秘密と突然の申し出
宿に戻った一行に、私は黒妖狐変化の事を省いて事情を説明した。皆、戸惑いを隠せない。
「王が、“カギ”を狙うとは・・・・・」
リネスが、渋い顔で呟く。重苦しい空気が流れる。
「まだ、その時は来ていない。」
私は、凛とした声で告げた。
「彼女が目覚めようとしているのは、はっきりと探知出来る。でも・・・・・」
言葉を探しながら、私は慎重に話す。
「彼女の目覚めは、もう少し、先よ。今“カギ”を使ったとしても・・・・何も・・・起こらないわ。」
「その彼女って、誰よ?」
エマが、不機嫌そうに質問して来る。
「それも、すぐに解る。私の口からは言えない。」
「どうしても、か。」
じっとレーヴェに見つめられ私は俯く。
「リネスは、知ってるみたいだけど・・・・・」
ティーグの視線に、リネスはかぶりを振った。
「私が、解る事は限られている。私は、セレネの言う彼女の名までは知らないのだ。」
私は、押し黙りぐっと唇を噛む。私が抱える秘密を全て吐露してしまいたい、という衝動に駆られる。
そうすれば、こんなに心苦しくはならないだろう。けれど、それはアヤツキとの契約に反する行為だ。
と、その時。私の首筋の肌が粟立つ。この感覚は、覚えがある。私は、黙って座っていた椅子から立ち上がると、色々な議論を繰り出している皆に微笑み掛けた。
「ちょっと、外の空気吸って来るわね。」
扉を開け、宿屋の一室を出ると外へ向かった。
「おっ。来た来た。」
外に出ると、案の定クラウリアが待っていた。
「やっほ〜☆わざわざ此処まで来てくれてありがと。」
クラウリアは、呑気そのものだ。
「クラウリア。貴方なら、気づいているのでしょう?」
「うにゅ〜?」
妙な奇声を上げながらクラウリアは小首を傾げた。
「何のコト?」
私は、動揺を隠せず、
「貴方、彼女の目覚めの時が近付いているって気付いていないの?!」
「ああ、そのコトか。」
クラウリアは、納得したように頷く。
「でも、私がセレネを呼んだのは全然違う理由。」
「“カギ”の件?」
「まぁ、それに関係してる、かな。」
クラウリアは、にこぉと笑う。
「私を、仲間に加えて♪」




