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黄昏と猫  作者: 樹木
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 そして、村を出てからすでに4日たっている訳だが、2人の旅は予想以上に難航していた。主にライトの貧弱さによって。それでもなんとか馬を貸してくれる業者のいるような大きな町につくことが出来た(通常の旅人なら2日あれば余裕でつく距離)。大きな町と言っても田舎の中ではという意味で、王都周辺と比べると雲泥の差ではある。

「そういえばトワイライトは馬に乗れるのか?」

「自慢じゃありませんが乗れます」

 ライトは得意げにふふんと鼻を鳴らす。貸し馬屋を目指し、昼の大通りを人の波にのりながら2人で歩いていた。

「珍しいな、トワイライトの村じゃあ馬なんて乗れない者の方が多いだろうに」

「お義父さんに教わりました。何事も知らないよりは知っている方が良いと言って」

「腐っても騎士だな」

 その言葉に、ついさっきまで穏やかに笑んでいたライトの顔から表情が消える。足は止めず、しかし、静かに尋ねた。

「ジョゼさん、ねえ、お義父さんは何も言ってくれないんですが、お義父さんのお家というのはどんなところなんでしょうか」

「どんなというと?」

 ジョゼも静かに返した。もうすでに雑談の空気はそこにはなく2人の間には周囲の喧噪すら排したようなただ静謐な空間が出来上がっている。

「お義父さんは私を実家には絶対に連れて行きたくないそうです。いや、それどころか自身も2度と戻りたくないと。あの人にそこまで思わせる”キャット家”とはなんなのでしょうか」

「私にはあいつの考えなんて分からん。立場が違うんだ。視点が違う。それでもいいのか?」

「ジョゼさんが来なければこんなこと、私は思いもしなかったかもしれないです。きっと知らなくても良いことなんでしょう。でも、ねえ、お義父さんが私を引き取ってから、アインスに来てからの9年間の自由は危うい天秤の上になりたっていたんですよね?」

「そうだな。むしろどうやってお婆様を躱し続けたのか私の方が知りたい。まあ、今までは強要できるほどの理由が作れなかったってだけだろうがな。今回は十分理由になり得た。お前のお陰でセルシスはまだ自由でいられる。何れは帰らなければならなくなるさ」

 ライトはひたりとジョゼに視線を向けたまま揺らすことなく続きを促した。


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