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「白い結婚」の意味を最近知ったんだが

作者: 辛口カレー

「白い結婚」という言葉の意味を、つい最近知った。


僕がこの言葉を知ったきっかけは、たまたま「小説家になろう」のトップページに「白い結婚」という文言を含んだタイトルの作品が掲載されているのを見かけたからだ。


白い結婚の意味を知らなかった僕は、当然ツッコミを入れずにはいられない。

「何だよ、白い結婚って。結婚に色なんてあんのかよ」と。


言葉の意味を知っている人から見れば、あり得ないツッコミであろう。

今さら「白い結婚」について、こんな文章を投稿しようとしている僕は、「何言ってんだコイツ」と呆れられ、「そんなの常識でしょ。知らないの?」とバカにされているに違いない。


調べてみると、「白い結婚」とは「夫婦間で性交渉の無い結婚」を指す言葉なのだという。

フランス語の「mariage(マリアージュ) blanc(ブラン)」が元になっているらしく、これを直訳すると「白い結婚」となることから、そう呼ばれるようになったんだそうだ。


いや、聞いたことねーし。

一般的な用語なのか、これ。


そもそも、なぜフランス人はマリアージュ・ブランと言い始めたのだろうか。

「性交渉の無いこと」が、どうして「白い」と結びつくのか。


全く納得がいかない。

白にもホワイトにも、そんな意味は無いはずだ。


じゃあ何か?

北海道名物の「白い恋人」は、「性交渉の無い恋人」なのか。

ホワイトデーは性交渉の無い日で、ホワイトクリスマスは性交渉の無いクリスマスなのか。

ホワイトハウスは……って、もういいか。


いずれにせよ、日本語の「白い」には「性交渉の無いこと」などという意味は無い。

誰が言い出したのか知らないが、「白い」という言葉に余計な意味を後付けするのは本当にやめて欲しい。


もうずいぶん前から、性交渉はするけど恋人ではない人をセフレ(セックスフレンド)と呼んだりしているが、「性交渉の無いこと」を「白い」と表現することが一般化してくると、やがて反対に、セフレではない友達を「白い友達」と呼ぶ日が来るかもしれない。


他にも、「白い彼女」「白い彼氏」「白い同棲」「白いサークル」「白い就活」「白い営業」とか、言い始めたりして。

そういえば、「白い巨塔」っていう有名なドラマがあったっけ。

……って、これは今は関係ないか。


「白い結婚」は「夫婦間で性交渉の無い結婚」を指す言葉というけれど、そもそも結婚式では、花嫁は純白のウェディングドレスを着るのが定番であるし、神前での結婚式であっても花嫁は白無垢を着るものなのだから、世間一般の結婚のイメージは「白」であるはずだ。


だからといって、花嫁が純白のウェディングドレスや白無垢を着ることは「性交渉をしない結婚」を意味しているわけではないし、むしろ一般的には、結婚式を挙げた二人が挙式当日の夜(初夜)にベッドを共にするのは当然、あるいは当然とは言わなくとも、それが普通だと周囲から見られているものだ。


日本人が持っている、こうした「結婚」と「白」とのイメージの親和性に理解が及ぶ人であれば、「白い結婚」という表現に「性交渉をしない結婚」という意味を持たせることが、どれほど浅はかな所業であるか理解できないはずは無いと思うのだが、どうやら現実はそうではないらしい。


そんな事をするくらいなら、「白い結婚」などと言い換えずに、「マリアージュ・ブラン」とそのまま表現した方が遥かにマシというものだ。

「ノブレス・オブリージュ」みたいにさ。


「わざわざ日本語に『白い結婚』なんておかしな表現をネジ込んでくるなよ」と思う。


そもそも、どうして「mariage(マリアージュ) blanc(ブラン)」を直訳しているのか。

責任者出てこい。


これは当たり前の話だが、外国語をただ直訳しただけでは日本語に翻訳したことにはならない。

正しく日本語に落とし込むためには、直訳ではなく意訳をする必要がある。


例えば、英語の「old man」は「古い人」と直訳するのではなく「老人」と意訳しなければならない。

なぜなら英語の「old man」は「老人」を意味するからだ。(厳密に言えば文脈にも依るが)


同様に、「mariage(マリアージュ) blanc(ブラン)」は「白い結婚」と直訳するのではなく、「性交渉の無い結婚」と意訳しなければならない。

なぜなら、「mariage(マリアージュ) blanc(ブラン)」は「性交渉の無い結婚」を意味するからだ。


ちなみに別のサイトを見ると、『mariage(マリアージュ) blanc(ブラン)は名詞で、偽装結婚のことです。英語では、これを「sham marriage」と、恥ずべき結婚と言っています』と書かれてあった。


英語圏の人たちは「mariage(マリアージュ) blanc(ブラン)」を「white marriage」と直訳することはなく、ちゃんと「sham marriage」と意訳していることが分かる。

ま、当然っちゃ当然だが。


直訳がそのまま意訳になっているのなら、何も問題は無い。

「そうじゃない場合は、直訳せずに意訳するべきじゃないの?」というのが僕の考え方だ。

ていうか、それが一般的な考え方だと思う。


さっき僕は、「mariage(マリアージュ) blanc(ブラン)」は「白い結婚」と直訳するのではなく、「性交渉の無い結婚」と意訳しなければならない、と書いた。


でも実際は、これでもまだダメだ。

意味は合っているとしても、スマートな日本語訳とは言えない。

なぜなら、「性交渉」という言葉を口にするのが(はばか)られるからだ。


人前でイチャついたり、キスをしたりするのが平気な米国人でさえ、「mariage(マリアージュ) blanc(ブラン)」を「恥ずべき結婚」と訳しており、「性交渉の無い結婚」とは訳していない。


