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むかーしむかーし②

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 むかーしむかーし。


 今よりも遥かに昔の話。




 ある国のある地方にある、それはそれは辺鄙な場所に一つの小さな村がありました。


 それは名もない村、地図にも乗っていない村。

 本当に、明日にもでも無くなりそうな村。


 ……………って、これはもう前に言ったか。


 え〜と…前回の続きだから………ああ、そうだ…思い出した。


 その村には、二人の男の子と女の子がいました。


 二人はいつも遊んでいました………………が、今日は遊ぶつもりはありませんでした。


 今日はかくれんぼの場所として遊んでいる村の外の森の中、その奥の方へ探検しに行きました。

 それは昨日、森の中で見た白い鱗を持った白竜にもう一度会うためです。


 会って、昨日のお礼を言いたかったのです。




 二人は森の奥の方へと、どんどんと入っていき、大声で白竜を呼んでいました。

 けれど、何度呼んでも白竜は現れる気配はありません。


 暫くして、子供である二人の喉が大声を何度も出したことで、枯れ始めてきた頃、それは再び現れました。


 昨日と同じように、白竜は空から舞い降り、地上に降り立ちました。


 『おや?貴方たちですか?また迷子になりましたか?』


 白竜を見た二人は違うと頭を振り、今日は白竜に昨日のお礼に来たと言いました。


 昨日は白竜の大きな姿に怯えていた二人ですが、今日は怖がること無く、白竜のそばに寄って二人揃って、ありがとう!!!……大きな声でそう言って、頭をペコリと下げました。


 それを見た白竜は長い首を傾げ、


 『お礼のために、態々ここに?また迷子になったらどうするんですか?』


 白竜がそう言ったのに対して、女の子は得意げに手に持っている紐の束を見せる。


 頭の良い女の子は森に入ってから、ここにたどり着くまで迷子にならないように、木の枝のあちこちに目印となる紐を結んでいたのです。

 帰りはこの紐の目印を辿っていけば、帰ることができ、またここに来ることも出来ます。


 これからもずっと白竜に会いに行き、一緒に遊ぶために。


 白竜は呆れたようにグルル……と、口を唸らせました。


 『私と遊びたいなんて、貴方たちは変わっていますね』


 白竜は呆れたような言葉は発してはいましたが、何故か二人の目には白竜が嬉しそうに見えました。




 その日から毎日のように、二人は森に入り、白竜を元へ遊びに行きました。


 二人は白竜の大きな身体によじ登ったり、長い首を滑り台のようにしたり、尻尾に抱きついたりして遊びました。

 時に、白竜は二人を背中に乗せて、大空に飛びました。


 白竜は身体が大きく、空が飛べるだけではありませんでした。


 なんと白竜は、有りと有らゆる魔法が使えたのです。


 火の魔法や水の魔法、土の魔法、風の魔法。

 それだけでは無く、物を浮かばせる魔法や花を咲かせる魔法、光の壁を出す魔法、雷を降らせる魔法。

 種々様々な魔法を二人に見せる白竜に対して、二人の方も楽しそうに見ていました。


 男の子と女の子にとって、白竜との遊びは掛け替えのない思い出の一つになりました。


 これがいつまでも続けば良いな、そう思っていました。




 …………………しかし、白竜は突然として姿を見せなくなったのです。


 それは二人が初めて、白竜と出会ってから、一ヶ月後の事でした。


 その日を境に、何度森に行って二人が白竜のことを呼んでも、白竜は二人の前に現れることはありませんでした。

 何年も現れることはありませんでした。




 月日が流れ、男の子と女の子の二人は共に成長し、大きくなっていきます。


 それに連れて、徐々に白竜と遊んだ記憶が薄れていきました。


 時々二人は思います。

 白竜と遊んでいたのは、夢だったのでは無いのかと。

 なぜなら、よくよく考えてみれば……白い竜と出会い、あまつさえ一緒に遊んだなんて余りにも現実味が無い話だったからです。


 やがて男の子と女の子は村を出て、近くの街に行き、共に冒険者になりました。


 男の子にとっては、冒険者になる事はずっと憧れていたものだったのです。

 女の子は冒険者に憧れているという程ではありませんでしたが、男の子と一緒にいたいという気持ちがあったのです。


 かくして二人は冒険者になったのです。

 

 この冒険者への道が、二人の運命を大きく左右することは知らずに。


 壮絶な結末になることは知らずに。









 『あれ?ミナト君は寝てしまいました。さっきまで起きていたのですが』


 少し前までは起きていたミナトも、今は前回同様シズカの膝枕でスヤスヤと眠っていた。


 『そのお話……拙者も小さい頃に、よくお父様から聞かせてくれたでござる。懐かしいでござる』

 『そうでしたね。シズカもこの話を聞いて、よく眠っていましたね。まさか千年後の子孫にも聞かせる事になるとは。不思議なものですね』


 ウィルターが感慨深い表情で、そう言った。




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