《登場人物》
【ミナト・アクアライド】
今作の主人公。
水魔法使い。
黒髪黒目、百七十センチと少し。現在、十五歳。
シズカとの近接戦闘訓練で引き締まった身体をしているが、着痩せするタイプなのか、端から見れば余り強そうには見えない。
落第貴族と罵られているアクアライド男爵の嫡男であり、生まれてから十歳まで初級の四級水魔法〈ウォーター〉すら碌に使えず、周囲や父親から出来損ないと言われ続けていた。
しかし偶然か必然か、ダンジョン「水之世」で行方不明になった後、最下層で歴代アクアライド当主である初代レイン・二代目ウィルター・三代目シズカと出会う。
三人に修行を付けて貰い、最強(自称)の魔法使いへとなっていく。
「水之世」で修行を得た現在は、アクアライド家を盛り立てて行こうとする気概は無く、基本的に魔法や錬金術、魔術の追求にしか興味が無い。
ミナトの今の性格は師匠である三人の当主の性格を混ぜたようなものであり、通常時の丁寧な言葉使いはウィルターから、強者に対して好戦的で、弱者に対して優しさを見せる時があるところはシズカから、戦闘時に垣間見える傲岸不遜な態度はレインから引き継いでいる。
けれど、その傲岸不遜な態度が油断を招いてしまう場面が玉に傷。
初恋の相手はシズカ。
得意の水の斬撃から「無剣の剣士」という異名が付いた。
【クラル(クラリサ・オルレアン)】
風魔法使い。
オルレアン伯爵家の長女、ミナトの幼馴染み。
五年前まではチビと呼ばれるほど小柄であったが、今は百八十センチの長身。現在、十七歳。
少し焼けた健康的な肌に、肩ほどあるダークブラウンの髪と深紅の眼。
ミナトが「水之世」で行方不明になる前は、ミナトの事をただ弱くて哀れな奴と認識していた。
だが、ミナトが行方不明担った際の周囲の冷めた態度と無関心さから、弱者が死んだとしても一切関心を持たれないことへに恐怖を持った彼女は弱者にならないために、強くなる決心をした。
現在はAランク冒険者となって、冒険者名としてクラルと名乗っている。
彼女を護衛として見いだしたミルを、主を仰いでおいでいる。
風魔法は無詠唱化されており、オリジナル魔法も使いこなす。
異名は「旋風」。
剣もかなり強い。
持ち手が銀色で緑の装飾が施され、刀身が白い剣を腰に差している。魔力を僅かに発しているため、普通の剣では無さそう。
今のミナトに対しては、嫌いではあるが、何処か憎めない奴と思っている。
【ミル(ミスティル)】
土魔法使い。
雪のように白い肌に、長い亜麻色の髪と薄緑色の眼、百五十センチ中盤。現在、十六歳。
クラリサと同じ、Aランク冒険者。
常に茶色いローブのフードを頭から被っており、親しい人や信頼している人以外には顔を見せようとしない。
茶色いローブ自体は宝具と呼ばれるものであり、経緯は今のところ分からないが、この宝具のことをミリュアちゃん……と呼んでいる。
本名と素性を隠しているようだが、ミナトは結構くらいの高い貴族なのでは?と考えている。
簡単な杖術ぐらいは使えるが、近接能力はあまり高いとは言えない。
魔法に関しては防御系や罠系などの搦め手が得意であるが、それは彼女の過去に起因するところがありそう。
異名は「砂姫」。
護衛のクラリサに対しては全幅の信頼を置いており、対等な友人同士になりたいと密かに思っている。
【ブルズエル】
剣士。
百八十センチ超えの長身に、酒豪。現在、三十一歳。
Bランク冒険者パーティ「銀山」のリーダー。
剣術の腕はマカの中では、トップレベル。
Cランク冒険者パーティ「五枚刃」との合同パーティを組んだときに、アイスウルフの群れからミナトが助けた経緯から、ミナトと接点が多い。
【ウルド】
盾使い。
Bランク冒険者パーティ「銀山」のメンバー。
重鎧を着て、大きな盾を持っている。
ブルズエルとは相棒的ポジション。
実は釣りが上手い。
【クリンズ】
弓使い。
Bランク冒険者パーティ「銀山」のメンバー。
常に無口で、同じパーティメンバーのブルズエルとウルドも、年に数回程度しか声を聞いたことが無い。
弓の腕前は一流で、斥候としての能力も高い。
【モンシェ】
槍士。
Cランク冒険者パーティ「五枚刃」のリーダー。
実力自体は、Bランク冒険者相当だと言われている。
【レッカ】
剣士。
Cランク冒険者パーティ「五枚刃」のメンバー。
仲間のバンとは、特に仲が良い。
【バン】
斥候。
Cランク冒険者パーティ「五枚刃」のメンバー。
アイスウルフに腕をかまれた際に、低体温症になった腕が壊死するのを治してくれたミナトに深く感謝しており、何かとミナトを気に掛けることが多い。
【ノルウェル】
土魔法使い。
Cランク冒険者パーティ「五枚刃」のメンバー。
ノルトンとは双子。
【ノルトン】
土魔法使い。
Cランク冒険者パーティ「五枚刃」のメンバー。
ノルウェルとは双子。
【エウガー】
剣士。
百九十センチ弱で、熊のような体格。現在、二十八歳。
