5.レガーナは(意図せず)スルーした
ふと思いついたので追加。ネタを挟まないと死んじゃう病患者なのです。
ギャリギャリ、ガッコン!
キュラガタンキュラキュラガッコン
「…道が悪いわねぇ。これじゃ不整地よりはマシ、程度かしら。」
今走っている街道は、草が生えていない馬車道だ。土の道に轍ができていて、それを踏む度に大きく揺れる。当然かもしれない。馬車の轍よりも、履帯の幅の方が広いのだ。サスペンションを持ってしても、結構揺れる。
「やっぱりわかってはいたけど、視界が悪いわね…。」
スリットから外を見ながらごちる。歩兵戦闘車に限らず、装甲戦闘車両の多くは運転席の視界が悪い。視界を良くすると、その分防御力が下がって危険なのだ。視界が悪いが危険度が低い運転席、視界が広いが弾が飛んできたら死ぬ運転席。どちらかなのである。
と、その時一際大きく揺れた。
「ッ!?」
驚いて息が詰まる。今の衝撃は、何か轢いたか?しかし砲塔が反応していない所を見ると、人ではなさそうである。なら、まあいいか。
こうして私は、轢いた物が何かを知る事もなく通り抜けていった。
〜〜〜〜〜
突然だが、俺は盗賊だ。あ?違ぇよ。モンスター相手に「盗む」をする方じゃねえ、人間相手の盗賊だ。
「親方ぁ、準備出来やしたぜぇ!」
「よし、全員配置につけ!」
俺達は「草原の狼」って名前の盗賊団だ。村の食い詰め者が集まってできたばかりの、新興の盗賊団。…何?出来たばかりと新興で意味が被ってる?うるせぇ、ぶっ殺すぞ!?
…チッ。話が逸れた。ん?今何をしているか、だあ?決まってるだろ、狩場を作ったんだ。街道を塞ぐように倒木を置いて道を塞いで、馬車が目の前で止まったら一斉に取り囲んでヤる。どうだ、簡単だろう?
…何、倒木は重くて簡単には運べないだろうだと?それなら問題ねぇ。この倒木は中が腐って空洞だからな、見た目の割には軽い。横から見てもわからねえしな。と、そんな感じで俺達はうま「親方ぁ!」
「何だ、人が説明してる時に!」
「何か走ってきやす!馬車よりよっぽど速いでやす!」
「何ぃ?」
馬車より速い何か?そう思って街道を見ると、成る程確かに土煙を上げながら猛スピードで何かが走っている。ありゃあ…魔獣か!?
「獲物を構えろ!ありゃあ多分魔獣だ!」
「へいっ!」
後ろを向いて指示を飛ばし、前を向きなおすともう近くまで迫っていた。ありゃあ、何だ!?
「はっ、速い!?」
「狙えねえでやす!」
当然だが、俺達は元狩人とかじゃない。弓矢は止まってる相手か、精々馬車位までだ。あんな速さの奴には当てられねえよ!
「あっ、倒木が!」
子分の悲鳴と共に、倒木が魔獣(?)に轢かれた。元々腐って空洞だった倒木だ、耐えられずにバラバラに砕け散った。そして、あの魔獣(?)はギャリギャリと耳障りな音を立てて走り去った。
「…。」
「…。」
「よし、見なかった事にしよう。今日は仕事は止めだ、新しい倒木を探す。」
「…へ、へい。」
あれはきっと悪い夢だ。酒飲んで寝ればきっと忘れるだろう。多分。