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異世界転生・西野:ep.1ごんぎつね編「生存ルート(※ただし手段は選ばない)」

教科書の聖域、美しき悲劇「ごんぎつね」。

その情緒あふれる世界に、情緒を「非効率」と切り捨てる男、西野が転生した。

やり方は荒く、性格は卑怯。

だがその異常な合理性と、時折見せる几帳面な執念が、運命の火縄銃を叩き折る。

「償いだか何だか知らねえが、まずは収益化だ。話はそれからだろ」

狐をデリバリー業者に変え、兵十を経営者に仕立て上げる。

これは、卑怯者が最短ルートで悲劇を蹂躙し、無理やり「生存」をもぎ取る記録である。

1. 兵十の家の裏口にて


「……は? 栗? いらねえよ、換金性の低いもん持ってくんなよ」


西野は、薄暗い百姓屋の裏口で、一匹の狐が栗を置いている現場を冷めた目で眺めていた。


彼は数日前、現代日本からこの「教科書の中の世界」に転生してきた。持ち物はスマホ(圏外)と、生来の**「飽き性」、そして「最短ルートで目的を達成する狡猾さ」**だけだ。


「おい、そこの狐。お前、ごんだろ」


ごんは飛び上がって驚き、逃げようとした。しかし、西野は素早くごんの尻尾を掴み上げる。


「待て。お前、兵十に償いをしてるつもりか? 効率が悪すぎる。あいつ、お前が犯人だって気づかずに、毎日『気味が悪い』って怯えてるぞ。このままだと、お前は数日後に火縄銃で撃たれて死ぬ」


ごんは震えながら西野を見た。西野は、狐の恐怖などお構いなしに、几帳面な手つきで地面に「今後の収益化プラン」を書き殴り始めた。



2. 荒っぽい救済


西野のやり方は雑で、かつ強引だった。

まず、彼は兵十に「俺は旅の祈祷師だ」と嘘をつき、家に上がり込んだ。


「兵十、お前の家の周りにイタズラをする狐がいるな? あれは呪いだ。だが、俺が調教して『労働力』に変えてやった」


西野はごんの首に縄をつけ(かなり雑な結び目だったが)、無理やり川へ連れて行った。


「いいか、ごん。お前は今日から『天然アユのデリバリー業者』だ。兵十が獲るより効率よく獲れ。あと、栗は皮を剥いてから届けろ。その方が付加価値が上がる」


ごんは困惑したが、西野の目が「役に立たないなら今すぐ鍋にする」と言わんばかりに冷たかったので、必死に働いた。


結果、兵十の食卓は豪華になり、西野も兵十の家で悠々自適にニート生活を送り始めた。



3. あっさりした決別


一ヶ月後。

ごんと兵十の間には、奇妙な友情のようなものが芽生え始めていた。ごんは西野の命令に従いながらも、兵十が喜ぶ姿を見て、少しずつ救われていたのだ。


だが、西野はもう飽きていた。


「江戸、行こうかな。ここ、娯楽ねーし」


ある朝、西野は荷物をまとめていた。


「あ、西野さん! どこへ行くんですか?」


兵十が慌てて駆け寄る。その横では、すっかり懐いたごんが寂しそうに鳴いている。


「江戸。お前らとの田舎暮らし、もう飽きたわ。あ、そうだ。兵十、その狐だけどさ、実は一ヶ月前に死んだおっ母の使いだって嘘ついといたから。適当に仲良くやっとけよ」


「えっ、嘘だったんですか!? 西野さん、あんなに親身になって相談に乗ってくれたのに……!」


「親身? ああ、暇つぶしだよ。じゃあな」


西野は、自分を恩人のように見つめる兵十の視線も、恩返しを誓うごんの瞳も、「重い」という理由で一瞬で切り捨てた。彼は振り返りもせず、あぜ道を鼻歌まじりに歩いていく。



4. 結末:几帳面な置き土産


西野が去った後、兵十の家の机には、一通の手紙と精巧な地図が残されていた。


そこには、今後10年間の「効率的な農業経営計画」と、「狐を逃がさないための罠のメンテナンス方法」が、驚くほど几帳面な文字でびっしりと記されていた。


「……あのアニキ、性格は最悪だったけど、頭だけはキレたんだなぁ」


銃声の響かない、少しだけ騒がしくてドライな『ごんぎつね』の世界。


西野は今頃、江戸の賭場あたりで、また別の誰かを騙して荒稼ぎしていることだろう。

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