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私、天国で保育士をしています

私、天国で保育士をしています。セカンド!

作者: めいふぁん

どうしても、どうしてもこのイベントで書きたかったんです・・・!!

でも忙しくて今です。

季節外れですが、どうぞそこはお気になさらず・・・

「ハロウィン・・・ですか?」


同僚の先生の方を見て、聞き間違いじゃないかと思わず聞き返しました。

休憩時間だからとかじっていたおせんべい(天国にもおせんべい屋さんがあるんです。しかもすっごくおいしい)をぽろりと落としてしまい、慌てて拾う私の前で、優雅にコーヒーをすする美々先生(この先生も天使で、大変お美しいお顔とプロポーションをお持ちです。金髪美女万歳!)は、再びおっしゃいました。


「そう、ハロウィンよ。子どもたちが仮装して、商店街を練り歩くの。お菓子は毎年商店街の方たちが用意してくださってるし、子どもたちの衣装はおうちの方が用意してくださるから、私たちは引率するだけよ。」


事も無げにそう宣ってくださいましたが、これ、変ですよね?

天界なのにハロウィンって、変ですよね!?


「あのぅ・・・天界で、ハロウィン、ですか・・・?」


当然疑問を口に出しました。

長いものにまかれると大変な目にあうこともある、と前回で学んでますから。


「そうよ。と言ってもただのお菓子をいただくイベントっていうだけなの。ほら、天界は娯楽が少なくて、何かとイベントを催さないとみんな退屈しちゃうのよね。」


あぁ、現在の日本で行われているハロウィンイベントのようなものなんですね。外国のように本格的にやってしまうと何かと問題がありそうですしね。

しかし、天界の方たちはどれだけ娯楽に飢えていらっしゃるのでしょう?

ハロウィンに手を出すほどとは、いやはや・・・


「ってことで、引率の保育士も仮装して一緒に行かなきゃいけないから、衣装の準備してちょうだいね。作るのでもいいし、買うのでもいいわ。」




・・・は?



「仮装、私たちもするんですか・・・?」



おそるおそる聞くと、何を言っているのか、という呆れた顔で美々先生がため息をつきました。


「当たり前でしょ?一応それっぽい雰囲気は出さないと、イベントの盛り上がりに水をさしちゃうじゃないの。あ、私は今年かぼちゃ大王になるからね。着ぐるみをもう作ってあるの。あら、そろそろ休憩も終わりね。仕事仕事」



そう言うと美々先生はさっさと休憩室から出ていってしまいました。



え、ま、待ってください!

私、まだよく理解できていないんですけれども!

それと一つ突っ込んでいいですか!

かぼちゃ大王って・・・着ぐるみ着て引率するんですか!?

そもそも、かぼちゃ大王ってなんですか~~~~!!


震える手を美々先生のほうにヨロヨロと伸ばしてみましたが、こちらを振り返りもせずにさっさと出て行かれました。

うぅ、冷たい・・・


しかし、どうしましょう、仮装とは!

どんな衣装がいいんですか!?

私も着ぐるみにすべきなんですか!?誰か教えてください~~~!!!





「はぁ~~~~~・・・・」


仕事帰りにとぼとぼ歩いています。

商店街で今日の夕食の材料を見るためです。

でも夕食のことなんてこれっぽっちも考えられません。

仮装って・・・仮装ってなんだ~~!


重いため息を吐き、いじいじと足元の石ころを軽く蹴飛ばしました。


「マリエさん、どうしたんですか、重いため息なんかついて。」



ひぃっ


いきなり耳元で声がして、びっくりして身体がびゃってなりました。びゃって。

人間びっくりすると漫画みたいな動きできちゃうんですねー・・・

おそるおそる後ろを振り向くと、はい、いらっしゃいました。

天使のくせにお腹がまっくろくろすけなお方です、天村使郎さんです。


「・・・天村さん、いえ、なんでもないです、はい。」


引きつっているであろう笑顔を浮かべなんとか言葉を返し、じりじり後ずさりしました。

やめてくださいその笑顔。

無駄にきらんきらんなくせに唇の端だけ上げたその笑顔。

目が笑ってません。

眼光鋭すぎます。


「おやおや、そんなに警戒しなくても、別に今ここでとって食いやしませんよ。あなたが私を受け入れるまで、ゆっくり、いつまでも待ちますから。えぇ、それこそ何百年でも何千年でも。」


うぎゃ~~~~!!!

