おはよう」
「あの、お父様…」
「ん?どうしたんだい?」
「ボタンかけ間違えてます…」
「えっ!あっ本当だね。ありがとう汐、今日は大切な商談があったんだよ。あぶないあぶない」
「お父様またですか?汐が気づいてくれるからいいけど今度は気をつけてくださいね?」
「すまんね、櫂」
「父さんまた…?」
「しっかりしなよ父さん」
「うぅすまない…」
これでわかると思いますがうちのお父様、かなりのうっかり者なんです。いつもこんな感じではないんですよ?仕事の時なんか超しっかり者なんですけど、家ではなぜか抜けてるんです。
ちなみになんで仕事の時を知っているかというと、お弁当届けに行ったんですよ、仕事場に。お母様がうっかりお弁当を入れ忘れたので届けに行ったんですけど、その時のお父様はすっごくカッコよかったです…
「汐ってば急に頬が赤くなって…まさか好きな子が!?」
「違いますお母様!仕事の時のお父様はとてもかっこよかったなって思っただけです!」
「あー仕事の時の父様はね、確かに凛としてるよね」
「でしょ!櫂兄様!」
「2人とも、仕事のときはって酷くないかい?」
「俺お腹減ったんだけど…」
「僕も…」
あっいけない!ご飯の手伝いをしていたのに、いつの間にか待たせてしまいましたね。急いで準備しなくてはだめですね。
「汐、もうご飯は出来たから運んでおいてくれないかしら?」
「はい」
私たちが喋っている間にご飯を作り終えてしまったお母様。相変わらず早いです…。ちなみに十和兄様は少食なのでご飯はいつも少なめによそいます。白夜兄様や櫂兄様くらいしっかり食べて欲しいんですがねぇ…。
「お母様、支度できましたよ」
「はいじゃあみんな席についたかしら?」
「「「「「いただきます」」」」」
こうやってみんなでいただきますをするのは我が家のルールです。どんなに忙しくても朝ご飯は食べなさい!というお母様の話で朝はみんな揃ってご飯を食べるようになったのです。それに、お父様や櫂兄様は仕事があるので夕ご飯は一緒に食べられなくなることもしばしばですし。なによりみんなで喋りながらご飯をたべるのはいい事ですものね。朝から元気が出ます!
「今日も美味しいよ、琴奈さん」
「嬉しいわ晴彦さん」
あ、紹介が遅れましたが私のお父様の名前は晴彦と言います。有名な化粧品メーカーの営業を担当していて、部内ではわりといい成績なんだそうです。ちなみに櫂兄様は食品メーカーでの営業です。2人ともお客様への対応がよく、会社への印象が良いらしいですね。
「十和、宿題やった?数学のプリント」
「うんした。白夜は、国語のやつ解けたの?」
「難しかったけど十和がこの前教えてくれたのの応用だったからわかったよ」
「それは、よかった」
白夜兄様と十和兄様は同じ高校に通っています。十和兄様は理数系、白夜兄様は文系のコースですね。私も2人と同じ高校ですよ!ただ、コース選択は2年からなので私は普通です。
あ、こうしているうちにいつも登校してる時間になってしまいそうです。
「白夜兄様、十和兄様、そろそろ時間になりますよ」
「ほんとだ。準備しなきゃだ」
「僕、もういいや。ご馳走さま」
「3人とも、はいこれお弁当。十和のはいつも通り果物つけてるから、それなら食べれるでしょ?」
「母様ありがとう」
「うん、ありがと」
「ありがとうございますお母様!」
ご飯を食べ終えてから少し急いで準備します。今日はいつもより喋りすぎたせいで時間が遅れてしまいました。鞄の中の教科書を確認しているとコンコンとドアのノックの音が聞こえてきました。あれ?誰でしょう?
