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緋鏡烈狂  作者: 翡翠蝶
14/25

覇国で再会、男の名は・・・・・

「凄い・・・」

ティーグが零した言葉は安直かつ的確だった。

覇国【ディバーラグ】は皆の予想を遥かに上回る程、圧倒的だった。ピラミッド型に造られており、国の頂上に王城が聳え、その周りを囲むように家々や店が並ぶ。段々のように連なる国の形に私は、どういう風に造ったのか、と至極どうでもいい疑問を抱いたのだった。

国に入ると、街の喧騒がよく聞こえた。通り過ぎる人は皆、明るい顔で暗い表情の人は見受けられない。

「覇国の王様は、どれだけの力があるのかしら?」

私の驚きと感心の質問に、

「この国の王は、一人で軍五万人を蹴散らす力と、頭脳で王まで上り詰めた切れ者というか、覇王みたい。前王が死去して、混沌としていた国も現王がその辣腕で纏め上げたそうよ。」

エマが、この国の王について解説してくれる。

なるほど、と納得する。クラウリアが仕える主が誰かを瞬時に理解した。クラウリアは、知っているんだろうか?あの少女が言っていた時が近付いているという事実に。

『やっと、逢えるね。』

柔らかな声が耳に届き、私は辺りを見回してしまう。今のは・・・・・空耳?でも、あんなにはっきり聞こえたのに。私は瞳孔を開き、必死に彼女を捜す。居る訳ない。解っていても。

「どうした?先程から誰かを捜しているようだが。」

リネスが、眉を顰めた。

「昔の知り合いの声が聞こえたから。空耳───だったみたいだけど。」

私は、肩を竦めてみせる。

「今は、あのいけ好かない眼鏡男を捜すのが先だ。」

レーヴェは、刀の鞘を持つ手に力を込める。

「あの顔一発殴ってやる。」

「バカね。」

エマが、溜息を吐く。

「覇国の中でその眼鏡男を捜すのに、どれだけ時間費やすつもり?」

「そんなに時間は掛からないわ。私、場所が解ったから。」

「は?何処だよ?」

私は覇国の頂上に視線を向けた。

「まさか、王城?」

ティーグが眼を丸くした。

「八十パーセントの確率でね。」




ならば、確かめに行こうと王城に向かおうとしたが、リネスはどうする気なのかという疑問がまだだった。

「私は・・・・・・・」

言い淀んだリネスだったが、何を考えたのか一人で頷いた。

「このまま、君達に同行させて欲しい。私の目的は君達と一緒に行動していれば、いずれ達成出来るのだから。」

私は、唇を噛む。彼女の目的は“カギ”を見つける事。確かに、隠した張本人の傍にいれば目的は達成出来る。“カギ”を使うべきか。時は着実に近付いている。

「にゃ〜」

コウネが足元に擦り寄って来る。

『りりん』

鈴の音が響く。私は、コウネを抱き上げ空の彼方を見つめた。

ねぇアヤツキ、私はどうするべきなのかな?

答えは返って来なかった。




城門の前は、たくさんの人が行列をつくっていた。

「何かの祭りか?」

などと、リネスは真面目に考えている。

「違うわね。王への謁見・・・・じゃない?」

エマの予想は当たっていた。近くに立つ兵士に尋ねれば、この行列は謁見を待つ人達だと言う。

「この人数、半端無いだろ。王の苦労が凌がれるな。」

「それが、そうでも無いんですよ。」

その声にレーヴェが殺気立った。後ろを振り返れば、眼鏡の男が立っていた。

「テメー、何時の間に・・・・・」

「王は、民の幸せを一番に考えている方でね。謁見も苦にしていないんですよ。」

男は、満面の笑みだ。

「また、会えましたね〜。名乗るのを忘れていました。何しろ、立て込んでいたものですから。私はアイザックといいます。」

「俺は、レーヴェ。テメーと決着をつけに来たんだ。中途半端が大嫌いだからな。」

「おや。偶然ですね〜、私も中途半端は好んでいないんです。」

今にも飛び掛かりそうなレーヴェを制し、私は前に出る。

「今は、貴方と争うつもりは無いの。」

「それは、良かった。いや〜実はですね。王が是非会って話をしてみたい、と申されていましてね。敵意があれば実力行使で引き摺って行こうと思っていましたが、話が通じる方が居て下さって何よりです。」

レーヴェが、鋭くアイザックを睨み付けた。

「一緒に来て頂きますよ。セレネ殿。」

何故、名前を・・・?と疑問になったが、クラウリアが話したのかと思い当たる。

「一人で来いって事かしら?」

「はい。すみませんが、他の方はお通し出来ません。王のご指名はセレネ殿だけですから。」

仕方ない、と進み出ようとした所をレーヴェに手を掴まれた。戸惑いながら、振り返るとレーヴェが強張った表情で首を横に振った。

「一人では、行かせられねぇな。」

「大丈夫、私は平気だから。」

微笑むが、レーヴェは掴む手に力を込めるだけだった。

「お熱いのは結構ですが、急いで下さいませんかね。」

アイザックの言葉に、レーヴェは小さく舌打ちをすると渋々といった様子で手を放した。

「すぐ、戻って来るわ。」

それだけ言うと私は身を翻し、アイザックの後に付いて城の中に入ったのだった。

「にゃあん」

コウネの鳴き声が最後に聞こえた。

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