青い満月と目覚め
「────────!」
ハッと眼を覚ます。懐かしい夢を見ていた気がする。でも、とても苦しくて哀しいユメ。
上体をベッドの上で起こした。
「にゃん」
ベッドの端で丸くなっていたコウネが頭を持ち上げる。
同室では、エマとリネスが穏やかに眠っている。クラウリアのベッドはもぬけの殻だったが、彼女は夜行性だからそう心配する必要も無いだろう。
視線を窓の外に向ければ青い満月が煌々と輝いていた。ぼんやりと月を眺めていた時、
『セレネ』
頭の奥に直接響く声。忘れられない優しい声だった。
「・・・・・アヤツキ・・・?」
私はその声に、導かれるように窓を開ける。
『うん、私だよ。セレネ。』
少女の声が嬉しそうに言う。
(アヤツキ。目覚めたのね。)
私は、心の中で語り掛ける。
『久しぶりだね、元気そうで良かった。』
(貴方も。もう・・・・大丈夫なの?)
『たっぷり眠ったから、平気だよ?また世界の守護、出来るようになったよ。』
(そう。じゃあ、この命は還さないとね。)
辛さを堪える。
『そうだけど、そんなに急がなくても良いよ。』
(いいえ、今の世界には貴方が必要不可欠になっているの。)
『やっぱり、そうなんだ。』
哀しげに、アヤツキの声は呟く。
(知っていたのね・・・・・・)
『知りたくなくても解っちゃうもん。』
(アヤツキ────────明日、貴方の封印を解くわ。)
『え・・・?そんな突然過ぎだよ。セレネの友達も悲しむよ?』
(此処に居続けるのは堪えられないの。あの人の傍に居るのは・・・・・)
『あの人って誰?』
(・・・・えっと・・・・なんて説明すれば良いのかしら・・・・)
「セレネ?」
二階の窓の外─────正確には隣の窓から声が掛かった。
横を覗けば、窓から身を乗り出したレーヴェの姿が満月の光に照らされ視認出来た。
「まだ、起きてたのね。」
笑みと共に言えば、
「落ち着かなくてな。」
と返答。
私は、窓枠に肘をつき身を乗り出す。
「そっちこそ、寝ずに月見か?」
「ええ。こんなに綺麗な満月、滅多に拝めないもの。」
「青い月ってのも珍しいしな。」
レーヴェも月を眺めながら言う。
「月は太陽より優しいわ。」
「何だ、それ」
「兄が、月を見る度に言っていたの。『月は太陽のように明るく輝けないけど、柔らかな光で人を慰めてくれる』───────私もそう思う。だから朝はニガテなの。」
「ふうん。」
微かにレーヴェの顔に不満が滲み出た。何か気に障る事を言っただろうか。
私は小さく首を傾げる。しばらくの沈黙の後、
「なあ、話したい事があるんだが・・・・」
とレーヴェが言って来た。それならば、私もレーヴェにだけは逸早く打ち明けよう。
「そう───────丁度良かったわ。私も、話したい事があるの。」
言おう。自分が明日、消える事。今まで楽しかったという事。そして──────大好きだ、という事を。




