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『水人』 〜無能の水魔法使いは歴代当主達に修行をつけられ、最強へと成る。最弱魔法である水魔法を極め、世界に革命を~   作者: 保志真佐
第六章 戦力強化

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閑話 隻眼の魔翼②




 「くそ!コイツ、今まで何処に隠れていやがったんだ!」


 レッカが愚痴を零す。


 ワイバーン程の巨体がここまで近づかれるまで、Cランク冒険者である彼らが気づけなかった。


 考えれる原因は、さっきまで街の何処かに隠れていたことだ。


 「五枚刃」を見据えたワイバーンは、次の瞬間に口元を赤くさせる。

 これから来る攻撃は決まっている。


 「ヤバい!ブレスだ!!ノルウェル、ノルトン、防御を頼む!!」

 「「聳え立つ石の壁よ、その堅牢を持って我らを守る巌となれ。〈ストーンウォール〉」」


 モンシェに言われたノルウェルとノルトンは、即座に〈ストーンウォール〉を展開する。


 ノルウェルとノルトンは双子であるため、魔法連携が高い。


 「五枚刃」の前方に、通常の〈ストーンウォール〉より二倍程、分厚い石の壁が築かれる。


 ゴオオオオ!!!

 ワイバーンから放たれる灼熱の業火。


 業火が、石の壁に衝突。

 〈ストーンウォール〉は、ワイバーンのブレスを防ぐが、


 「何て熱だ!」


 〈ストーンウォール〉の裏側に隠れていても感じる高熱に、バンが悪態をつく。


 暫くして、ブレスが止む。


 「〈ストーンウォール〉が………」

 「溶けている………」


 〈ストーンウォール〉を展開したノルウェルとノルトンは、熱に強いはずの石がワイバーンのブレスで赤熱していることに驚愕する。


 「五枚刃」はワイバーンから距離を取る。


 ブレスを防がれたワイバーンは「五枚刃」を睨んだ後、長く首や大きな翼を活かして、今度は近接戦に出る。


 「守りを中心に、無理に攻撃するな!」


 リーダーであるモンシェが指示を飛ばす。


 指示通り、「五枚刃」は防御を主軸にワイバーンと接近戦を繰り広げる。


 剣士であるレッカは、斥候であるバンを後方に置く。

 バンは投げナイフで攻撃しながら、応戦する。


 「五枚刃」で最も戦闘力に秀でているモンシェは槍を構え、後ろに土魔法使いのノルウェルとノルトンに庇いながら、戦う。


 二人は魔法使いであり、近接戦は苦手である。

 だから、戦闘になると、モンシェが彼らを守る。


 近接戦が強すぎる水魔法使いを一人、モンシェは知っているが、今は置いておこう。


 ワイバーンの噛み付きや翼による薙ぎ払いを余裕をもって回避し、槍で突いて、反撃。

 決して深追いしない。

 

 戦いにおいて、体の大きさと言うのは重要な要素を含んでいる。


 体の大きさは攻撃のリーチに影響する。

 大きい方が攻撃のリーチが長いのだ。


 小さい方の攻撃が届かないのに、大きい方が攻撃が届く。


 対人戦においても、大体において背の高い方が有利。

 実戦を経験した者ならば、誰しもが痛感する。


 実戦と言うのは、常に不平等である。


 だが、そこはベテランであるCランク冒険者達。

 ワイバーンの攻撃を凌ぎながら、モンシェは撤退を検討する。


 「俺達だと、ワイバーンは倒せない。隙を見て、撤退するぞ!」


 異論は無かった。

 たった五人でワイバーンを相手にするのは、無謀が過ぎる。


 「分かった、煙玉を使う!援護してくれ!」


 バンの一声で、即座に仲間が応える。


 「「岩よ牙を向け、頑強たる硬さを持って我が敵を打ち破れ。〈岩槍〉」」


 すぐさま、ノルウェルとノルトンが牽制のために〈岩槍〉を放つ。


 二本の岩の槍が、ワイバーンの腹部に命中する。


 「ギャア!!」


 〈岩槍〉は二本とも、腹部の鱗に弾かれる。


 翼膜に比べて、腹部の鱗は分厚いので、当然の結果ではあるが、ワイバーンの注意を引くことが出来た。


 ワイバーンが憤怒の目でノルウェルとノルトンを見る。


 視線がノルウェルとノルトンに行ったところで、バンがすかさず懐から小玉を取り出し、ワイバーンの額に投げつける。


 パン!