こわい!こわいです!


「いえいえ、そんなそんな。天村さん、私のことなんて捨て置いてくださって結構ですよ?ほら、天界にはあちらこちらにお美しいお姉さま方がいらっしゃるじゃないですか。職場恋愛とかどうですか?オフィス・ラブ!素敵な響きですねぇ」



もう、お願いですから、私をほうっておいてくださいませんか・・・

この恐慌状態でただでさえ目減りしている私のライフが尽きそうです!!!



「ふふ、マリエさんは意地悪ですね。私があなたしか見ていないことにお気づきでしょうに、そのようなことを。どんな誘惑があろうとも、私はあなただけを愛していますよ。天使は一途なんです。それこそ悪魔にそそのかされてもです。まぁ、それを無視できなければ堕天してしまいますしね。」


さらっと恐ろしいことを言われました。

そうですか、堕天しちゃうんですか。

そりゃー手段を選ばず落とそうとしますよねー・・・


はっ!!何納得しかけてるの自分!!だめ、だめです!!この人は私の運命を捻じ曲げた悪魔に等しい天使ですよ!


「き、今日はもう早く帰らないと、明日の準備があるんですー。それでは失礼します!」


言い逃げ上等です。

さっと踵を返して家まで猛ダッシュです。

夕食の買い物?

そんなもん一日ぐらいインスタントラーメンでもなんでも食べます!

今は自分の命(?)が最優先です~!!



部屋に入り鍵をかけ、もうへろへろになりながらベッドにダイブしました。

あぁ、至福・・・

それにしても、本当にどうしましょう。

仮装か~仮装ってなに~

もんもんと悩みます。

そしてふと思いました。

明日休みだ!

土曜日だ!

そうだ、地上にいこう!

このハロウィンの時期、地上なら仮装のネタもしくはそのものが売ってあるはず!

そうと決まれば地上に降りる許可印をもらわなければ!

西日本支部のお役所に突撃です☆


ガチャ!



