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緋鏡烈狂  作者: 翡翠蝶
19/25

青い満月と目覚め

「────────!」

ハッと眼を覚ます。懐かしい夢を見ていた気がする。でも、とても苦しくて哀しいユメ。

上体をベッドの上で起こした。

「にゃん」

ベッドの端で丸くなっていたコウネが頭を持ち上げる。

同室では、エマとリネスが穏やかに眠っている。クラウリアのベッドはもぬけの殻だったが、彼女は夜行性だからそう心配する必要も無いだろう。

視線を窓の外に向ければ青い満月が煌々と輝いていた。ぼんやりと月を眺めていた時、

『セレネ』

頭の奥に直接響く声。忘れられない優しい声だった。

「・・・・・アヤツキ・・・?」

私はその声に、導かれるように窓を開ける。

『うん、私だよ。セレネ。』

少女の声が嬉しそうに言う。

(アヤツキ。目覚めたのね。)

私は、心の中で語り掛ける。

『久しぶりだね、元気そうで良かった。』

(貴方も。もう・・・・大丈夫なの?)

『たっぷり眠ったから、平気だよ?また世界の守護、出来るようになったよ。』

(そう。じゃあ、この命は還さないとね。)

辛さを堪える。

『そうだけど、そんなに急がなくても良いよ。』

(いいえ、今の世界には貴方が必要不可欠になっているの。)

『やっぱり、そうなんだ。』

哀しげに、アヤツキの声は呟く。

(知っていたのね・・・・・・)

『知りたくなくても解っちゃうもん。』

(アヤツキ────────明日、貴方の封印を解くわ。)

『え・・・?そんな突然過ぎだよ。セレネの友達も悲しむよ?』

(此処に居続けるのは堪えられないの。あの人の傍に居るのは・・・・・)

『あの人って誰?』

(・・・・えっと・・・・なんて説明すれば良いのかしら・・・・)

「セレネ?」

二階の窓の外─────正確には隣の窓から声が掛かった。

横を覗けば、窓から身を乗り出したレーヴェの姿が満月の光に照らされ視認出来た。

「まだ、起きてたのね。」

笑みと共に言えば、

「落ち着かなくてな。」

と返答。

私は、窓枠に肘をつき身を乗り出す。

「そっちこそ、寝ずに月見か?」

「ええ。こんなに綺麗な満月、滅多に拝めないもの。」

「青い月ってのも珍しいしな。」

レーヴェも月を眺めながら言う。

「月は太陽より優しいわ。」

「何だ、それ」

「兄が、月を見る度に言っていたの。『月は太陽のように明るく輝けないけど、柔らかな光で人を慰めてくれる』───────私もそう思う。だから朝はニガテなの。」

「ふうん。」

微かにレーヴェの顔に不満が滲み出た。何か気に障る事を言っただろうか。

私は小さく首を傾げる。しばらくの沈黙の後、

「なあ、話したい事があるんだが・・・・」

とレーヴェが言って来た。それならば、私もレーヴェにだけは逸早く打ち明けよう。

「そう───────丁度良かったわ。私も、話したい事があるの。」

言おう。自分が明日、消える事。今まで楽しかったという事。そして──────大好きだ、という事を。


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