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ちゅー  作者: 黄瀬ちゃん
3/4

熱ちゅー症

 暑い。暑い。暑い。

 暑い。暑い。暑い。

 よし、ちゅーをしよう。

 暑いからちゅーをしよう。うん。そうしよう。

「桜子、おいで」

 私は猫を呼ぶように桜子を呼んでやる。

 猫というよりは犬みたいに寄ってくる桜子の髪を撫でてやる。

 桜子の髪の毛も熱くなってるなあ。

 ついでに喉も撫でてやる。

 なんなら尻も撫でてやるのだ。

 ……いかん。これではセクハラおやじみたいだ。と私は思い直して、ギリギリのところで手を止める。

「桜子、暑い?」

 私がそう聞くと、桜子が小さく頷く。

「じゃあちゅーをしよう」

 なにが『じゃあ』なのか自分でもわからないけど、桜子はそれにも頷くのである。

「でも、ちゅーしたらもっと熱くなるかも……」

 桜子が照れた様に言う。

 最近の桜子は間違いなく私を誘っていると思う。

 大体、今日もわざわざエアコンの壊れている私の部屋でなくたって、外で遊べばよかったのだ。

 だけど、桜子は私の部屋で遊びたいと言って聞かなかった。

 間違いなく誘っている。私を惑わせてなにが目的だ。体か? 体が目的なのか?

 それでもいい。

「まあまあ、桜子。その心配はないんだよ。私はちゅーをしながら涼しくなる方法を見つけたのだ」

「なになに?」

 桜子が期待に満ちた眼差しを向けてくる。

 私はテーブルの上にあるコップから氷を一つ取り出して、桜子の口の中に入れてやった。

「つへたい」

 桜子が私に説明を求める様な顔をする。

 私は無言で頷く。

「さあ、ゲームスタートだ」

 私は戦争の開始を告げ、桜子に唇を重ねた。そのまま桜子の口から氷を奪い取ってやる。

 桜子は一瞬驚いた顔をしたが、ゲームのルールを理解したらしくすぐに私の口の中の氷を奪い取ろうとする。

「んっ」

 だが、氷が滑って私の口に戻ってきた。

 私は口の奥に移動してしまった氷を取りやすい様に前へ移動してやる。

「んん」

 またしても桜子が失敗する。その次も、その次も、その次も。

 何度やっても桜子は氷を取り戻すことができない。

 どうやらこのゲームは私の勝ちの様だ。

 氷が溶けていく。

 桜子は諦めず必死に氷を取ろうとしている。

 桜子の鼻息がだんだんと荒くなってきた。

 私も桜子も汗だくだ。

 氷が溶けていく。

「んあっ!」

 桜子に押し倒された。

 一瞬襲われるのかと思ったが、どうやら相当必死らしい。

 私は顔が真っ赤になっている。暑いからだろうか。

 氷が溶けていく。

 桜子の舌が私の舌に当たる。

 氷が溶けていく。

 氷と一緒に私も溶けていく。

 セミがうるさい。

 氷はもうない。

 私の意識もそこでなくなった。

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