ギルド【星屑ノ梟】
と、 いう事でギルド本部に招かれた私は、残りの三人と対面していた。
銀髪の青年、傘を持つ幼い見た目の少女、魔術書を読む不機嫌そうな少女。
「じゃあ俺から、かな?俺はイヴァー。一応このギルドのリーダーだよ。」
銀髪の青年は、頭を掻きながら恥ずかしげに名乗る。この人がリーダーか。誰がギルドリーダーか、疑問に思っていたが、やっとはっきりした。
次の子は、
「エマよ。」
と素っ気なく名前だけ言う。面喰らってしまう。まあ、こういう子は徐々に慣れていった方が良い。
そう結論付け、不機嫌そうな少女に視線を向けるが、少女は顔を上げようともしない。
レーヴェが軽く溜息を吐いた。
「・・・・この見るからに不機嫌そうなのはフィオナ。気を悪くしないでくれ。コイツはいつもこんな感じなんだ。」
参ったというように頭を軽く振るレーヴェ。そんなに気難しい子なのだろうか。
「青年、結局魔国の情報持って帰って来た?」
ラゼンの疑わしげな声。
「安心しろ。其処にいい情報網が居るじゃねぇか。」
レーヴェは、私を見る。
「そう簡単には、話せないわよ。」
私は、意地悪そうに眼を細めた。実際、何でもペラペラ喋って良い訳じゃないのだ。それなら、都市伝説みたいな噂も流されない。
「にゃ〜」
コウネが毛繕いをしながら、鳴く。
「えー!!じゃあ話してくれないの?」
ミリィアは、落胆したように言う。
「仕方ないでしょ、ミリィア。」
ティーグが宥める。
「ゴメンね。まだ、完全に貴方達を信用出来ないから。」
「当然ね。ホイホイ信用出来る筈ないもの。」
エマは、その返答を予測していたようだ。
「どうしたら、話してくれるんだ?」
イヴァーが、腕組みをして考え込む。
「そうね〜。どうしようかしら・・・・・」
何か交換条件を出そうか、それともお金?考えていると、コンコンとノックの音。
「どなたですか〜?」
ミリィアが扉の外に問い掛けると、
「ギルドに依頼に来たんだ。入っていいかい?」
扉を開けて、入って来たのは白い鎧に身を包んだ騎士。
「何だ、お前かよ。」
騎士の姿を見た途端レーヴェがうんざりしたような表情になる。
「僕じゃない他の誰かなら文句無いって言いたのか?」
騎士は、レーヴェにそう返すと、イヴァーの方を向く。
「少し、込み入った事情なんだ。今、大丈夫かな。」
「ああ。でも・・・・」
と、イヴァーは私に眼で問い掛けて来る。
「私は、大丈夫よ。それより、そちらの騎士さんのご用件の方が重要でしょ?」
微笑めば、イヴァーがほっとしたように笑みを浮かべた。
騎士は訝しげに私を見ている。
「君は・・・・エルフ・・・・なのか?」
「ええ。色々あってね。知りたかったらレーヴェに聞いたら良いと思うけど。」
「おい!俺に話振るなよ!」
レーヴェは、不満げに反論する。
「私を魔国から、連れ出したのは貴方じゃない。」
「自分から付いて来るっ言ったろ!」
「そうだった?私、この頃記憶力悪くて・・・・」
「嘘つけ!それなら、魔術の呪文なんざ、とっくに忘れてんだろ!」
「呪文は、覚えられるのよ。何故か。」
「ったく、お前はさっきから・・・・」
「二人共、いい加減になさい。」
エマが、口を挟む。
渋々、レーヴェは口を噤んだ。
「話を止めてしまってゴメンなさい。どうぞ、続けて。」
騎士は戸惑っていたが、自分の用を思い出し、顔を引き締めた。
「実は、国の東に位置する神殿に何者かが押し入ったらしいんだ。神殿を守る神子や教祖達も困っている。」
「あの神殿は、警備厳重で誰も入れないんじゃ・・・・・」
ティーグが、首を傾げる。
「その筈なんだ。しかし、大扉が開けられていた。神殿内は広いし、敵の数もはっきりしない。騎士団だけでは、対応し切れない。それで、このギルドに協力を頼みたい。もちろん、代金は払うよ。」
「断る訳無いよね?イヴァー!」
「そうだな。」
力強く頷くイヴァー。流石は、ギルドリーダーだと感心する。
「じゃ、一肌脱ぐかね〜。老体には、辛いんだから気遣ってよ、イヴァー青年。」
ラゼンが、腰を叩きながら言う。
「大袈裟。まぁ、面白そうだし行くわよ。」
エマは、ニヤリと笑う。
「折角、依頼してくれたんだもんね。」
ティーグは拳を握る。
「へいへい、行きますよ。やれやれだな。」
と、溜息を吐くレーヴェ。
イヴァーは、一言も発しないフィオナに声を掛けた。
「フィオナ?おーい、フィオナ!」
「ん?何よ、うるさいわね。あたしは今魔術書読んで─────────」
迷惑そうに顔を上げたフィオナの眼が、私を捉えた。
「──────────誰?」
「初めまして。やっと話してくれたわね。」
私はにっこり。
「は?ってか、アンタその耳・・・・・」
フィオナが、眉を寄せ、何か言い掛けたが、
「フィオナ、後で状況説明するから。今は、依頼に集中しよ。」
ミリィアが遮った。
「依頼?解ったわよ。行けばいいんでしょ。」
フィオナは、本を閉じると腰に手を当てた。
「じゃ、私も行こうかな。」
私は、イヴァーを見つめる。
「イヴァー、ダメかな?」
「人手不足みたいだし、同行してくれると嬉しいよ。」
イヴァーは、了承してくれる。
「ありがとう。そのご期待に添えるよう、頑張るわ。」
それから、私は騎士にも微笑む。
「宜しくね、騎士さん。私はセレネよ。」
「僕は、アルフだ。協力感謝するよ。」
《時よ、止まれ》
時は歯車を廻す ぐるぐる くるくる
その歯車に呑まれ 消え行くモノ
大切なモノ かけがえのないモノ 歯車は
無情に呑み込んで行く だからこそ
無くさないように必死に掴む
その手に この手に
ああ 時が止まってしまえば 失わずに済むのに
大切な人を 大切な思い出を
無邪気だった自分自身を
ダレカ トキヲ トメテ