異世界転生・西野:完結編「ごんぎつね・逆襲の咆哮」
数々の名作を蹂躙し、飽きたら捨てる旅を続けてきた卑怯者・西野。
だが、因果応報の銃口は、彼が最初にハックした「あの村」から伸びていた。
西野が教えた効率と合理を、復讐の火力へと変えた兵十。
そして、彼に捨てられ「兵器」へと改造された狐のごん。
几帳面な計画を同じ几帳面さで崩しに来たかつてのカモたちが、逃走を続ける西野を袋小路へと追い詰める。
「感動の再会? 悪いが、俺はもうお前らにも、この物語にも飽きたんだわ」
卑怯者の最期は、文学的な美談か、それとも冷徹な拒絶か。
ごんぎつねに始まり、ごんぎつねに終わる、西野流「最短ルートの終止符」。
西野が銀河鉄道の駅に向かおうとしたその時、背後から聞き覚えのある、しかし以前よりずっと野太い声が響いた。
「……待ちやがれ、西野」
1. 変わり果てた再会
振り返ると、そこにはボロボロの編み笠を被り、背中に**西野が捨てた設計図を元に自作した「試作型対人ライフル」**を背負った兵十が立っていた。
そしてその足元には、防弾チョッキのような革袋を纏い、目つきが完全に「兵士」のそれになったごんがいた。
「あれ、兵十? と……あと、その不細工な狐。何、わざわざ江戸から追いかけてきたの? 執着心強すぎて引くんだけど」
西野は心底嫌そうな顔をしたが、兵十の持つライフルの銃口が几帳面に自分の急所を狙っているのを見て、少しだけ口角を上げた。
2. 卑怯者の計算
「西野さん。あんたが俺たちに教えた『効率』と『合理』のおかげで、村は豊かになった。だがな……あんたが去り際にばら撒いた『狐を捕らえるための罠のメンテナンス方法』のせいで、ごんは危うく死にかけたんだぞ!」
兵十の怒号。西野は思い出した。
(ああ、あの時。暇つぶしに『兵十と狐が仲良くなりすぎないように』罠の改良案を置いてったんだっけ。几帳面な性格が裏目に出たわ)
「で? 復讐? 非効率だなぁ。俺を殺しても金にならないぜ? それより、そのライフルの特許、俺に売れよ。もっと高く売れる国を知ってる」
西野は荒っぽいやり方で歩み寄り、兵十の銃口を素手で掴んだ。いつものハッタリだ。
3. あっさりとした終焉
しかし、今回ばかりは計算が狂った。
西野が喋り続けようとした瞬間、足元のごんが、西野のポケットから溢れていた「マッチ売りの少女の爆弾の起爆スイッチ」を奪い取り、遠くへ放り投げたのだ。
「……あ、それ。俺の唯一の護身用」
西野が呆然とした瞬間、兵十は引き金を引き……たかったが、結局引けなかった。善人すぎるのだ。
それを見て、西野は鼻で笑った。
「ほらな。結局お前は甘いんだよ。その甘さが命取りになるって教えた……」
言葉の途中で、西野は飽きてしまった。
自分の説教にも、この復讐劇にも、この世界そのものにも。
「……もういいわ。勝手にしろ。俺、この『世界』自体に飽きた。お前らに殺されるのも、なんか物語っぽくて癪だしな」
4. 卑怯者の最期、あるいは
西野は兵十の銃を奪い取ると、几帳面な手つきで銃身の汚れをハンカチで拭った。
「いいか、兵十。道具は手入れが命だ。あとごん、お前はもうちょっとマシな飼い主を見つけろ。……じゃあな。次はもっと『俺が主人公じゃない世界』にでも転生して、モブとして寝て過ごすわ」
西野は崖っぷちまで歩くと、兵十が止める間もなく、スカイダイビングでもするかのような軽いノリで深い谷底へと身を投げた。
死体は見つからなかった。ただ、崖の上には、西野が書き残した**「兵十がこれから100年、絶対に食いっぱぐれないための村の経営戦略」が、驚くほど美しい文字で、しかし「続きを書くのが面倒になった」**と言わんばかりに、途中で雑に途切れて残されていた。
物語の幕は閉じました。
西野の魂は今頃、別の異世界で「勇者の剣」を「ただの鉄くず」として売却し、魔王と裏取引でもしているかもしれません。




