覇国で再会、男の名は・・・・・
「凄い・・・」
ティーグが零した言葉は安直かつ的確だった。
覇国【ディバーラグ】は皆の予想を遥かに上回る程、圧倒的だった。ピラミッド型に造られており、国の頂上に王城が聳え、その周りを囲むように家々や店が並ぶ。段々のように連なる国の形に私は、どういう風に造ったのか、と至極どうでもいい疑問を抱いたのだった。
国に入ると、街の喧騒がよく聞こえた。通り過ぎる人は皆、明るい顔で暗い表情の人は見受けられない。
「覇国の王様は、どれだけの力があるのかしら?」
私の驚きと感心の質問に、
「この国の王は、一人で軍五万人を蹴散らす力と、頭脳で王まで上り詰めた切れ者というか、覇王みたい。前王が死去して、混沌としていた国も現王がその辣腕で纏め上げたそうよ。」
エマが、この国の王について解説してくれる。
なるほど、と納得する。クラウリアが仕える主が誰かを瞬時に理解した。クラウリアは、知っているんだろうか?あの少女が言っていた時が近付いているという事実に。
『やっと、逢えるね。』
柔らかな声が耳に届き、私は辺りを見回してしまう。今のは・・・・・空耳?でも、あんなにはっきり聞こえたのに。私は瞳孔を開き、必死に彼女を捜す。居る訳ない。解っていても。
「どうした?先程から誰かを捜しているようだが。」
リネスが、眉を顰めた。
「昔の知り合いの声が聞こえたから。空耳───だったみたいだけど。」
私は、肩を竦めてみせる。
「今は、あのいけ好かない眼鏡男を捜すのが先だ。」
レーヴェは、刀の鞘を持つ手に力を込める。
「あの顔一発殴ってやる。」
「バカね。」
エマが、溜息を吐く。
「覇国の中でその眼鏡男を捜すのに、どれだけ時間費やすつもり?」
「そんなに時間は掛からないわ。私、場所が解ったから。」
「は?何処だよ?」
私は覇国の頂上に視線を向けた。
「まさか、王城?」
ティーグが眼を丸くした。
「八十パーセントの確率でね。」
ならば、確かめに行こうと王城に向かおうとしたが、リネスはどうする気なのかという疑問がまだだった。
「私は・・・・・・・」
言い淀んだリネスだったが、何を考えたのか一人で頷いた。
「このまま、君達に同行させて欲しい。私の目的は君達と一緒に行動していれば、いずれ達成出来るのだから。」
私は、唇を噛む。彼女の目的は“カギ”を見つける事。確かに、隠した張本人の傍にいれば目的は達成出来る。“カギ”を使うべきか。時は着実に近付いている。
「にゃ〜」
コウネが足元に擦り寄って来る。
『りりん』
鈴の音が響く。私は、コウネを抱き上げ空の彼方を見つめた。
ねぇアヤツキ、私はどうするべきなのかな?
答えは返って来なかった。
城門の前は、たくさんの人が行列をつくっていた。
「何かの祭りか?」
などと、リネスは真面目に考えている。
「違うわね。王への謁見・・・・じゃない?」
エマの予想は当たっていた。近くに立つ兵士に尋ねれば、この行列は謁見を待つ人達だと言う。
「この人数、半端無いだろ。王の苦労が凌がれるな。」
「それが、そうでも無いんですよ。」
その声にレーヴェが殺気立った。後ろを振り返れば、眼鏡の男が立っていた。
「テメー、何時の間に・・・・・」
「王は、民の幸せを一番に考えている方でね。謁見も苦にしていないんですよ。」
男は、満面の笑みだ。
「また、会えましたね〜。名乗るのを忘れていました。何しろ、立て込んでいたものですから。私はアイザックといいます。」
「俺は、レーヴェ。テメーと決着をつけに来たんだ。中途半端が大嫌いだからな。」
「おや。偶然ですね〜、私も中途半端は好んでいないんです。」
今にも飛び掛かりそうなレーヴェを制し、私は前に出る。
「今は、貴方と争うつもりは無いの。」
「それは、良かった。いや〜実はですね。王が是非会って話をしてみたい、と申されていましてね。敵意があれば実力行使で引き摺って行こうと思っていましたが、話が通じる方が居て下さって何よりです。」
レーヴェが、鋭くアイザックを睨み付けた。
「一緒に来て頂きますよ。セレネ殿。」
何故、名前を・・・?と疑問になったが、クラウリアが話したのかと思い当たる。
「一人で来いって事かしら?」
「はい。すみませんが、他の方はお通し出来ません。王のご指名はセレネ殿だけですから。」
仕方ない、と進み出ようとした所をレーヴェに手を掴まれた。戸惑いながら、振り返るとレーヴェが強張った表情で首を横に振った。
「一人では、行かせられねぇな。」
「大丈夫、私は平気だから。」
微笑むが、レーヴェは掴む手に力を込めるだけだった。
「お熱いのは結構ですが、急いで下さいませんかね。」
アイザックの言葉に、レーヴェは小さく舌打ちをすると渋々といった様子で手を放した。
「すぐ、戻って来るわ。」
それだけ言うと私は身を翻し、アイザックの後に付いて城の中に入ったのだった。
「にゃあん」
コウネの鳴き声が最後に聞こえた。




