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むかーしむかーし③




 むかーしむかーし。


 今よりも遥かに昔の話。




 ある国のある地方にある、それはそれは辺鄙な場所に一つの小さな村……その出身である二人の男の子と女の子は、共に成長し、冒険者となりました。


 ヤンチャな男の子はウキウキでした。

 冒険者になったら、英雄のごとく魔物や悪い奴を倒す…それが男の子の夢だったからです。


 しかし………ここで冒険者になった最初の依頼の魔物討伐で、思わぬ事が発覚します。

 男の子が初めての魔物との退治で、女の子を守るように対峙した際に、無意識に魔物に対して大量の水を顕現させ、それ浴びせ、魔物を怯ませたのです。


 なんと男の子には、魔法使いとしての才能があったのです。


 さらには、怯ませた魔物に向かって女の子は大きな火の塊を生成し、魔物を灰残らず焼き尽くしました。

 驚くべき事に、女の子の方にも魔法使いとしての才能がありました。


 二人は今まで、周囲に魔物がいない辺鄙な辺境の村にいたので、自分たちが魔法の力を持っているとは、気が付かなかったのです。


 男の子は雨を降らす魔法。

 女の子は太陽を作り出す魔法。


 さしずめ……”雨魔法”と”日魔法”。


 ………………はは、今更ながら雨を降らす魔法は置いといて、太陽を作る魔法なんてチートが過ぎるね。

 ミナト君もそう思うよね。


 え?雨を降らす魔法もかっこいいって?

 あはは…ミナト君は優しいね。


 ごほん……話を戻すね。


 二人の持つ魔法は、それぞれ正反対の特性を持った魔法でした。

 雨魔法は水魔法の派生、日魔法は火魔法の派生と言ったところでしょうか。


 その後、二人はすぐに魔法使いとしての力を発揮します。


 男の子が望めば、辺り一面に大質量の水の伴った雨を降らせ、敵を洗い流す。

 女の子が望めば、煮えたぎる灼熱の小さな太陽を作り出し、敵を焼き尽くす。


 まさに人間業とは思えない魔法の力。


 あたかも、始めからそれが使えていたかのように、二人はその魔法をいとも簡単に使いこなしました。

 二人は魔法使いとしてもその才能は抜き出ていましたが、魔法の才能だけで無く、二人の膨大な魔力がそれを可能にしていました。


 男の子と女の子はその魔法の力を使って、様々な依頼を受けながら国中を周りました。

 

 男の子には、夢見ていた魔物や悪い奴を倒し、英雄のなりたいという願望があったので、依頼に積極的でした。

 冒険者に憧れていた男の子に比べ、女の子は冒険者として依頼を遂行することに積極的ではありませんでした。


 けれど、心優しい女の子はいろんな場所に行くときに出会う、困った人達を見捨てることが出来ませんでした。




 そして冒険者になって数年経ち、男の子と女の子はさらに大きくなり、大人びた少年と少女になっていきました。

 

 その時には、二人は国中から稀代の大魔法使いとして知れ渡ります。

 

 二人が冒険者の依頼のため、人助けのために、行く先々で魔法を行使しました。

 雨と太陽の魔法使いは、国中の人々が誰も知る人物になりました。


 特に、女の子が作り出す小さな太陽は、相手が何であれ如何なる魔物をもたやすく焼き払い、凍てつく地を温めて、暗闇に光を照らすことが出来ました。

 多くの人々が女の子の事を「日人(サン)」と呼びました。


 たくさんの冒険者から尊敬され、その国の王様や貴族たちから専属の魔法使いとなって貰いたいという要望が来るほど、有名になっていました。

 また女の子には、求婚のお誘いがたくさんいました。


 しかし、女の子がそのお誘いを受けることは決してありませんでした。


 女の子はずっと男の子のそばにいたいと思ったからです。


 二人いれば、どんな危機の乗り越えられる。

 お互い、そう思っていました。

 二人の絆は深いものだったのです。




 そんな中です。

 ある日突然、二人が住んでいた国に………”それ”は現れました。


 国の人々皆んなを絶望にさせる存在が。


 それは思い出すだけでも怖じ気が止まらなく、口に出すことも憚れる存在。

 翼の羽音を聞くだけで、恐怖で一杯になり、姿を見ただけで、正気を失ってしまう存在。

 歴戦の猛者も、死を覚悟するほど悍ましい存在。


 まるで存在そのものが、死を表しているかのように。


 それは…………竜でした。

 それは…………死の竜でした。

 それは…………国中の人たちに死を宣告しに来た竜でした。


 国に突如、現れた死の竜は国中を蹂躙しました。

 息を吐くだけで、生きとし生けるものが死に絶えるのです。


 その竜がどこから来たのかは分かりません。

 なぜ国を襲うのか分かりません。

 ただ分かることは、死の竜からは誰も逃げることも、立ち向かうことも、勝つこともできない事です。


 誰もそれに勝てませんでした。

 冒険者や騎士だけでなく、あらゆる剣士やあらゆる魔法使いでも勝てませんでした。


 立ち向かった者には、容赦無く、死が訪れたからです。


 国が蹂躙される中、立ち向かう者いなくなりました。

 ただ蹂躙されるのを見るだけ。


 しかし、唯一立ち向かう者が……二人いました。


 言わずもがな、男の子と女の子の二人です。


 二人は死の竜を倒すことを決意します。

 故郷である国を守るために。

 国人々を守るために。


 いよいよ始まるのは、雨を降らせる魔法使いと太陽を作り出す魔法使い、そして死の竜との戦いです。


 その戦いの行く末は………………………………。


 







 『はい、今日の話はここまで』

 「う?!なんて続きが気になる終わり方。二人はその死の竜との戦い、どうなったんですか?」

 『それを今言っては面白くないですよ、ミナト君』

 「え~~?!」


 今日は続きが気になるために、いつも話している途中で眠ってしまうミナトがシズカの膝枕を受けながら不満顔を出していた。


 ミナトの不満顔に対して、ウィルターはくすりと笑い、


 『ごめんごめん。でも、やっぱりこれ以上話しすぎると、話が面白くなくなっちゃうからね。この続きはまた今度必ず話すから』

 「必ずですからね」


 そう言って、ミナトは目を閉じる。

 暫くして、スヤスヤと寝息が聞こえてきた。


 『おやすみ、ミナト君』




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