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魔装と宝装、それから

会話シーンが多いです。




 一旦、話を纏める。


 魔装は、ダンジョンから極稀に産出される武器。

 宝装は、古の超大国で作成された武具。


 「古の超大国か………本当に御伽話みたいだな」

 「私もそこまで詳しくは知らないが、確か…その超大国の名前は……えっと…………」


 クラが思い出そうとしている時、答えが思わぬところから出てくる。 


 「超大国『アトランティス』ですね」

 「「え?」」


 俺とクラが振り向くと、そこにはミルがいた。


 「盗み聞くつもりは無かったのですか、魔装や宝装、超大国といった言葉が聞こえてきたので」


 どうやら、ミルは俺たちの会話が気になったようだ。

 俺はさっきミルが言った超大国の名前を思い出す。


 「アト…ラン……ティス?そんな国があったんですか」


 初耳な俺の様子に、ミルはくすりと笑い、人差し指を立てる。


 「ええ、私も王城の図書室にあった本、それもかなり欠損の激しい本から得た知識ですが。ヨーロアル諸国が置かれている「ユーラル大陸」が"今ある形"だった以前、大陸と同等の面積を持った一つ国があったそうです。それが超大国『アトランティス』。しかも…」


 ミルは立てた人差し指を頭上まで持っていく。


 「その国は"空に浮かんでいた"のですよ」

 「空に?!」


 俺は目を見開く。

 国が空に浮かんでいたというのか、俄かに信じがたい。


 「どういった原理で空を浮かんでいたのかは、本に書いていませんでしたが、空に浮かんでいたアトランティスは、今の世界では考えられないレベルの錬金術を備えていたとか。その錬金術で生み出された物の一つが宝装」

 「なるほど」


 俺は感心しながら、上を向く。


 上には、青空が広がっていた。

 この青空に国を浮かばせられるほどの錬金術、間違いなく今の俺でも理解不能だろう。


 「その空に浮かんだ超大国……行ってみたいな」

 「今はありませんよ」


 ミルの言葉に、俺は上に持っていた視界をミルに戻す。


 「ん?今は無い?」

 「はい。本の最後には、こう書いてありました。アトランティスは空から海に落ちたと。一体どういった理由で落ちたのか知りませんが、アトランティスは現在、海の底と言う訳です」

 「それじゃあ、行けないな」


 俺は肩を落とす。

 クラは目を細めて、


 「ミナトなら、海の底ぐらい行けるだろ」

 「出来ねぇよ。海の底は流石に。俺を何だと思っているんだ」

 「…………水の化け物」

 「それ、パルさんが俺に言った奴だろ!」


 以前、パルが俺に対して抱いた印象に関して、水の化け物と言った。

 失礼な、水の化け物と言ったら、まさにレイン様だ。


 いや、あの人は水の化け物ではなく、水の神様か。


 俺とクラがそんな会話をしているのをミルは口に当て当てつつ、笑いを堪えていた。


 「それにしても、ミル様の宝装の能力は”砂”。でもって、クラの宝装の能力は…………分からないんだよな」

 「ああ、そうだな。私に基本的な剣術を教え、この剣をくれた(かた)は…この剣の力を引き出せるまで、強くなれと言った。この剣を貰って二年ほど経つが、力を引き出せる気配が全く無い」


 クラは剣を軽く振ってみる。

 Aランク冒険者のクラでも、引き出さないとなると、この剣が要求する力は如何ほどの物なのか。


 「ずっと気になっていたのですが、クラに剣を渡したのは、どのような方なのですか?宝装を所持している人なんて、早々いるはずないのですが」


 ミルの質問に、クラは顔を左右に振る。


 「分かりません。あの方は常に兜で顔を隠していましたから。ただ、声からして若い男性だと思われます。それ以外は何も」

 「そうですか、それは残念。是非とも、お会いしたかったのですが」


 ミルとしても、自身の護衛を指南してくれた者に感謝の言葉ぐらい述べたかったのだろう。


 「あ〜あ…宝装と魔装。俺も一つぐらい欲しいな」


 俺としては宝装、もしくは魔装を欲しいと思ったのは、何となくだ。

 特殊な能力を持った武器がカッコ良さそうだと思っただけである。


 そんな、あたかも服を一着欲しいみたいな感覚で言ってみた。


 これを聞いたクラは大きなため息をつき、ミルは困ったように苦笑いする。


 「お前……宝装なんて、目にすること自体、普通は無いものだぞ。私とミル様がそれぞれ宝装を持っているのは、奇跡みたいなものだ」

 「そうですね。一国でも三つあれば、多い方です。しかも、大抵の宝装なんて、国が厳重に保管するものですから。私の宝装『ハムスィーン』も、王城の宝物庫から持ち出した物ですし」


 宝物庫から持ち出したと聞いて、俺は驚く。


 「宝物庫から持ち出した?それ大丈夫なんですか?」

 「あはは!本当は駄目なのですが、お父様……国王陛下から特別に許可を貰いました。『ハムスィーン』自体、ちょっと"訳あり"で」


 何か含みを持たせた言い方に疑問は残るが、どうやら宝装を手に入れるのは難しそうだ。


 「となると、残るは魔装になるかぁ」


 俺の知っている魔装は、マカのギルド長のミランが持っている魔斧『ネグログリア』と今回の助っ人であるパルが持っている魔鞭『サーペント』だ。


 ダンジョンから極稀に産出されると言うが、ならば「水乃世」にも魔装はあるのだろうか。


 レイン様たちがいる墓地の間から上へ登っていく時に、魔装らしき物は見当たらなかった。


 「まぁ…魔装なら手に入れられる可能性は無いわけではない。だが、魔装も普通ダンジョンで見つけようとしても見つけられる物じゃない。ミラン殿やパル殿のような魔装を持っている者は冒険者や元冒険者にそれなりにいるが、魔装を持っている者は大体、誰からか譲り受けたものだ」


 俺はふむ…と、頷いてから、


 「じゃあ、誰かから貰えばいいのか?」

 「お前は何故そんなに楽観的なんだ!」


 クラから壮大な突っ込みを食らってしまった。




 そんなこんなで、俺達は十分な休憩を取ることが出来た。


 「ほら、イチカ。乗って良いぞ」

 「ありがとう、お兄ちゃん」


 俺はイチカを肩車させる。


 俺達はまたピレルア山脈を進み始める。

 だが、イチカを乗せたまま移動している最中、ふと…思った。


 俺が身に着けている”白いマント”は何なのだろうかと。

 魔装や宝装みたいに、魔力を帯びていることも無い、一見して普通のマント。


 この白いマントは元々シズカ様本人が身に着けていた物であり、「水之世」を出る際に、シズカ様から貰った。


 シズカ様は190センチの超長身のため、マントも大きかったが、俺が身に着けた途端、サイズが縮んだ。


 ただのマントでは無いのは、明らかだが、未だにこのマントが何なのかは分からない。

 分かっているのは、良い匂いがするぐらいか。


 そう言えば、前にマリ姉と戦った際に、背中をナイフで突きたてられたけど、軽い衝撃がするだけで何とも無かった。

 防刃性も高いみたいだ。


 思い出せば、俺に渡した時、シズカ様は”ある存在”から貰ったと言った。


 これはあくまで、何の根拠もない俺の感覚だが、このマントは”超常の者”によって作られたのではないかと思えるのだ。


 …………と、マントについて考えてみたが、明確な答えが出るはずも無かった。


 考えるのは取り敢えず止めるか。




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