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◎裁判員裁判(法的な評価等に争いのある事件)1日目その3

 午前中の傍聴を終え、昼食を取って雑談をしても、何人なんにんかはだいぶ疲労しているようだった。頑張ってほしいが無理はしないように、と言いおいて、各々自由時間とした後、10分前に元の法廷の傍聴席に戻ると、どうにか脱落者もなく、全員が法廷に戻ってきた。


 検察官、弁護人等が待っている中、裁判長が先行して法廷にやってきた後、証人が入ってきて証言台に着席し、被告人の着席予定位置から見えないかどうかを確認していた。

 その後、実際に被告人が入廷して着席したところで、改めて座っている被告人からは見えないようになっているか、弁護人らから証言の様子が確認できるかを確かめた後で、午前中同様に裁判員等が順に入廷し、各自の席のところに立ち、礼をして着席すると、裁判長が開廷を宣言した。


裁判長「それでは再開して、証人尋問に入りたいと思います。証人の方は立ち上がってください。」

 証言台にいる証人が立ち上がった。

裁判長「名前を述べてください。」

証人(山田)「山田チサトです。」

裁判長「年齢、住所、職業はこの出頭カードに書かれたとおりですか。」

証人(山田)「はい。」

裁判長「あなたには、これから証人として話を聞いていきますが、最初に嘘をつかないという宣誓をしてもらいます。宣誓書を渡しますので手に持って読み上げてください。」

 書記官が紙を持って近づき、証人に紙を渡した。証人は紙を両手に持って読み上げた。

証人(山田)「宣誓、良心にしたがって真実を述べ、何事も隠さず偽りを述べないことを誓います。山田チサト。」


裁判長「ただいま宣誓をしてもらいましたが、証人がこの宣誓に反してわざと嘘のことをいうと偽証罪として処罰されることになりますから、お気をつけください。」

裁判長「それでは、椅子に腰掛けてください。」

裁判長「最初に検察官から質問があり、その次に弁護人からも質問があります。その後、裁判所からも質問をさせてもらうことになるかもしれません。それから、この尋問は録音をしていますが、質問と答えがかぶってしまうと聞き取れなくなってしまうので、質問の途中で答えが分かってしまう場合もあるかと思いますが、質問が終わるまで待ってから答えてください。では、検察官どうぞ。」


 裁判長は証人に簡単に質問の順序を告げた後、検察官に声を掛けると、検察官が立ち上がった。


検察官「裁判員の皆様、お手元に配布させていただいたのは、大まかな尋問事項を、時系列順に並べさせていただいものです。必要に応じてメモを書くなり、質問事項を書き留めておくなりしていただければ、とおもいます。」


 検察官は、最初に裁判員らに声をかけた後、証人の方を向き直って注意点を並べて告げた。


検察官「これから検察官から質問をさせていただきますが、いくつか注意点をお伝えします。まず、検察官は横から聞きますが、できる限り前を向いてお答えください。回答はゆっくりとでいいですが、大きな声で端的にお答えください。必要であればこちらから追加の質問をいたします。また、検察官からの質問が聞き取れなかったり、分からなかったときには、遠慮なく尋ね返してください。質問内容が分からないままで適当に答える、ということがないようにしてください。では、質問に入ります。」


