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『水人』 〜無能の水魔法使いは歴代当主達に修行をつけられ、最強へと成る。最弱魔法である水魔法を極め、世界に革命を~   作者: 保志真佐
第七章 ピレルア山脈と竜穴

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ミナト VS ドリアン

皆さん、明けましておめでとう。

今年もよろしくお願いします。




 「みんな!!イチカを頼む!!」


 俺は叫ぶように、後方にいるイチカを守って欲しいと頼む。


 目の前の(ドリアン)を相手に、イチカを守りながら戦える自信が無い。

 それほどの相手だ。


 今でも感じる激流の様な魔力の放出。

 なのに、荒々しさを見せつつも、その膨大な魔力をコントロールする魔力制御力。


 間違いなく、「水之世」から出てから戦って来た者の中で一番強い。

 俺も全力を出さざるを負えない。


 「分かった!イチカ、下がるぞ!」

 「ミナト!イチカちゃんは任せてください!!」


 クラとミルは、イチカを連れて、俺とドリアンから大きく距離を取る。


 「あんた、負けないでよね!!」

 「ほら!お前たちも下がるぞ!」


 ミーナは喝を入れ、パルは残された花人のスズとバーラも連れ出す。


 それで良い。

 もうすぐ、ここは危険地帯になる。


 「お兄ちゃん!!頑張れ!!」


 連れ出されるイチカは、俺に有らん限りの声量で応援を叫ぶ。

 俺は人知れず、拳を握り締める。


 有難い、勇気が湧いてくる。

 応援と言うのは、こんなにも体に力を漲らせるのか。


 「ドリアン様?!この事態は?!」


 俺とドリアンが魔力を解放したためか、周囲にいた皇国魔法団の者達が慌てながら、ドリアンに状況確認を行う。


 「ふむ…これより、この場にいる全ての皇国魔法団に命じる。即刻、儂を置いて下げれ」

 「ド、ドリアン様を置いて?!」

 「そうじゃ。これから、この山の頂上では激しい戦いの場になる。皆、急いで頂上から離れよ。儂が作った土の壁は先程人が通れるように穴を空けた。そこから出るがよい」

 「全員退去ですか?」

 「はよ行け。お前たちを考えながら戦えん」

 「は!!」


 皇国魔法団はドリアンの指示を受けた後、一糸乱れぬ動きで、クラ達と同じくこの場を離れる。


 いよいよ残ったのは、俺とドリアンだけ。


 「ふぅ…」


 ドリアンは一回深呼吸をする。


 コツ…。

 持っている杖で地面を叩く。


 ドリアンの魔力が持っている杖を伝って、地面に流れ込む。

 俺とドリアンの下にある地面に膨大な魔力が行き渡る。


 「一つ言っておく。降参するなら今の内じゃ」

 「は?」


 ドリアンは突然、意味が分からない事を言ってきた。

 降参しろと言われて、普通する訳ないだろ。


 「お主は儂の弟子であるファングを倒したが、あやつは皇国十二魔将・第十二席。皇国十二魔将は基本、席の数字が若い順に強い。そして、儂は第六席。ここまで言えば分かるじゃろ?」

 「いや、分かんねえよ!」

 「ふぅ…お主では、儂に勝てんよ」


 ため息をつくドリアンの様子は、まるで…駄々をこねる孫に対して、仕方が無い子だな…とする、お爺ちゃんみたいだ。


 「では、始めるかの」


 ドリアンは静かに言い放つ。


 「何時でも来い!!」


 俺は、ドリアンがそんな魔法が来ていいように身構える。

 相手は皇国十二魔将・第六席。


 俺が少し前に倒したファングは、第十二席


 ドリアンが土魔法使いであるのは分かっている。

 だが、一体どんな魔法を使うのか。

 俺はドリアンの一挙手一投足、見逃さないようにする。


 対するドリアン…その初手は、


 「〈アースクェイク〉」


 一級土魔法である〈アースクェイク〉だった。


 何が来るのかと思ったら、まさか一級魔法だったなんて予想していなかった。

 俺が何か動き出す前に、


 「う?!」


 ガガガガガガガガガがガガガ!!!

 途方もない震動が地面を伝って俺を襲う。


 その揺れは、シズカ様との稽古で体幹を鍛えている俺でも、とてもではないが、立っていられない程だ。


 グググググググググググググ!!!