Bランク冒険者パーティ「双酒」のメンバー。
ミットとは良き相棒。
ミットとは反対の、ずぼらで思いっきりのある性格。
よく酒を飲み、女好きである。
剣術はお世辞にも上手くは無いが、彼の剣の真価はその剛腕による剛剣。
【ミット】
火魔法使い。
金髪で百六十センチのかなり細身、如何にも魔法使いのような体格。現在、二十五歳。
Bランク冒険者パーティ「双酒」のメンバー。
冒険者にしては珍しく丁寧な口調と態度。
魔法の才に関しても、他の冒険者の魔法使いの中でも秀でている。
ミナト曰く、無詠唱の才能があるとのこと。
小さい頃、ミナトのように出来損ないと呼ばれていたようだが、彼の家系に何か関係があるのかも知れない。
【ミラン】
斧使い。
マカの街の冒険者ギルドのギルド長。
赤茶色の髪を後ろで束ねた三十代の女性。
おおよそ身長百八十センチで堂々たる体躯、頬には傷跡がある。
若い頃はAランク冒険者であった。
彼女の愛斧である魔斧ネグログリアは持ち主の声の応じて、手元に戻ってくる能力がある。
一見地味な能力に見えるが、ミランの驚異的なスローイング技術が合わると、「黒鳥」という二つ名が付けられる程。
【レティシア】
受付嬢。
冒険者ギルド受付の〈新規登録・依頼発注〉を担当。
【アン】
受付嬢。
冒険者ギルド受付の〈依頼受注・依頼完了手続き〉を担当。
【ヴィルパーレ・トレル】
マカの街の辺境伯。
金髪を短く纏め、精悍な顔つきをしている。
ギルド長のミランとは旧知の仲。
剣も相当できる。
【ニナ】
擬人。
出身はポール公国の辺境の村。
いろいろあって、エスペル王国の南東の村に住んでいる。
【シュルツ】
音魔法使い。
絶対音感であり、普段は貴族の屋敷や広場で音楽を演奏することを生業とした奏で手をやっている。
大金を積まれたために、今回のマカ襲撃計画に加担した。
【ラリアーラ】
樹魔法使い。
丁寧な口調ではあるが、冷徹な面も。
他に影響を与える魔法使いであり、短剣を使った剣術も卓越している。
【レイン・アクアライド】
千年前に存在していたとされる最強の水魔法使い。
百八十センチほど、体格は良いとは言えない。
ミナトの祖先で、アクアライド家の初代当主。
現在は「水之世」の最下層の墓の間にて、英霊として存在している。
ボサボサの青い髪に無精髭も生やしており、一見してだらしなく見えるが、何故か圧倒的強者の覇気を感じる。
ミナトが最も憧れている人物。
何処で生まれ、どのように強くなったかは不明。
人とは思えないような規格外の魔力と魔法。誰も彼には敵わない。彼から繰り出される大いなる水の魔法は幾千幾万の敵を蹴散らし、海を操り、空を割り、世界に平穏をもたらた。
その神の如き所業から多くの者が口を揃えて彼を「水神レイン」と呼ばれていた。
世界に平穏をもたらした後は故郷のエスパル王国に根を下ろし、王国筆頭貴族となって、死に際まで国に貢献したと言われている。
多くの者が絵に描いたような神のごとき英雄……という認識だが、実物は息子のウィルターや孫娘のシズカによく注意をされる…………魔法や偉業をを除けば凡庸な感じの人だった。
それでもミナトの尊敬の念は変わらない。
ウィルターはそこに関して、不服なようだが。
【ウィルター・アクアライド】
ミナトの祖先で、アクアライド家の二代目当主。
レインの一人息子。
「雷王」という異名を持っている。
エスペル王国の水魔法の発展や魔術の確立、王国の錬金術を数百年単位で進ませたなど、多くの功績から最高の水魔術士もしくはエスパル王国錬金術の祖と言われている。
百七十センチで、身体はかなり細身。
眼鏡を掛け、肩まである長い黒髪。
現在は「水之世」の最下層の墓の間にて、英霊として存在している。
ミナトに取っては優しい兄貴的存在で、魔法と魔術、錬金術の師匠。
生きていた頃は父親のレインと比べ、才能は平凡であったため、よく劣等感を感じていており、割と苦労人であったようだ。
父親のレインに対しては、尊敬の念は一応持ってはいるが、自身との才能の差の劣等感から、ついつい反抗的な態度を取りがち。
【シズカ・アクアライド】
ミナトの祖先で、アクアライド家の三代目当主。
ウィルターの長女。
「水剣聖」の異名を持っている。
百九十センチという超長身に、水色の髪を一纏めにして、細長い剣を腰に携えている。
ちなみに、その細い剣というのが、ミナトが〈氷刀〉の参考にしている刀である。
ござる口調が特徴的。
現在は「水之世」の最下層の墓の間にて、英霊として存在している。
水剣技の開祖。
圧倒的な剣の技量と魔法を融合させた水剣技の近接能力は初代当主であるレイン様すら超えていると言われている。
ミナトに取っては、姉貴的な存在であり、剣の師匠。
実は初恋の相手でもある。
どうやら母親、つまりウィルターの妻はかつて魔物に分類されていた特殊な種族だったらしく、百九十センチの超長身もそのため。
種族名は今のところ不明。