検察官「あなたは、夜、自宅前でここにいる被告人から灯油をかけられたということがありましたね。」

証人(山田)「はい。」

検察官「それは令和5年1月31日午後8時35分頃の出来事ということでいいですね。」

証人(山田)「はい。」

検察官「証人はその日、47歳でしたね。」

証人(山田)「はい。」


検察官「では、事件のことを順を追って詳しく聞いていきます。」

検察官「事件の日、証人が帰宅してきて、自宅前で何が起こりましたか。」

証人(山田)「玄関ドアの鍵を取り出そうとしたとき、左後方からガサガサという音が聞こえたので、なんだろうと思って左側を向くと、人影が迫ってきたのが見えました。」

検察官「その人影は次にどうしましたか。」

証人(山田)「私に近付くと、灯油を、ビシャ、ビシャっと、かけてきました。」

検察官「灯油はどこにかかりましたか。」

証人(山田)「私の顔や髪の毛、それと、服にもかかりました。」

検察官「証人は、そのまま灯油をかけられっぱなしだったのですか。」

証人(山田)「いえ、臭いで灯油をかけられたと気付くと、灯油を浴びせかけられながらも、木刀を掴みました。」

検察官「木刀はどこにありましたか。」

証人(山田)「玄関前から玄関ドアに向かって左側の、ドアのすぐ近くの傘立ての中に入っていました。」

検察官「ここで、同一性を確認するため、証拠番号2の写真番号3を示します。」


 検察官がパソコンを操作し、書記官に合図をすると、左右の壁の大画面のモニターに木刀の写真が写された。


検察官「写真に写っている木刀が、このとき証人が手にしたものということでよろしいですか。」

証人(山田)「はい。」


 検察官の合図に、書記官が操作をしてモニターの画像を消した。


検察官「木刀をつかんだ後、証人はどうしましたか。」

証人(山田)「相手のほうを向くと、相手が近づいてきて右手を差し出してきたので、とっさに相手の手に剣道の小手を入れました。」

検察官「それで相手はどうしましたか。」

証人(山田)「『ぐあ』、とうめくと、きびすを返して逃げ出しました。」

検察官「人影が迫ってきてからその人影が『ぐあ』と呻くまでに、何か言葉を発していたりしましたか。」

証人(山田)「いえ、それまでは終始無言でした。」

検察官「人影が逃げ出した後、証人はどうしましたか。」

証人(山田)「相手を追いかけて、途中、後ろから、木刀で相手の足のあたりを、片手打ちで叩いたりしました。」

検察官「その後、証人と相手はどうなりましたか。」

証人(山田)「相手が足をもつれさせて、急に転んだので、私も勢いが止められずに相手の上に転んでしまいました。」

検察官「証人と相手が転んだ場所はどこでしたか。」

証人(山田)「私の家の敷地は旗竿地なのですが、その竿と道路の境目あたりになります。」

検察官「転んだ後はどうなりましたか。」

証人(山田)「私のほうは、相手を捕まえてやろうとして押さえ込もうとしましたし、相手は逃げようと、起き上がろうとしたり、私を振り払おうとして腕や体を振ったりしましたが、最終的には、私がうつ伏せになっている相手の背中に乗って、相手の右腕を背中に回して押さえつけました。」

検察官「その状態となった後、証人はどうしましたか。」

証人(山田)「肩で息をしながらも、相手が逃げ出さないか反撃してこないかと様子に注意を払いつつ、『助けてくださ〜い、警察を呼んでくださ〜い』と声を上げました。」

検察官「その後、誰か来ましたか。」

証人(山田)「すぐには誰も来てくれなくて、時間が過ぎるのが遅いと感じながら、相手が体を揺すったり足や手を動かすのを頑張って押さえていると、ようやく、パトカーのサイレンが聞こえてきて、あと少しだと思いながら、押さえていました。」

検察官「サイレンの後、誰か来ましたか。」

証人(山田)「すみません。パトカーが道路に止まるとお巡りさん2人が降りてきました。」

検察官「お巡りさんとは何か会話をしましたか。」

証人(山田)「はい、最初は、向こうから、どうしたの、大丈夫かいなどと聞かれて、『この人にいきなり襲われました、灯油をかけられました』などと答えました。」

検察官「お巡りさんは、相手の人をどうしましたか。」

証人(山田)「相手に対し、灯油をかけたのは本当なの、とか、何か理由があったのなどと聞いて、それから、私には『ちょっと待っていてな』と言うと、相手を連れて玄関前に行ったり、垣根越しに南側にある溝の辺りを覗いたりした後、私に灯油をかけたことについて、暴行罪の現行犯で逮捕すると言って手錠をかけてパトカーの中に連れて行きました。」


検察官「裁判長、ここで供述を明確化するため、証人方付近の地図を示して、これまでの主要な場面の位置関係について書き込んでもらいたいと思うのですが、よろしいでしょうか。なお、示す地図についてはあらかじめ弁護側に示して了承いただいております。」

