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友との日常に思うこと。シリーズ

友が恋愛に焦ること。

大分間が空いてしまって……

意見、感想お待ちしております!

「夏祭り。あいつ来っかな……」


彼は少々ジジくさい。それは彼の日々からけっこう簡単に読み取れる。

冒頭の言葉は、彼が夜に星を見ながらお気に入りの音楽を聞いている時に思い立って呟いた一言だ。

彼がやや、マンガ臭く発した言葉については説明しません。嘘です、します。


彼は、偶然例の女子に会ってからはよくよくそれについて考えた。主に、自分が情けないばかりに伝えられなかった想いについて。

学校の帰りに、風呂に浸かりながら、そして、さっきのように自室で月を眺め音楽を聞いているとき。場合は様々。

だけど、考えることはだいたい一人の人間に関してだった。


「何を今さら……悪かったのは、不甲斐ない自分じゃないか」


彼はまず、自分に呆れた。今になってから後悔しかできていない。そんな自分が、酷く滑稽に思えたからだ。

そして、本当に彼女が好きなのか自問をした。その答えは至極簡単な物で、それがわかった彼はこれまた単純に思い立ったのだ。


「気持ちを伝えようっ」と。


そう、彼は思った。

今さらでも構わない。だから、次に会えたら、好きだった。言えなかったことを後悔しているという気持ちを伝え、劇の時に言っていた、例えほんに少しの間だけでも、なぜ自分のことなんかを好きになってくれたのかを訊く。

そんな決意を胸に、彼は物足りない生活に戻った。

それでもあの日以来、偶然など起こりやしなかった。また、自分は無念のままに過ごしていくのかと諦め掛けた時、彼は仲のよい友人に夏祭りに誘われた。もちろん行くと言い、約束を取り付けた。

その夏祭りは、彼の家のすぐ裏の公園で行われる小さな盆踊り大会だ。毎年、近場の人はもちろん、同級生や知り合いがかなり集まる。

彼女は来るだろうか。

それは、一切断定できない不安定な問題だ。

そもそも、出会えた所でちゃんと言えるだろうか。

様々な不安に彼は囲まれた。


それでも、時は無情に進んで行く。


時期が時期で、すぐに夏は訪れた。夏休みが始まる数日前に、夏祭りは来た。


夕刻。

彼は友人と合流し、その時が来るまでその友人と語り、遊んだ。中学生二年。多少金を持ち、夜まで遊べる機会を得た彼らは時間が許すまで一緒に遊んだ。


そして、時は来たのだ。


とうとう日が暮れて、辺りが暗くなってきた頃だった。

辺りを照らすのは街灯の心許無い小さな明かりと、祭りに集まる人の活気だけ。

彼は人の波とざわめきに少々酔いながらも、友人と笑いながら歩いていた。


そうそう。彼は目がさほど良くなく、暗がりの中通り過ぎる人の顔なんて見えやしなかった。

そして、急に彼の友人が言い出した。


「あれ、◯◯じゃね?」


彼は面食らいオウム返しで訊き返したが、聞き間違いなどではなかった。

そう、彼の耳にははっきりと彼女の名前が聞いて取れたのだ。


まず、友人の指差す方に目をやる。ロクに見えやしないくせして凝視したそうだ。


彼に唯一見えたのは、コソコソと自動販売機の影に隠れる人影だけだ。


次に、二人して少しずつ近付いて行った。




……そうすると、逆に彼女が気付き、声をかけて来た。


「あれ、◯◯に、◯◯じゃん」


片方は彼、片方は彼の友人である。


そりゃもうドキマギとして平然を保とうとする彼だった。

「おう、ひ、久しぶりー」


引きつる笑顔を浮かべる彼には、彼女の様子がおかしいことなど、その時気にする余裕は無かった。





……彼のこの先にも続いていくであろう物語の一部は、もう少しで、終わりを告げるだろう。


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