「私を置いて行ってしまうとは、ひどいですね、マリエさんは。」



扉を開けるとそこにはサタン様(天村さん)がいらっしゃいました・・・

あのぅ、そのですね、見た瞬間に扉を閉めようとしたのはあやまります。

つい、反射でやってしまいました。

なので、足をつっこんで閉まるのを阻止するのはやめていただいていいですか。

まるで、その、ヤのつく職業の方のような鮮やかな手際ですので、はからずも悲鳴を上げてしまいそうでございますです、はい。


「しかし、先ほどまではため息をついていらっしゃったのに、今は逆にすごく浮き足立っていますね、それから、帰ってきたばかりですが、どちらかにおでかけで?」



「は、はぁ、その、明日ちょこっと行きたいところがありまして、それで、お役所のほうにですね、許可をいただきに・・・」



蛇に睨まれたカエルがどのような気持ちなのか、よくわかります。食われる瀬戸際の生き物は、逃げることもできずに、ただその身を差し出すしかないのですね・・・。

気になる情報を手に入れた蛇はそれはそれは満足気でしたよ。


「そうですか、しかし、今は夕方です。女性一人では心もとないでしょうから、私もご一緒しましょう」


はいきましたーご一緒にの一言をいただきましたー

断れるかどうか?そんなもの、最初から答えは一つです。


「ぜ、是非、よろしくお願いします」


泣く泣く一緒に行くしかないのです。





無事許可をいただき、一晩たった今日、ただいま午前10時です。

エレベーターの前で私、待っております。

誰を、かはもうおわかりでしょう。

そう、あのお方です。


「お待たせしてしまったようで、すいません。少々準備に手間取りまして。」


天村さんです。


昨日私が許可をとる横で自分の分の許可もとり、


「地上でデート、楽しみですね」


とのたまった挙句、彼の仕事の休みは日曜日だけなのに無理やり有給をもぎとってこられました。

そりゃ、準備に手間取るでしょうね。

何しろ休みをもぎ取るんですものね。

もう最近いろいろ悟りを開いてきました。


「さて、行きましょうか」


にっこり。


「は、はい」


に・・・にっこり。






久しぶりの地上は、活気に満ち溢れていました。

そこらかしこにジャック・オー・ランタンをモチーフにしたものが飾られています。

こ、この鉢植え可愛いですね、あ、この置物も、あ、あの壁飾りも!!


「マリエさん、ところで今日はいったい何を買われるつもりなんです?」


目移りしていると天村さんにそう聞かれました。

げんきんなもので、私、地上の空気に浮かれておりました。

なので、言ってはいけない言葉を口にしたのです。


「あぁ、保育部でハロウィンに仮装するので、その衣装のネタ、もしくはそのものを買えないかと思いまして。」


くわっ!!!!


気のせいではありません。

今私の横にいらっしゃる方、目が猛禽類の目になっております。

かっぴらいた挙句ぎらぎら輝いております。

嫌な予感がビンビンです。


「ほう、それはそれは。素敵なイベントですねぇ。是非、私に選ばせてください」




そこからは、もうあちらこちらに連れ回され、目に付く衣装という衣装を試着させられ(中にはかなり際どい衣装もありました。太い足が出すぎです~!貧相な胸元が見えそうです~!なかんじでしたので、全力で拒否しました)、決まったのはもう日も落ちる夕方のことでありました。


「これでハロウィンは安心ですね。よくお似合いでしたよ」


私はげっそりしているのに、何故このお方は無駄につやつやテカテカされているのでしょう。

体力化物ですか。そういや人外でしたね。


「はい、お付き合いいただき、どうもありがとうございました」


よれっとなりながらもお礼はきちんと言いました。

私だけならきっとうんうんうなって結局決められない、という事態もありえたと思いますので、ついてきていただいたのは結果的によかったと思います。

ただ、体力ものすごく削られましたけど。


「ハロウィンが楽しみですね」


「はい、楽しみです」


そんな会話を繰り広げ、私たちは帰路につきました。

何故彼がハロウィンが楽しみなのか、考えもせずに・・・






「はっぴーはろうぃーん!!」


ごふっ

きょ、今日の天使たちはいつもの数倍、いや数百倍可愛いです!

なんという可愛らしさ!

あぁ、男の子が履く黄色のかぼちゃパンツがそのプリケツ様を際立たせ、歩くたびにゆれるその悪魔のしっぽが・・・!!そして猫娘な女の子達がつけているお耳が!!そしてレースがちらりと覗くひらひらのミニスカが!!

か・わ・い・い♥


若干壊れていると、ぽんぽん、と肩をたたかれました。

振り向くとそこには、黒いマントを風にたなびかせ、オレンジのしっかりとした手足、そして頭にはこれまたでっかいジャック・オー・ランタン・・・美々先生がいらっしゃいました。


かぼちゃ大王って、これのことだったんですね。


「その格好、似合うわね」


「ありがとうございます。美々先生も、かぼちゃ大王様かわいいです」


くぐもったお声でお褒めの言葉をいただきました。


天村さんと選んだ私の衣装、それは・・・!


すっぽりと頭を覆う長い頭巾、黒と白で統一されたロングスカートワンピース、そして首にかかる十字架。

そう、修道女です!!


天界には教会が存在しませんので、この姿は珍しいだろう、ということで選びました!

まぁ、そうですよね。

神様がいらっしゃるところに教会たてても・・・ねぇ。


「行きましょうか。そろそろ時間だわ」


かぼちゃ大王様と一緒に子どもたちをひきつれ、いざ、出発!!