裁判長「どうぞ。示してください。」


 検察官が大型モニターは映さないように書記官に告げて、パソコンを操作し、書記官に合図をすると、裁判長から検察官に尋問を続けるようにと声がかかった。


検察官「証人の目の前のモニターに映っている地図は、証人の自宅周辺の地図ということで間違いないですね。」

証人(山田)「はい。」

検察官「これから、先程証言していただいた出来事の位置関係を、順に、証人のほうを①②というふうに、相手方のほうを㋐㋑というふうに書いていってもらおうと思います。モニター用のペンを使ってモニターに書いてください。」

検察官「証人が、人影を見たときの証人の位置を①、人影の位置を㋐として、地図に書いてください。」

証人(山田)「はい。」


 証人が証言台のモニターの書き込んでいる様子だった。


証人(山田)「書けました。」

検察官「次に、木刀の置いてあった位置を、これはアルファベットを使って、@と書いてください。」

証人(山田)「はい。・・・書けました。」

検察官「次に、証人が人影に小手を入れたときの両者の位置を、証人を②、人影を㋑として書いてください。」

証人(山田)「はい。・・・人影は私に近づいていたので問題ないのですが、私は人影を見たときと変わっていないのでどうすればいいですか。」

検察官「では、右上の余白に、②は①の位置と同じ、と書いてもらっていいですか。」

証人(山田)「はい。」

検察官「次に、人影が転んだときの証人と人影の位置関係を、証人を③、人影を㋒として書いてください。」

証人(山田)「はい。・・・・・・書けました。」

検察官「ありがとうございます。書き込みはこれで終わりですので、書記官のほうで、この画像のスクリーンショットをお願いします。」

書記官「はい。しばらくお待ち下さい。」


 しばらく、沈黙の時間が流れる。

 印刷機が動く。

 書記官が裁判長に印刷物を見せると、裁判長が頷いた。


裁判長「画像の保存は正常にできたので、検察官は尋問を続いてください。」

検察官「証人は、さきほどの一連の流れの中で、この人影が誰だか分かりましたか。」

証人(山田)「とっさのことで、どこかで見たことがあるようには感じましたが、誰だというのは分かりませんでした。」

検察官「警察官が来て、相手を捕まえた後、相手の人物について、証人と何かやりとりはしましたか。」

証人(山田)「はい。相手は飽田治郎あきたじろうと名乗っているが心当たりはあるかと聞かれて、少し記憶をたぐって、少し前に、新店舗でトラブルを起こした人物の名前として、その店の店長から聞いたのを思い出しました。」

検察官「そうすると山田さんを襲った相手というのはここにいる被告人のことだったということでよろしいですね。」

証人(山田)「はい。」

検察官「トラブルの時の店長というのは、占部理うらべおさむさんでよろしいですね。」

証人(山田)「はい。」

検察官「被告人とは、そのトラブル以前から接点はありましたか。」

証人(山田)「確か、飽田氏は過去に近辺で中華料理店をしていたので、はっきりとした時期は覚えていませんが、いくどか、何年も前、十年とかそのくらい前かもしれませんが、商工会が関わるイベントの関係で顔を合わせて多少のやり取りをしたかと思います。」

検察官「本件の前から被告人の顔を見知っていたということですかね。」

証人(山田)「見知っていたというほどしっかり覚えていたわけではなく、事件があって記憶や情報を整理して思い出しました。」

検察官「それ以外に被告人とは何か関係はありますか。」

証人(山田)「・・・先程述べたトラブルの背景にもなりますが、どうも、私の新店舗のところに元々被告人の店があったようですが、、、関係といってもそのくらいのものです。」

