表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緋鏡烈狂  作者: 翡翠蝶
22/25

信じて

─────────────消えた。消えてしまった。自分の眼の前から。刹那に。

レーヴェは虚しく宙を掴んだ手を力無く下げる。瞳から流れるモノが涙だと、気付くのに数秒を要した。

彼女は、笑っていた。最期まで。感じていた温もりが消失して行く。

背後を見れば、先程まで取り乱していたのが嘘のように仲間達は呆然としていた。一人だけ。クラウリアだけは無表情だ。妙な少女は、セレネが完全消滅すると同時に具現化を果たしていた。浮いたままだったが。セレネは『あの子をよろしく』と言っていた。俺達に、あの子供の世話を任せると言う意味合いだろうか?

考えても埒があかないと少女の傍まで歩む。

少女は、俺が近づいても怯えたりしなかった。じっと、セレネの消滅した場所を見つめ続けている。

『お兄さんは、セレネの事が大好きだったんだね。』

言われた言葉に、戸惑う。

『お兄さん、セレネが大好きだったんでしょ?』

もう一度、質問を繰り返され頷いた。

『セレネ、愛されてたんだ。良かった。』

嬉しそうに微笑む少女。笑った顔がセレネによく似ている。胸が痛くなり、レーヴェは視線を少女から逸らした。

「にゃ〜」

コウネが足に纏わりつく。心配してくれているようだった。

「レーヴェ。」

声が掛かる。ティーグが状況を飲み込めていないのか眼を瞬かせている。

「セレネは、何処に行ったの?」

「さあな。アイツは死んだ。けど、死んだ後の事までは知らねぇんだ。」

『セレネは、あの方の元に逝ったんだよ。』

「あの方?」

『あの世とこの世を支配下に置く人だよ。』

「誰だよ・・・・・・」

呟く。この少女はどうも話す論点がズレているように感じる。本人に自覚がないのか。

「あのエルフ、死んだのね。」

いつの間にか、隣に居たエマがぽつり、と言った。

『ううん。確かにセレネは死んだけどもう一回転生出来る可能性もあるから。』

「は?」

そんな話は聞いていない。てっきり、もう会えないと決め込んでいたのだが。

「あれ?知らなかったの?」

クラウリアの意外そうな声。どうやら、この生意気な吸血鬼は知っていたらしい。

『でも、転生出来る可能性はスゴく低いの。転生したい人は一杯居るんだけどあの方が中々承知しなくて。』

だからえ、あの方って誰だよ。というツッコミは胸中に押し留めた。

「つまり、セレネは転生出来るかもしれないんだな?」

エマ同様にいつの間にか傍に佇むリネスが尋ねる。

『そうだよ。だから、お兄さん達は信じてあげて欲しいの。セレネが転生出来るって。それが今、お兄さん達が出来る事だよ。』

「そう、なのか。」

妙な感じがするが、それが今出来る最善ならば仕方ないのだろう。空を見上げる。

「信じて待ってるからな。帰って来いよ・・・・。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