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作戦

以前投稿した者と内容が少し変わっています




 翌朝、俺達はアルアダ山地に向けて徒歩で向かった。


 盗賊の本拠地はアルアダ山地の奥に少し進んだ洞窟にある。

 ここからそう遠くない場所である。これ以上馬車で近づいたら、ばれる恐れがあると判断され、村からは徒歩で向かうことになった。


 「冒険者の方々、お気をつけてください!」

 「おう、任せろ!盗賊なんか俺達の敵じゃねぇよ!」


 ブルズエル達が村人達の声援に応える。

 出発する俺達に対して、村長をはじめ村人が総出で激励の言葉をかけてくれた。


 その中には当然、


 「お兄ちゃん!お姉ちゃん!頑張って!!」

 「頑張ってください!ミルさん、クラルさん、ミナトさん!」


 金髪のお下げを揺らしたシルハとソーフもいた。


 「おう、頑張るぜ」

 「お任せ下さい」


 シルハの応援を受けて、俺やミル、クラルは手を振った。









 アルアダ山地はそこまで険しい場所ではない。


 道は少々荒いが、街道もちゃんと通っており、そこまで危険な魔物がいるところではない。

 もっとも今は盗賊がいる危険地帯だが。


 木はほどほどに生い茂り、時々動物や低ランクの魔物が現れたりするが、襲ってくる奴は俺やクラルの魔法で瞬殺している。

 鳥のさえずりが聞こえ、風の適度に吹いているので、結構心地よい。


 一時間半ほど経ったときに、一行は止まった。

 どうやら、ここから少し行った先に目的の洞窟があるそうで、


 リーダーのブルズエルが皆を集まらせる。


 「いいか…斥候のバンの話では今さっき俺達が通っていた道のその先…その道の外れに盗賊のアジトである洞窟があるとのことだ」


 俺はふと、バンの方を見ると、彼は得意げな顔をしていた。


 なるほど、アイスウルフごときにはやられたけれど、斥候としての腕は確かなようだ。

 一言多いミナトである。


 「よし、昨日の作戦通りに俺、ウルド、モンシェ、レッカ、バンが前衛で戦い、クリンズ、ノルウェル、ノルトン、ミナト、クラルさん、ミルさんが後衛を担当。この陣形で盗賊達を一網打尽にするぞ」


 俺も異論は無かったので、頷いた時だった。


 「お待ちください。今回の作戦ですが、私から提案があります」


 異論を唱える者がいた。

 それはミルだった。


 「ん?ミルさん、提案とは?」

 「この中の誰かが盗賊にわざと捕まり、捕虜として洞窟に連れられたところ際に内側から撹乱や陽動を仕掛け、外で待機している人は外側から奇襲をかける…という作戦はいかがでしょう」


 なんとミルが作戦の修正案を提示してきた。

 突然の提案に驚いたのは俺やブルズエル達だけで無く、護衛のクラルもだ。

 俺は素直に聞いてみる。


 「わざと捕まる?何のためにですか?そのまま洞窟の中に侵入して、盗賊を片っ端から倒せばいいじゃないですか」


 俺は当たり前の事を言ったつもりだった。

 ミルはくすりと笑い、


 「そうですね……貴方ならば、それも簡単になし得るでしょう。しかしその作戦であると、攫われた人が人質で使われ、最悪殺されてしまう可能性があります」


 う……確かにミルの言う通りかもしれない。

 シルハと仲良くしていたっていうニナって子やそれ以前に恐らく捕まっているであろう商隊と冒険者の人達が人質にでも取られたら、見せしめに一人ぐらい殺される場合もあるな。


 「今回は洞窟という閉鎖的な場所であるので、貴方も私達もいつもよりは十全に動けないと思います。ここは誰かが敢えて捕まることで、盗賊のアジトに潜入した後…運が良ければ捕まっている人を確認し、そのまま保護した状態で盗賊を倒す………これが私の提案です」

 「う、う~ん」

 

 ミルの提案にリーダーのブルズエルが唸る。


 「た、確かに俺達が洞窟に突撃を仕掛けたら、盗賊達を刺激して、捕まった人を殺しかねない。だから、この中の誰かが盗賊に捕まったふりをして、洞窟に潜入し、油断しているところを叩く。理にはかなっている……なぁ」

 

 ブルズエルが渋々と言った様子で賛同する。

 他の皆も考え込んだ顔で異論を言おうとはしない。


 あ、ちなみに俺は捕まる役には、なりたくないよ。

 態と、とはいえ捕まるなんて雑魚っぽい。


 「な、なぁ……待ってくれ。何か良い作戦に聞こえはするが、潜入とは言え…そもそも盗賊に捕まるって事は拘束されるって事だ。そんな状態で自力で脱出して他に捕まっている人を守りながら戦うって……かなり、いや滅茶苦茶だろ」


 ここで盾使いのウルドが異議を申し立てる。

 常識的な観点だ。


 「それが出来る人がここにいます…………ミナトさんとクラルです」

 「「………」」


 言われた俺とクラルは暫く黙り込む。

 少し経って、


 「「ええぇ?!!」」


 俺達は二人そろって声を上げる。



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