甘い想いは風に攫われて
短いです。
しん、と沈黙が訪れた。私は、自分の手に視線を落とす。
「大好きな人をこの手で殺めてしまったのよ、私は。それから、逃げるように隠れ里を離れて。それから、旅をした。眠ると必ずお兄ちゃんが出て来た。遠くに行ってしまうの。手を伸ばして叫んでも一度も振り向いてくれない。当然よね。だって、私、は・・・・・・・・っ」
声の震えを抑えられず、私は嗚咽を漏らす。
「もう、いい。」
レーヴェの声が優しく響く。けれど、私は黙って首を振ると続けようとした。
「だって・・・・・私・・・・・は・・・」
頬を伝う熱い雫、知らぬうちに溢れた涙だと私は気付く。
「あ・・・れ・・?私、なんで泣いて──────────」
ゆっくりと手が伸びてきて、私は引き寄せられる。そのまま、力強い腕に抱き締められた。
「・・・・・えっ・・・・・?」
自分はレーヴェの腕の中に居るんだ、という事実が認識出来ない。
「いいって、言ってんだろうが。充分だ。」
頭を撫でる温かい手。私は、震える唇を動かす。
「・・・・・お兄ちゃん・・・・・」
紡がれた言葉は、それだけだった。私は眼を瞑り、身体をレーヴェに預けた。
そして、レーヴェの腕の中で静かに泣き続けた。
翌日、一行は無事出発した。
道を歩きながら、私は囁く。
「レーヴェ。昨日はありがとう。」
「・・・・・礼言うなら、まだ話してない事、話してくれるか?」
私は、頷いた。
「何時か、きっと話すわ。」
「待ってるぜ。」
微笑み合う。私は小さく呟いた。
「貴方なら・・・・貴方になら、話せる。」
私は、眼を細めた。この甘く切ない想いは何か、など既に気付いていた。けれど、認めたくはなかった。人に好意を寄せる事はしないと誓ったのだ。好きになってしまえば、必ずその人を殺めるから。大切な人にはずっと笑っていて欲しい。私が居なくても。
「──────────大好きよ、レーヴェ。」
その呟きは誰の耳にも届かず、風が攫って行った。




