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よん話目 「村のすみっこの帰り道」

―――放課後の教室。

いつもであれば、住んでいる地区が同じ凪胡と二人で帰るところだが、

それは今日は・・・いや、今日から変わることになった。

「ねぇねぇ!陽菜乃ちゃんはどこらへんに住んでるの?」

「え、あ、一応地区は「檜乃村宿谷川ひのきむらしゅくやがわ」です。」

宿谷川は檜乃村の北側に流れる川で、綾一と凪胡が住んでいる地区

でもある。      

「宿谷川!?うそ!?私と同じだよ!あと綾一もね?」

凪胡は自席で陽菜乃と話していたが、綾一の席は左隣の席だった。

「あぁ・・・てかいきなり話振るなよ・・・。」

「あ、ごめんごめん。ていうか、なんか今日の綾一いつもと違うよ?」

不意を突いたその意外な質問に、少しだけ体をびくつかせる。

「そ、そんなことないだろっ。そんなことより、西内・・・。

 これからよろしく・・・な。」

「あはは!綾一照れてるの?おもしろーい!」

凪胡お前ってやつはっ!!一方の西内陽菜乃本人は、小声で

「あ、よろしくお願いしますっ…。」と返してくれたので

心なしか少し安心した。綾一は初対面の人間と話すのが

得意ではなかった。人見知りというやつだ。

よし・・・とりあえず挨拶はできたから今日のところは

早めに帰ろう・・・。と綾一が逃げるように教室から

出ていこうとした・・・が。

「あれ?何帰ろうとしちゃってんの!3人で帰ろうよ3人で!。」

凪胡お前ってやつはっ!!

―――下校路。

「いやぁ、それにしても偶然だよね!年も地区も一緒なんて!」

「本当ですね、私も凪胡さんと家が近くて安心しました。」

あれ?この2人もう仲良くなっちゃってんの!?

綾一は顔色こそ一切変えていないが、内心では非常に驚いていた。

「もう、どうせ同級生なんだし、敬語とかいらないって!

 名前も「凪胡」って呼び捨てしてくれればいいよ?私も

 ちゃん付けで呼んでるし!」

「あっ、うん。そうだね…凪胡。」

ぎこちないタメ口がどこか愛らしく見える。

「あ、あと綾一のことも呼び捨てでいいからね?敬語とか

 使う必要全然ないし!。」

実際それが一番いいのだが、凪胡に言われると少し

腹が立つ…気がする。

「あぁ、そうだな。よろしく頼むよ。陽菜乃。」

凪胡がいてくれる安心感が背中を押してくれたお陰か、

自分も呼び捨てで呼ぶことができた。

「うん、よろしく…えっと、綾一君…。」

「あはは!でも陽菜乃ちゃんがこの村に来てくれてよかったよ!

 綾一と2人で登下校するのつまんないし。」

「朝から部屋に勝手に侵入して勝手に人んちで飯食ってるやつが

 言えたことか!」

「もぉー、だからあれは習慣だってー!」

凪胡と綾一のやり取りを聞いて、陽菜乃は苦笑いを浮かべているが、

その笑みの中には何気なく「安心感」が混ざっているような気がした。

居場所を見つけて安心したかのような笑み・・・。なんて、

考えすぎだろうか。

「私も・・・私も、この村に来てよかったかも・・・。」

そして陽菜乃のその言葉は控えめながらも、心の底から生まれた

ものなのだと、2人はすぐに感じ取ることができた。

「そうか、それはよかったよ。」

綾一はできる限りの笑顔を陽菜乃に送った。

「あ!そういえば陽菜乃ちゃんって、どうしてあんな大都会から

 こんな静かな村に引っ越してきたの?」

凪胡が言葉を発した瞬間、陽菜乃の表情は固まった。

「・・・あ、いいんだぞ陽菜乃、言えないなら言わなくても・・・。」

「あ、うん綾一の言う通りだよっごめんね変なこと聞いちゃって・・・!。」

2人は陽菜乃の表情を察し、気を遣って質問をなかったことにした。

「うん・・・ごめん・・・。」

陽菜乃は心の中で呟いた。


   .   .   .   .   .   .  .

―――話す時が来たら、全て話すから・・・。

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