検察官「薄いというか人間関係というほどの関係性もなかったということですか。」

証人(山田)「そうですね、関係と言われても特にはないというのが、正直な感想です。」

検察官「では、最後に、被告人に対してどのような処罰を求めるか、証人の気持ちを聞かせてください。」

証人(山田)「今回、いきなり灯油をかけられて服は使い物にならなくなりましたし、そもそも、何で私がいきなり襲われないといけなかったのか、全く分かりません。私が成功していくのと、被告人が失敗していくのは全然関係ないことで、たまたま同じ場所で店の営業をしたからといって、因縁を付けられても困ります。被告人には同じことをしないよう、刑務所に入ってしっかりと反省してもらいたいと思います。」

検察官「検察官の主尋問は以上です。」


裁判長「では、弁護側の反対尋問をどうぞ。」

 検察官が着席すると、裁判長が弁護側に声を掛け、主任弁護人ではない若い弁護人が立ち上がった。


弁護人「それでは弁護人の若井わかいから質問いたします。証人の武道の腕前はどの程度のものですか。」

証人(山田)「空手、剣道、弓道のそれぞれで段位を取った程度です。」

弁護人「剣道は何段でしたか。」

証人(山田)「2段です。」

弁護人「証人から見て、被告人って強そうに見えましたか。」

証人(山田)「いや、特に何か武道みたいなのをやった人ではないなとは思いました。」

弁護人「証人と比べたら被告人のほうが弱いでしょうね。」

証人(山田)「それはそうだと思います。」

弁護人「では、事件のことに入ります。事件のとき、玄関前にいた証人に向かって被告人が近付いてきたとき、どんなことを考えましたか。」

証人(山田)「誰だ、何だ、という驚きの気持ちでいっぱいでした。」

弁護人「恐怖なんかは感じなかったということですね。」

証人(山田)「感じるいとまはなかったです。」

弁護人「飽田さんが、素早く迫ってきたという感じではなかったんじゃないですか。」

証人(山田)「素早いということはなかったですが、不意を突かれてすぐに反応できなかったです。」

弁護人「液体をかけられたとき、証人は何を考えていたのですか。」

証人(山田)「この液体は何だ、灯油か、身を守らないと、という感じでとっさに木刀をつかみました。」

弁護人「でも、証人からしたら飽田さんは強くなさそうなんですよね、木刀の必要性がありましたか。」

証人(山田)「まあ、被告人は強そうに見えなかったのはそうですが、何が起こるのか、何が出てくるかは、分かりませんでしたので。」

弁護人「飽田さんが突き出した手に、証人が小手を入れたとき、証人からは飽田さんが手に何を持っていたのかは分かったのですか。」

証人(山田)「分かりませんでした。」

弁護人「飽田さんの手を木刀で叩いたのは、ちょうど手が叩きやすい位置に手があったからですかね。」

証人(山田)「それはそうなります。」

弁護人「叩かれた飽田さんが逃げ出しましたが何故追いかけようとしたのですか。」

証人(山田)「犯人を捕まえたかったからです。」

弁護人「犯人が怖いとは思いませんでしたか。」

証人(山田)「そのときは夢中だったのでよく分かりません。」

弁護人「もし証人が怖かったら、相手も逃げていくので、家に入って110番通報したら良いと思うのですが、証人がそうしなかったのは飽田さんを怖いと感じていなかったからなのでしょう。」