 揺れの次に起こったのは、地割れだった。


 俺とドリアンの間の地面が大きく割れる。

 それは地面に巨大な口が現れたような。


 その巨大な地面の口は見る見るうちに、大きく開き、俺を飲み込もうとする。

 俺は急いで飛び退く。


 だが、地割れを回避したと思ったら、突如に山の頂上で起こった地震と地割れで、土の砦が崩れ始める。


 ドリアンは平気なのか、土の砦が崩れてきても、微動だにしない。

 しかし、俺の方は不味い!


 このままでは、崩れた壁に押しつぶされる。


 「〈氷壁・囲〉」


 瞬時に、俺は全方位防御を展開する。

 鉄よりも硬い鋼の強度を持つ俺の〈氷壁〉を全方位に張った。


 ガシャン!!

 数秒後、ドリアンによって、アネトゥ山頂上に構築されていた土の砦が全て崩れ去る。









 その光景は、戦いに巻き込まれぬように下がっていたクラ達も当然、目撃していた。


 「なっ?!土の砦が崩れた?!」

 「何が、どうなっているのよ?!」


 先程、起こった飛んでも無い揺れ。

 そして、土の砦の崩壊。


 パルとミーナは、驚愕してミナトがいるであろう場所を見る。


 「直前に感じた膨大な魔力に、大規模な揺れ……………まさか、一級土魔法〈アースクェイク〉」


 ドリアンと同じ土魔法使いであるミルは、土魔法の知識に明るく、先程行使された魔法が〈アースクェイク〉であると断定。


 一級魔法と言えば、ルイス子爵家であるミーナが使う一級火魔法〈炎災〉。

 あれはルイス子爵家の血筋の者のみが使える特殊な魔法であり、一点集中の魔法でもある。


 だが、〈アースクェイク〉は、一級風魔法〈トルネード〉や一級火魔法〈フラッシュオーバー〉、一級水魔法〈タイダルウェーブ〉と並ぶ四大災害魔法と呼ばれるものである。

 一級魔法の中でも、最も使用回数が多く、被害が大きいからだ。


 そんな魔法を先頭の初手で使うとは。


 「ミナト……」

 「お兄ちゃん……」


 この中で人一倍ミナトの事が心配なクラとイチカは、彼の安否を信じ、ただ見守ることしか出来なかった。









 砂埃が周囲を舞う。


 「ごほ…ごほ…」


 俺は咳払いをしつつ、周りを確認する。


 土の砦は見事に崩れ去っていた。

 ここから、夕方になりつつある太陽を一望出来た。


 俺は〈氷壁・囲〉で防御したため、何とか無傷だ。

 〈アースクェイク〉は、超広範囲攻撃魔法。


 対個人ではなく、対集団や都市の迎撃に使うものだろう。


 これが、ミーナが使う〈炎災〉みたいに、集中型の一級魔法であったら危なかったかもしれない。


 「そうだ!ドリアンは!」


 俺はドリアンの姿を探す。

 土の砦が崩れ去ったことで生じた砂埃で良く見えない。


 まさか、自分がこうした魔法でやられたってことは無いよな。


 「……ん?」


 そう思っていたら、前方10メートル先に、砂煙に隠れて薄っすらと人の影が見える。


 影は背が低く、頭に当たる部分が大きく尖がっている。

 恐らく、ドリアンが被っていた尖がり帽子だろう。


 そして、その陰からは大きな魔力を感じる。

 間違いない、あれはドリアンだ。


 ならば、今度はこちらから攻撃だ。


 「〈水流斬〉」


 俺は得意の水の斬撃を、ドリアンに放つ。


 悪いが、容赦はしない。

 高圧縮された水の放出は、一文字状の斬撃となって、超高速で飛ぶ。


 ザク!

 そして、見事にドリアンに命中する。


 まだ、砂埃で良く見えないが、ドリアンの影が崩れ落ちるのが見えた。

 勝負あったか。


 「………呆気なかったな」


 ドリアンは間違いなく、強いと思っていたが、一撃で終わってしまった。

 拍子抜けであった。


 俺は息を吐き、体の緊張を解く。

 その時だった。


 「っ?!」


 俺の危険察知ともいうべき第六感が働く。


 俺は感覚に従って、即座に右にズレる。


 シュン!

 何かが物凄い速さで俺の方に飛んで来て、左脇腹を掠る。


 反応が遅れていれば、腹部の中心に当たっていただろう。


 左脇腹に、少し痛みが走る。

 掠ったとはいえ、微量の血が出ていた。


 だが、攻撃は一発だけでは無かった。


 シュン!シュン!シュン!

