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黄昏と猫  作者: 樹木
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 がっしりと手を握り合った二人を引き離すように、むしろジョゼを突き飛ばすようにセルシスが間に入った。セルシスはライトの肩をがしっと掴むと鬼気迫る表情で口を開く。

「そんなの、許さないに決まってるじゃん。てか、無理じゃんライト。無理じゃん」

「ですが…」

「だめ。何かあったらどうすんの? 遠出をするにはお前の身体は問題が多いと思わない?」

「何が起こるというんだ」

 ジョゼが若干あきれ気味に口を挟む。冷えきった紅茶で唇を湿らせながらセルシスを諭しにかかる。

「お前の義息子19だろ? 過保護がすぎるんじゃないか? むしろ、そんなに心配ならお前が姫を連れ戻すのに同行してくれてもこちらはいっこうに構わないんだが」

「それはいや」

 つんとそっぽを向く。しかし、義息子は離さない。ぎりぎりと肩を掴んだその手を痛そうにライトは外す。思いのほか力を込めすぎていたことにセルシスも気がついたのかあっさり手を離す。ジョゼとしてはもうめんどくさいやら鬱陶しいやら心底冷たい視線で義親子を射す。そんな視線には気づかない様子でライトは真摯な態度でジョゼに向かう。

「大丈夫です。私が向かいます。しかし、貴方には私について幾つか留意して頂きたいことがあります。よろしいでしょうか」

 ライトの真面目な様子にジョゼも姿勢を正す。セルシスだけ依然、不機嫌な面持ちでむっつりと黙っている。

「言ってみろ」

「では、まず私は求血族です。定期的に血液を経口摂取しなくてはなりません」

「な…、お前吸血鬼か」

 ジョゼが驚き口を滑らせると、間髪入れずに3人が囲んでいたローテーブルから轟音が響きティーセットが揺れた。

「吸血鬼…差別用語だぞ。ご高名な聖騎士サマ」

「そう、正確に”鬼”でないものを”鬼”と呼ばわるのは鬼にも失礼ですし、何より人猫族も求血族も同じように人混じりから派生した亜人種族です。なにより貴方もご存知かとは思いますが、人猫族と同じように求血族も人間と認められています」

 ジョゼは恥じたように居住まいを正し、素直に頭を下げた。尾も耳も力なく垂れ下がっている。

「失言だった。すまない」

「いえ、こちらの方こそおとなげなかったですね。申し訳ありません」

「でだ、どれだけの期間ライトを連れ回すつもりか知らんが、この子は週1での吸血が必要になる」

 いままでになく真剣な様子でセルシスはジョゼに向かい合う。その表情は童顔なセルシスでも老成した親の顔だった。そしてジョゼも真剣な顔で尋ねる。

「それは獣の血液でも構わないのか?」

「構うわ! どこの病院で患者の輸血に獣の血を使うよ!?」

「ふむ、それもそうか。すまない」

「いえ、個体が少ない求血族のことは一般的には広く知れ渡っていませんから、無理もありません」

 ライトは穏やかに言葉を返した。

「求血族が摂取できる血液は輸血してもらえる血液型でなくては成りません。例えば、私ならばB型ですので、同じB型の血液かO型でないと意味がありません」

「へえ、興味深い。だが、その点は問題ない、私もB型だから私が供血すればいいな」

「俺もB型だからね! ていうかお前んちB型かO型しかいないじゃんよ」

 2人ともセルシスには見向きもしなかった。

「いくつかということは他にも気になる点があるんだろう?」

「ええ、それは私が光に弱いこととひ弱なことです」

「…後半の言葉が多少気になるが、まずは光に弱いってどういうことだ? 日光に弱いのか?」

 ジョゼの質問に対しトワイライトは両手の指を組み、その上にあごをのせ深刻そうに告げた。

「月光にも弱いです」

 そして、シリアスな空気を装い続ける。

「ていうか、人工の光以外の元では私、あまり元気ではありません」

「そうか…」

 それ以外の何が言えただろう。ジョゼには選択肢がないのだ。

「ひ弱というのは…」

「言葉通り、私弱いです。体調を崩しやすいですし、喧嘩も弱いです。あと骨も弱いです」


 ジョゼは思った、この親子うざい。


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