検察官「(立ち上がりながら)異義があります。弁護人の意見を証人に押し付けるものです。」

裁判長「弁護人、ご意見は。」

弁護人「飽田さんを追いかけた際の証人の心境について詳しく確認しているだけであって、異議には理由がないと思料します。」


 裁判長が左右と若干遣り取りをした。


裁判長「異議を棄却します。証人は質問に答えてください。」

証人(山田)「質問をもう一度お願いします。」

弁護人「要するに、怖ければ追いかけなくて良いののに、あえて飽田さんを追いかけたことからすると、被告人に対して恐怖を感じてはいなかったのですね。」

証人(山田)「そうですね、ほとんど無かったのだと思います。」

弁護人「証人は逃げる飽田さんに対して何回も木刀で叩いたんですよね。」

証人(山田)「そうですね、逃がしたくなかったので、相手の下半身を右手に握った木刀で何度か叩きました。」

弁護人「飽田さんが転んだのはその打撃が強かったからではないですか。」

証人(山田)「私が叩いたのが効いて倒れたという感じではなかったです。」

弁護人「倒れた飽田さんの上に乗る際、飽田さんの右脇腹に肘打ちか膝蹴りを入れませんでしたか。」

証人(山田)「その時は、相手の背中に乗るような感じでもつれたので、狙って肘や膝を相手に入れたことはありません。」

弁護人「飽田さんを押さえつけているとき、殴ったり蹴ったりしていませんか。」

証人(山田)「殴ったり蹴ったりはありません。」

弁護人「暴れるなと言いながら小突いたり、背中を蹴ったりしていませんか。」

証人(山田)「『暴れるな』、『大人しくしろ』などと言いながら、押さえ込もうとして、手足を動かしていましたから、頭や背中に手が当たったりしたことはあるかもしれませんが、殊更に殴り付けたり蹴り付けたりはしていません。」

弁護人「体重をかけて息ができないようにしたことはないですか。」

証人(山田)「逃げられないように押さえつけていたのは事実ですが息をができなくなるように、殊更にのしかかったことはありません。」

弁護人「ところで、証人と飽田さんの関係ですが、商工会の地域振興イベントの際、飽田さんを大勢の人がいるところで大声で叱りつけることがありませんでしたか。」

証人(山田)「記憶にありません。」

弁護人「それは覚えていないということですか、それとも、そういうことはなかったということですか。」

証人(山田)「……記憶している限りで、そのようなことはありませんでした。」


 弁護人がインカムを隣りにいる主任弁護人に渡すと席に座り、代わりに主任弁護人が立ち上がった。


主任弁護人「主任弁護人から質問をします。今回の木刀はいつから傘立てに置いてあったのですか。」

証人(山田)「……少し前からですね。」

主任弁護人「令和4年10月の証人の新店舗での出来事がきっかけですか。」

証人(山田)「……そうだったかもしれません。」

主任弁護人「新店舗でのことは、言ってはなんですが、酔っ払いのたわ言ですよね、なぜ、自宅前の傘立てに木刀を用意したのですか。」

証人(山田)「……虫の知らせでしょうか。」

主任弁護人「場面が変わりますね。飽田さんが証人に押さえつけられていたときのことですが、飽田さんは証人から色々されて、『痛い〜』とか『止めてくれ〜』などと言ってはいませんでしたか。」

証人(山田)「確かに、何か自分勝手なことを言っていましたが、犯人が舐めたことを抜かすなと思って、思いっきり体重をかけたり、ちょっと腕を強くひねってやったりしました。」

主任弁護人「飽田さんは、他にも「苦しいから退いてくれ」というようなことは言いませんでしたか。」

証人(山田)「どういう言い方だったか忘れましたが、苦しそうな様子があったときに力をかける場所を首の辺りからずらしたことはあったと思います」

主任弁護人「弁護側からは以上です。」


 主任弁護人が座ると、検察官が立ち上がる。


検察官「検察官から再主尋問を行います。1点だけですが、今回の事件を振り返って恐怖などの感情面ではどうだったのですか。」

証人(山田)「事件の時は興奮していたので恐怖などはほとんど感じなかったのですが、振り返ると、灯油に火が付いたら自分がどうなっていたか分かりませんし、何か凶器を持っていてとっさに反撃されたらどうなっていたかと感じ、後から冷静になってやはり危険や恐怖は感じました。」


 検察官が着席した。裁判長がちらりと弁護人席の方を確認した後、補充尋問の準備のために25分休憩を取ることを宣言して起立し礼をし、裁判長以外は退廷を始め、裁判長は証人らに声を掛ける。

 「証人は後で退廷のタイミングを指示しますから席に座ってください。」「被告人の退廷も少し待っていてください。」


 その間に裁判所職員が遮蔽板を再び設置していく。被告人の退廷によっても証人が見えない形になっていることを確認して裁判長に向けて両腕で丸を作る。これを受けて、被告人を退廷させ、次いで証人も退廷し、裁判長も退廷した。そして、傍聴席にいた自分たちもこれに合わせて休憩時間を取ることにした。

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