 最初のを皮切りに、数十個の小さい何かが高速で俺に向かう。


 魔力を感じるので、魔法による攻撃だ。

 俺は最小限の動きで、飛んで来る物を躱す。


 飛んで来た何かを全部躱すと、攻撃は止む。

 高速で飛んで来た物は全て、そのまま地面に刺さっていた。


 俺は地面に刺さったそれを一つ拾う。

 それは土の針だった。


 その土の針は、小指の長さも無く、非常に細かった。

 ただ細いと言っても、人の体を突き刺すには、十分な鋭さがある。


 問題は、土の針に込められている魔力自体が小さいこと。


 言い換えれば、隠密性が高いと言う事だ。

 それで、直前まで針が飛んで来ることに気づかなかったのだ。


 俺は魔力感知に自信があるが、小さい魔力しか込められていない魔法は、どうしても反応が遅れる。


 だが、可笑しいことがある。

 いくら隠密性が高くとも、これだけ土の針に込められる魔力が小さければ、俺の体で弾かれるはず。


 俺はドリアンとの戦闘時から、常に体全体に魔力を行き渡らせている。


 魔力は体の身体能力を強化させ、体にしっかりと魔力を行きわたらせれば、簡単な魔法ぐらい強化された体で弾くのだ。


 「……違う。針の中に高い魔力が()()()()()


 小さい魔力かと思ったら、意識を研ぎ澄ませて感じると、土の針には、かなりの魔力が内包されていた。


 もし、反応がもう少し遅れていれば、魔力を纏った体の腹部を貫き…内臓に突き刺さっていたと思われるほどに。


 空洞に物を入れるように、針の中に魔力を閉じ込めているのだ。

 だから、初見では小さい魔力と誤認してしまう。


 だが、内包している魔力は高いため、当たれば相当なダメージを負う。

 まさに、暗殺特化の魔法。


 しかし、疑問なのは、針の攻撃が飛んで来たのは、先程俺がドする余力はあるのか?

 〈水流斬〉が、しっかりと斬ったことは確認した。


 ドリアンに、あんな攻撃をする余力はあるのか?


 そう思って、前方を見る。

 その時は、すっかり、砂埃は晴れていた。


 そこには、倒れたドリアンが、


 「いない!!」


 いなかった。


 いや、良く見ると、ドリアンがいたと思われる場所には、”ドリアンに似せた”土の塊があった。

 しかも、その塊からは今も大きな魔力を感じる。


 「〈瞬泳〉」


 俺は水の高速移動で、土の塊がある場所に行く。


 「やられた!」


 俺は悟った。

 さっき俺がドリアンだと思っていた物は、ただの土の人形だったわけだ。


 「どうじゃ。〈土煙(カーテン)〉と〈土傀儡(ドール)〉の合わせは、お主でも上手く騙せたじゃろ?」


 声がした。


 その声の発生源は、俺から見て、右斜め前方。

 ドリアンのような土の塊があった地点から少し離れたところ。


 そこに、ドリアンがいた。

 今度こそ本物だ。


 「これは『魔力偽装』と言う魔法技術。フリランス皇国でも、一部の者しか会得出来ない程の高等技術じゃ。魔力が多く込められた魔法を、一見魔力が全く込められてなさそうな魔法に偽装し、その反対に…見せかけだけの魔力を持たせ、実際は生成に魔力がそこまで使わない魔法を偽装する」


 知らない単語が出てきた。

 『魔力偽装』…説明は、さっきドリアンがしてくれた通りだ。


 本来、魔法の威力は概ね込められた魔力で決まる。

 強い魔法であればあるほど、大きな魔力が込められている。


 それが魔法における基本。


 だが、さっきドリアンが言った『魔力偽装』という魔法技術を使えば、魔法の威力を誤魔化すことが出来るし、敵への攪乱にもなる。


 「ご丁寧に説明どうも。だが、肝心の攻撃は全く当たらなかったぞ」


 さっきの『魔力偽装』という技術は凄かった。

 俺でも知らない技術で、当然習得なんてしていない。

 興味深い技術ではあるが。


 土の人形で身代わりを作れるのに、俺の前に現れるとは。


 だが、俺はそう説明すると、ドリアンは何が可笑しいのか、大きく口をあけて笑う。


 「ほっほっほ…お主が儂の〈暗土針(ニードル)〉を避けることは予想しておった。あれは、ただの”囮”じゃ」

 「囮?……何を言って…………」

 「ほれ、〈土罰(パニッシャー)〉」


 ドリアンの言っている意味が分からず首を傾げる俺であった。


 だが、次の瞬間…ブシュ!


 「っ?!」


 全身に激しい痛みが襲う。


 確認すると、俺の全身に大量の土の破片が刺さっており、それによって大量の血が噴き出していた。

 俺の意識が薄れる。




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