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第1話 陛下のハーレムに入ります(1)

「あの暴君王のハーレムに入るだと!? お前は何を言っているんだ!」


「そうですよ、ぼくらが納得する説明をちゃんとしてください」


 わたし──レーティ・ラファエリが「陛下の側室(ハーレム)に入ります」と言ったら、うちの騎士二人に猛反対されました。予想通りに。


 まぁ……こうなることを予想して、王都へ向かう日程のギリギリまで黙っていたのですが。


 分かっていた事とはいえ、わたしはため息をついてから説明を始めます。


「王家より直々に打診があったのです。没落貴族の当家では、陛下の要求を断れるはずもありません」


 わたしの端的な説明に、ですが長身痩躯の騎士──クリスは、ただでさえ鋭い視線をより鋭くしました。うう……すっかり慣れた今でもちょっと怖いデス……


「没落も何も関係あるか! 暴君王なんてオレが一捻りしてやる! だからお前が、王家の要求に従う必要なんてまったくない!」


 語気を荒げるクリスは、王国の武芸大会で毎年優勝するほどに剣技が優れているのですが……だからこそ、なんでも力業で解決するきらいがあるんですよね。


 クリスは二十歳の青年で、わたしより二つ上です。騎士としてはもちろん超優秀で、その見た目も「ザ・イケメンさん」ですから、女性ファンも多くついています。だから領内を歩けば、若い女性はもちろん、少女からおばあちゃんまで、黄色い声援が絶えないほどの人気ぶりで……まぁ、それはともかく。


 しかしいくら武芸に秀でているとはいえ、陛下相手に戦えるはずもありません。『陛下を一捻り』したくても、そうするためには『国家を一捻り』しなければならないのですから。


 わたしがそんなことを考えていたら、もう一人の騎士も言ってきました。


「レーティ様、ぼくも反対です。暴君王と名高いあの男の元に嫁いだら、いったいどんな仕打ちに遭うのか、分かったものではありませんよ?」


 クリスと並び称される騎士であるジルは、冷静に反対の意志を示してきます。


 ジルは、わたしより二つ年下の十六歳でまだ少年です。ですが持ち前の天才性から当家騎士団の副団長に抜擢されました。


 さらに容姿は、美少年という言葉がぴったりな感じで、ドレスを着せてウィッグを付けたら、それはそれは可愛い美少女(、、)に変身するのですが……しつこくせがむとヘソを曲げて、密かに魔法で仕返しされるので要注意なのです……トホホ……(涙)


 なにしろジルは魔法に秀でていますからね。わずか十六歳で、魔法大学院を首席卒業するほどの天才少年です。在学中は教授陣も顔負けだったとか。


 わたしも多少は魔法を使えますが、ジルの足元にも及びません──というか、わたしの家庭教師はジルだったりします。魔法学以外にも、様々な学問に精通しているのです。


 ということで……


 騎士団長のクリス、副団長のジルに猛反対されて、わたしは肩を落としました。


「あなたたちがわたしの身を案じてくれるのは嬉しいですが……でも、もはやこうするより他はないのです」


 投げやり気味なわたしの態度に、クリスをさらに怒らせてしまったようです。


「ふざけるな! 王家の命令に従ってばかりだから、オレたちは没落したんだろうが!」


 さらにジルも、微笑を張り付かせて言ってきます。


「その通りですよ。王家は、ぼくたち領民を家畜としか考えていません」


 それは、そうなんでしょうけれどもね……


 わたしの家──ラファエリ家は、役職こそ地方領主を拝命していますが、元々はちょっとした集落の村長程度だったのです。


 この王国が発展していく過程で、ご先祖様は、戦争に巻き込まれることなく併呑されて、済し崩し的に貴族になりはしましたが──王国生粋の貴族である中央との格差は今でも圧倒的です。


 元々の領地や資産が違うのに、中央と地方では税率も違うのです。もちろん地方のほうが重税という意味で。とくに近年は一層の重税になっており、うちが没落した直接的な原因でもあります。


 さらに領主である父が病に伏してしまい……わたしが領主代行となりましたが、わたしの才覚では領地経営もままなりません。


 なんとか父の病気を治したくて、様々な伝手(つて)を使い、王都からお医者様を派遣してもらっていますが、どうやら回復の見込みは薄そうでした。


 そんな折、王宮から側室入りの打診があったのです。それはもう渡りに船というタイミングで。


 普通、地方貴族に側室入りの声なんて掛からないのですが……なぜかそんな打診が来ました。


 たぶん、陛下の気まぐれなのでしょう。


 だからわたしは、何度目かのため息をついてから、騎士二人に言いました。

第1話をお読み頂きありがとうございます!


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