ましてや、恥じらい深く奥ゆかしい日本人が「mariage(マリアージュ) blanc(ブラン)」を「性交渉の無い結婚」と訳し、それで良しとするはずが無いのである。

かといって、英語のように「恥ずべき結婚」と訳してもピンとこない。


しばらく適当にネット検索をしていたら、『「ブラン(blanc)」はフランス語で「白い(=空白の)」という意味です。』と書かれているのを見つけた。


何だよー。

じゃあ最初から、空白の結婚って訳せよー。


「白い結婚」よりは「空白の結婚」の方が、はるかに意図が伝わりやすい。

さらに意訳するなら「空虚な結婚」か。

いや、それよりは「空っぽの結婚」の方が分かりやすい。


そこで思い付いた。

(から)っぽの結婚」を略して「空婚(からこん)」。


でも、空婚だと「そらこん」って読みそうだから、これをカナ表記にして「白い結婚」は「カラ婚」と言い換えたらどうか。


「でき婚」「授かり婚」に加えて「カラ婚」。

なかなかセンスのある訳語じゃないかと思うが、どうだろう。


もちろん、カラーコンタクトレンズの「カラコン」に掛けている。

これなら人前で(はばか)られることもない。


「アタシ、旦那とは『白い結婚』なのよね」とか「アタシ、旦那とは『空虚な結婚』なのよね」とか「アタシ、旦那とは『性交渉の無い結婚』なのよね」なんて言うよりは、「アタシ、旦那とは『カラ婚』なのよね」って言う方が、スマートだと思う。

(当の本人がそんなことを言うとも思えないが)


まぁ、こんな回り道をするくらいなら、最初から「mariage(マリアージュ) blanc(ブラン)」を「マリブラ」って呼べばいいんじゃないの? なんて思ったりもする。

(何だかマリオブラザーズの略語みたいになってるけどw)


ともかく、「白い結婚」ってのは、どうも僕にはしっくりこないのだ。


一方、なろう界隈で「白い結婚」という言葉を積極的に作品タイトルに使っている作者は多い。


試しに、作品名に「白い結婚」を含んだ小説を『小説家になろう』のトップページから検索してみると、144作品がヒットした。

このうち、投稿日が一番古い作品は2018年に投稿されたものであった。

おそらく「白い結婚」という表現は、この頃から使われ始めたものと思われる。


また、作品全体の投稿時期をみると、ここ数年で投稿されたものが大半を占めているような状態だった。

認知度が高まったのは割と最近のことなのであろう。


ちなみに、これらの作品の作者名を見てみると、僕の想像通り、女性と思しき作者名がズラリと並んでいる。


女性は男性ほどには「白い結婚」という表現に違和感を持っていない、ということなのだろうか。(単に男が「白い結婚」をテーマにした作品を書きたがらないだけ、とも考えられるが)


あるいは、「白い結婚」がパッと見で「性交渉の無い結婚」と結び付かないがゆえに、女性作者が自らの作品にタイトルを付けるにあたって使い勝手が良い(ファンタジーの雰囲気を壊さなくて済む)ということか。


とはいえ実際は、作品タイトルでも無い限り、「白い結婚」という言葉を見聞きするケースはほとんど無いと思われる。

なぜなら、それが「白い結婚」かどうかは、当事者とその身内しか知り得ない情報だからだ。


仮にそれが「白い結婚」だったとしても、彼らが自ら「私たちの結婚は白い結婚です」なんて余計なことを言うはずがないし、彼ら以外の人たちにとっては、彼らが「白い結婚」かどうかなど知る由も無い。


したがって、理屈で考えれば、白い結婚という言葉が会話で使われるケースとしては、「あの二人、白い結婚なんじゃない?」という噂話をするときくらいしか無いことになるが、そんな下世話な噂話をしている人たちにとっては、そもそも「白い結婚」なんて取り繕った言葉を使う必要など全くない(その事実を取り繕いたいのは結婚している本人たちだけだ)のだから、明け透けに「セックスレス」とか「偽装結婚」とか「仮面夫婦」とか言いたい放題、言うに違いない。


要するに、「白い結婚」という言葉が日常で使われるとは考えにくく、この言葉に出くわすのは小説か何かのタイトルだけ、ということになる。


道理で聞いたことが無いはずだ。

ここまできて、ようやく腑に落ちた。


「白い結婚」というのは、いわゆる文学的表現(literary expression)の一つに過ぎなかったのだ。


ならばこれは、僕にも文句の付けようがない。

文学的表現だと割り切ってしまえば、これはもう何とでも言える。

理屈が通らなくてもいいし、意味が通じる必要すら無い。


黄色い憂鬱、水色の退屈、透明な誘惑、琥珀色の恋。


思い付きでそれっぽい言葉を繋げてみたが、書いた自分でさえ、これがどういう意味なのかまったく分からない。

が、文学的表現としては問題なく許されてしまう。


試しに、これらの言葉の後ろに「白い結婚」を並べてみよう。


黄色い憂鬱、水色の退屈、透明な誘惑、琥珀色の恋、白い結婚。


おぉ。

見事に何の違和感も感じない。


相変わらず意味不明だけど。

読んで頂き、ありがとうございました。

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