業火
燃えろ。燃えろ。目の前の花畑が燃えている。
燃やせ。燃やせ。火炎瓶は消えず燃えている。
そうです。放火魔は僕です。否定も転嫁もしません。僕がやりました。あぁ違います。誰かに命令された訳でも、唆された訳でもありません。自分の意思でやりました。だって汚いでしょう、醜悪でしょう。あれは天国ではないのです。確かに美しかった。それは分かります、分かります。ただ、美し過ぎた。美麗は脅威なんです、分かりますでしょう。妲己を思い出してくださいよ。美しさは罪なのです。美しいものは影に隠れてひっそりと生かねばならんのです。なのにあの花と来たら、ズケズケと範囲を増やしおって。
彼等が不当な扱いを受けて来たのは分かります。居場所を証明したかったのも理解できます。しかしこれはやり過ぎです。自らの美貌に多くの人が酔いしれると分かった途端、醜く種子を撒き散らした。彼等は自分に毒や棘がある事を忘れたのです。このままではこの星が花盛りの地獄と化します。だから私は火炎瓶を投げた。云わば生存本能に従った迄です。悲しい話ですが、ある見方から見れば彼等はエラー品なんですよ。なのに彼等を理想と崇める輩が現れ始めた。彼等は嗜好品かもしれません、芸術品かもしれません。けれども、僕たちの在るべき姿ではないのです。
そうです。燃えています。僕自身が。僕が投げた火炎瓶によって。分かっています。分かった上で投げました。きっと灰になっても燃やされ続けるでしょう。
けれども投げねばならんのです。この花畑が天国であり続ける為に。花に寄る虫を我が炎で焼き殺す為に。
燃えろ。燃えろ。醜い放火魔が燃えている。
燃えた。燃えた。火に入る虫は灰になった。