「とりっくおあとりーとー」



「あらあら、かわいいわねぇ、はい。お菓子よ。おうちに帰ってから食べてね」


「ありがとー」


「おばちゃんありがとー」


「わーい」



「とりっくおあとりーと!」


「お、きたか。ほら、今年はおっちゃん特製のアップルパイだぞ。」


「わ~~!!」


「パイだーパイだー」


「おっちゃんありがとー」



お菓子を次次にくれる商店街の皆様にお礼を言いながら飛びついていくその後ろ姿、も・・・萌えです。

いやーん連れて帰りたい~~とか思ってたら私と美々先生にもお菓子をくれました。

いいんですか!?ありがとうございます!!




子どもたちが持つ籠に大量のお菓子が詰め込まれ、ほくほくしながら子どもたちは現地解散で帰っていきました。

親御さんが商店街の端の方でカメラを持って激写し、その後一緒に帰るというのが毎年の流れだそうで。

持ってるカメラ、すごくハイテクなんですけど。

それ、最近地上で出た新商品ですよね!?

もしかしたら、私が思っている以上に天使の皆様は地上に出ておられるのかもですね。


「マリエ先生、子どもたちも帰りましたし、私たちも帰りましょう。」


「そうですね。美々先生、お疲れ様でした」


「えぇ、またあしたね」


のしのしと着ぐるみ姿のまま商店街を闊歩し、自分のおうちに帰っておられます。

天界でかぼちゃ大王様が堂々と歩くって、シュールです。



私もここから家までは徒歩5分ほどなので、着替えずにそのまま帰ることにしました。

今日はハロウィンですから、かぼちゃ料理でもしましょう。

八百屋さんでかぼちゃと玉ねぎ、人参やじゃがいも、トマトやレタス、きのこ等、そしてお肉屋さんで鶏肉、豚肉、牛肉と一週間分もあろうかと思われる量の買い物を済ませ、寮にもどりました。


うきうきと食材を冷蔵庫にしまっていると、ピンポーンと呼び出し音。


「はーい」


着替えてないけど、まぁいいか~とそのまま扉をあけると。


「Trick or Treat?」



黒い天鵞絨のマントをたなびかせ、白いシャツに黒いスラックス、そしてお口から伸びる白い牙。


吸血鬼が目の前にいました。


ぽかーんとその姿を見つめると、にやりと笑みをうかべ・・・


「おや、いたずらのほうがよろしいので?」


極悪な天使様がそうおっしゃいました。

そのまま部屋に一歩入り、後ろでに扉を閉めます。

今、鍵しめましたね!?がちゃりって音が聞こえましたよ!!


「天村さん、その、お似合いですね、その姿。」


そう言いながらも私は高速で自分のポケットをあさっておりました。

穏便に帰っていただかなくては。

お菓子、なんでもいいからお菓子!!

早くしないと何やらよからぬことが起こる気がする!!


「ふふ、マリエさんも、よくお似合いですよ。その禁欲的な姿が、なんとも言えませんね」


ぞわっ


何か、何かお菓子!!


しかし何もありませんでした。

さっき冷蔵庫の前に買い物袋と一緒に置いてしまったがために、こんなことに・・・!!


「はい、時間切れです。お菓子をくれないなら、イタズラ、ですよね・・・?」


そう言うと、蠱惑的な表情で私の手を握り、首元に顔をうずめられました。


「吸血鬼が修道女にするイタズラ。もうおわかりですね・・・?」




のわぁ~~~!!!!

どんな展開ですかこれ!!

全然わかりませんよ!!

貞操が!!私の貞操が!!


っていうか、何百年でも何千年でも待つって言ったじゃないですかぁ~!!!!



「そんな可愛い姿を見せられて我慢できる男は男じゃありません。据え膳は美味しくいただかなければね。あぁ、心配なさらなくても責任はとりますよ。では、イタダキマス。」



たぁすけて~~~~~!!!!








ぎゃはー天使がだんだん腹黒っていうか怖いっていうか病んでるっていうか!

こんなはずじゃなかったんです。

でもこんなになっちゃったんです。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん!天村はやっぱり天使じゃなくて悪魔ですね♪ 確実に!エロ悪魔!そして必ず仕留める狩人!だっていうのがよ~く分かりました! 相変わらず面白かったです。
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