変な手出しはさせない
息抜きに書きました。
ハッと気づけば転生していた。はっきりとはしないが、30歳に届かぬ身で死んだようだ。
3歳の時妹の桜が産まれ、母が亡くなった事で「ああ、乙女ゲーム世界に転生したのか」と気付いた。独り身を良い事にしていた乙女ゲームの世界、3次元の攻略対象を鑑賞できるんじゃね、と気付くと同時に私こと黒曜 明理は存在しなかった事に気付いてしまったのだ。
うん、その時は結構気軽に考えていた。妹とこれから義弟になる存在の過去という名の未来と、この世界の不思議を。
ここで少し私の家族と家を紹介したい。
まず、先ほども紹介したが私は黒曜 明理、現在7歳だ。私には3つ年下の妹がいて名を黒曜 桜という。サラサラの黒髪に桜色の瞳をした天使だ。母は桜を生んで直ぐに亡くなり、今日、新しい義母と義弟がやって来た。義弟は名前を黒曜 月也と言い、妹より更に1歳年下で此方もサラサラな黒髪に、薄い金の瞳の天使だ。妹は強気な天使で義弟は神秘的な天使だ。こんな色に溢れた世界でありながら、私は黒髪黒目だった、外見はそれなりに良い。
まあ、私の事などどうでも良いのだ。問題は桜と月也の関係なのだから。
乙女ゲームで桜は悪役令嬢役で出て来る。元々母が居ず寂しく、気が強かった桜は新しくやって来て、皆に構われる義弟月也を虐めるようになってしまう。仕事人間で気付かない父親と止めきれない義母。やがて義母も病に倒れ、僅か1年程で亡くなってしまうと、桜を止める者がいなくなり虐めもエスカレートするようになる。
義弟月也は攻略対象者として出演して来て、担当は『黒』のヤンデレルートだ。虐めが日常化してし、虐められるのが当たり前になってしまっている。
義父は仕事人間でめったに話す事もできず、母も亡くなっていない。居るのは虐めて来るが、側に居る義姉、心に闇を抱える月也はヤンデレ化するのだ。
この乙女ゲームの題名を『ギフトの饗宴』と言うが、月也ルートだけ『ギフトの狂宴』じゃないかと騒がれるほど、鬱展開の狂展開になって行く。
果たしてこんな展開を許せるだろうか、答えは否だ! 可愛い妹と義弟の為姉は頑張ります。
だが、世界には個人の頑張りだけではどうしようもない事がある。この世界には、乙女ゲームの題名になったように“贈り物”が存在するのだ。
ギフトとは、10~15歳の子供に時たま贈られる不思議な能力で、神様からの贈り物として大事にされている。また、ギフトは遺伝する事もあり、ギフト保持者は宝物として大事にされているのだ。ただし、遺伝すると能力が劣化する為、遺伝より直に貰ったギフトの方が上という風潮は拭えない。
そんな中黒曜家は、ギフトの名家と思われている。祖父がギフト保持者でその息子2人共にギフトが受け継がれるという奇跡が起きながら、息子2人のギフトの能力が劣化しなかったのだ。その為かギフト保持者の中での発言力は凄まじい。
ふふふ、2人は共に10歳の時ギフトに目覚める。桜は遺伝ギフトで劣化しているものの黒曜家の者として、義弟は直に貰ったギフト保持者として、それぞれ国に1つだけのギフト保持者の学園に行く事になる。 これは何としてもギフトに目覚めないと。いや気持ちでどうにかなるものじゃないよね、ふ~。あれ? 身体が軽い? って、浮いているって言うより飛んでいる。誰か助けて~。ギフトって10歳からじゃなかったの~。
え? 史上最年少のギフト保持者? 学園に行けって、嫌です。抗議します! 新しい家族できたばかりなのですよ、学園まで徒歩圏内じゃないですか。いろいろ危険だから? では父の休みの日は家に帰して下さい。私は7歳なのですよ、家族と居るのが大事だと思いませんか? 許可するって。ありがとうございます。
私のマシンガントークに学園の担当者が引いて、最後は許可をくれた。よっしゃ、勝った。私のギフトは『重力操作』。家とは縁も所縁もない能力の為、直に貰ったギフト判明した。
それからの私の生活は、慌ただしく過ぎて行く事になった。平日は3歳上の学年で勉強し、休日だけ父と家に帰り弟妹と遊び叱る。1人での休みなぞ過ごさず6年、ついに妹がギフトに目覚めた。父達と同じ『夢操作』という能力だ。遺伝能力の為、やはり劣化していたが黒曜家の名が更に上がる事になった。
義弟よ泣かないでおくれ、きっと来年には君も来られるはずだから。
翌年義弟もギフトを貰い、学園にやって来た。口さがない連中が、黒曜家は何か隠しているのではないかと言って来ていた。余りに五月蠅い奴は、どこぞの重力で遊ばせている。重力修行ってどこぞのアニメであったよね。生徒間での連絡網なめるなよ。
フラグはばきばきに折って来た。学園に入れられショックを受けたものの、土日の休日は毎回迎えに来る父は、仕事人間ではないと思う。弟妹と居られる時間は少なかったものの猫かわいがりした2人は素直に育った。トラウマなぞ欠片もない。
思うに最初の3年間、私でなければ心が折れていたのではないだろうか。いきなり3学年上の勉強をさせられるのだ。もちろんそれまでの事も教わるが、普通は分からない。更に、毎回土日に帰宅が許されている。いくら年下でも腹が立つだろう、何度となく喧嘩を吹っ掛けられたものだ。口で言われれば口で返し、ギフト使われればのらくらかわした。流石に、大人数で来た時にはやり返したが、10歳になってからは周りと同じ帰郷回数だったけどね。グスン。
ヒロインよ、変な手出しはさせないからね。
お読みいただきありがとうございます。
誤字脱字等ございましたら、教えていただけると幸いです。