 「ギュウ?!」


 額に命中した小玉は軽い音を立てて、煙を巻き散らす。

 顔を煙で包まれたワイバーンは混乱する。


 「今だ!逃げるぞ!」


 モンシェの撤退命令で、「五枚刃」がユーカリの街の外に繋がる門に走っていく。


 五人共、門をくぐり、街を出て、一直線にマカを目指して走る。

 自分達では、ワイバーンを倒すのは無理と判断して、マカへ応援を連れに行くのだ。


 マカまでは徒歩で数日の距離。


 Cランク冒険者の足を持ってしても、片道一日以上は掛かる。


 「ヤバい!上だ!」


 レッカが上を指して、叫ぶ。


 何と、混乱から回復したワイバーンが空を飛んで、追ってきたのだ。


 当然、徒歩しか移動手段が無い者にとって、空を飛べる者から逃げ切るのは至難の業。

 すぐに追いつけれる。


 マカに向かって、一直線で走っていた一行だったが、


 「まずい!ブレスが来る!左右に避けろ!」


 モンシェが叫ぶ。

 ワイバーンが空を飛びながら、一行が走っている直線状に炎のブレスを放ったのだ。


 レッカとバンは、それぞれ左右に避けられた。


 しかし、


 「危ない!」

 「うっ?!」

 「なっ?!」


 魔法使いであるノルウェルとノルトンはCランク冒険者と言えど、他のメンバーよりも運動神経が良いわけではないので、反応が遅れてしまう。


 避けきれない二人をモンシェが体をぶつけて、ブレスの射線上から外させる。


 間髪入れず、ブレスが「五枚刃」が走っていた場所を通り過ぎる。


 レッカとバンは、肌が焼けそうな熱量と地面が焼ける匂いに顔を歪める。


 けれど、もっと顔を歪める事態が起こった。


 「あが?!」


 ワイバーンのブレスによって、モンシェの左腕を焼かれてしまったのだ。

 一瞬で、炭化するモンシェの左腕。


 そのまま地面に倒れたが、すぐに立ち上がる。


 左腕が激痛を超えた苦痛で侵される中、モンシェは考える。


 このままマカに向かったとしても、空を飛ぶワイバーンから逃げられないし、いずれ誰かが上空からのブレスにやられる。


 ここは一旦、ユーカリの街に戻って、実を隠すのが最善。


 「ユーカリに戻って、暫く身を隠すぞ!」


 リーダーのモンシェは、数秒に満たない間に判断した。


 「五枚刃」は、またユーカリの街へ引き返すことになった。

 五人は急いで、元来た道を走る。


 ユーカリの街に戻る「五枚刃」を当然のごとく、空から追うワイバーン。


 幸いにも、モンシェは左腕を負傷しただけで、足は動く。


 と思っていたが、


 「ぐっ?!」


 街の門に入った辺りで、モンシェが痛みに耐えかねて膝をつく。


 やはり左腕を焼き尽くされた痛みは、気合で乗り切れるものでは無かった。


 「「「「モンシェ!」」」」


 膝を突いたモンシェに、駆け寄るバン、レッカ、ノルウェル、ノルトン。

 そこに、すかさずワイバーンがブレスを吐く。


 「「聳え立つ石の壁よ、その堅牢を持って我らを守る巌となれ。〈ストーンウォール〉」」


 二枚の〈ストーンウォール〉でブレスを防ぐが、ジリ貧だった。


 このままでは、五人共やられてしまう。


 その時だった。

 五人から少し離れたところから、一本の瓶が投げられる。


 それは飛んでいるワイバーンの頭部に命中する。


 パン!


 命中した瓶は割れ、その中にあった粉末か何かを撒く。

 途端に漂う激臭。


 「ギギャア?!」


 ワイバーンは悲鳴を上げる。


 それによって、ブレスによる攻撃が止んだ。


 「こっちです!!」


 瓶が投げられた場所から声が聞こえた。


 「五枚刃」は迷っている暇は無かった。

 バンとレッカは負傷したモンシェを抱え、声が聞こえた方へ急ぐ。


 「こっち!こっち!」


 声が聞こえた場所は、崩れかけた民家からだった。


 崩れた民家の壁から、誰かが顔を出していた。


 その者は壁から身を出し、「五枚刃」の後方にいるワイバーンに瓶を投げる。

 ワイバーンに当たり、再び漂う激臭。


 瓶を投げた者は民家から飛び出し、負傷したモンシェの運び込みに手を貸す。


 「この民家に地下室があります!そこに隠れましょう!」


 「五枚刃」を助けた者の素性を尋ねる暇もなく、彼らは言われた通り、民家の中にある地下室への入り口に入った。




 「ふぅ…一先ず、大丈夫です。ワイバーンは何処かに行きました」


 「五枚刃」を助けた者は、取り敢えず安全だと言う。


 地下室の中は薄暗かったが、蝋燭の火がいくつかあったので、何とか地下室の中を見渡せる。


 「助けてくれて、ありがとう…………って、あんたは?!」


 バンは助けた者を見て、驚く。

 見た目は二十代ぐらいの男…しかし、その者には、見覚えがあったからだ。


 バンだけでなく、他の「五枚刃」も、そうだった。


 「はい。以前、盗賊に捕らえられた時に助けて頂きました。Cランク冒険者の「五枚刃」の皆さんですよね?」


 それはミナトが前に、アルアダ山地にいる盗賊の掃討に行って、助け出した捕虜の一人だった。


 「テッドです。皆さん…お久しぶりですね」




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