「はーい。あ、櫂兄様?」
「遅れてるみたいだから僕が送ろうか?ちょうど学校の近くのお客様の所に行かなきゃなんだ」
「いいんですか!」
「うん。白夜と十和にも言っておいたから準備終わったらガレージにおいで」
「はい!」
櫂兄様に送ってもらえるとは思わぬラッキーです。この時間に出ると、遅刻ではないんですがいつもよりは遅い時間に着くので…。準備を終えてガレージに向かうと、白夜兄様と十和兄様は既に乗っていました。
「すみませんお兄様、お待たせしましたか?」
「さっき、だから」
「十和の言う通り先ほど来たんだ」
「よしみんな揃ったならいくよ?」
「はい、お願いします!」
走り始めて10分ほどたった頃でしょうか?十和兄様がぽつりと一言呟きました。普段ならば聞いても流しているのですがその内容はちょっと、聞き逃せない内容でした。
「血、欲し…」
恐らく櫂兄様も白夜兄様も聞こえたのでしょう。車内が沈黙に包まれます。すると白夜兄様が鞄の中身を探し始めました。
恐らく携帯血液を探しているのでしょう。私達には1人1つずつ持たされているのです。十和兄様が暴走するのを防ぐために。
「十和、こっち見て。じっと目を合わせて」
櫂兄様が車を止め、どこかぼんやりとした様子の十和兄様と目を合わせます。すると先ほどまで虚ろだった兄様の目がふっと焦点を合わせました。
「櫂兄、僕、大丈夫だった?」
「大丈夫だから十和。ほら白夜の飲んで落ち着いて」
正気を取り戻した十和兄様はすぐに櫂兄様に質問しました。それに対してなだめる様に優しく返し、白夜兄様の持つ血液を飲むように促します。少し焦った様子の十和兄様でしたが携帯血液を飲むともう先ほどのような虚ろな表情ではなくなりました。
我が家の者は、特殊能力を持つと、いいましたよね。
十和兄様は”吸血”という能力を持っています。他人から血液を摂取する事でその人の情報を読み取ることができるのです。ただし人の血の味は一人一人異なっており、中には口にするのも躊躇う程のものもあるそうです。
そしてこの能力の問題点は突然沸き起こる飢餓感です。ざっくりと言ってしまえば血が飲みたくてしょうがなくなるというものです。説明を聞くとこれだけ?と思うでしょうがこれは非常に厄介なのです。
この飢餓感に襲われ暴走して仕舞えば、辺りの人間の血を手当たり次第に吸い尽くさねばならないほどの餓えに襲われるのです。
十和兄様も、幼いころはよく暴走しかけました。しかけた、と言うのは白夜兄様のおかげでしょうね。飢餓感に襲われた能力者はまず真っ先に自分の好みの者の血を飲み干しにかかるのです。そして十和兄様の好みの血は、白夜兄様のものでした。
だから白夜兄様は十和兄様が飢餓状態になった時、即座に自分の腕を切りつけていました。他の者の血を吸わないようにと。
ですがそんな事をして、ただで済むはずがないのです。
たとえ治癒の能力持ちだといえ、兄様の体は普通の人間の体。血を失いすぎしょっちゅう貧血を起こして倒れていました。
そんな時にお父様が十和兄様に一つ、質問をされました。
「十和」
「なに、父さま」
「お前は、新鮮な血液でなくても飲めるのか?」
「うん」
「そうか」
その後、私達に手渡されたのがこの携帯血液。白夜兄様の血を余裕がある時に採血し缶に詰めたものです。これを作って以来十和兄様が暴走する事は本当に時たま起こる程度になり収まりました。
もう学校に着くのでこの話は終わりにしますね。十和兄様の能力しか説明出来ませんでしたので次にお会いする時は能力を全てお教えいたします。
今回は十和の能力でした。さらっと白夜の能力も明かしましたが次回に櫂と汐、父様母様も含めて詳しく説明しようと思います。
というか十和は別の能力つけるつもりだったんですが…なぜか吸血になってしまいました。