表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/19

ゆめうつつ1

2025/09/14全部修正

 子の長期休みの初め頃のある日、家に帰ると、子も配偶者もいなかった。夜分に子を連れ歩いたのかと、配偶者に対する怒りが湧いたが、まずは自分の身の回りのことを済ませることにした。

 一通り済ませても、それなりの時間が経っても戻る気配がないことから、配偶者の携帯電話に電話をかけるが電源が入っていないためかからない旨の音声が流れるばかりであった。不審と怒りを募らせてメール、SNS、SMS、電話を繰り返すが何の応答も得られなかった。その夜からしばらく、配偶者の実家や知っている配偶者の友人に連絡をして、所在を知らないかと尋ねていったが、どこからも芳しい返事はなかった。

 知らないので何か分かり次第教えてくれると応対してくれた者と言ってくれる相手もいたが、配偶者の親は、大人のすることなので私どもでは何とも、といった応対であり、それに似たような何かしら煮え切らない雰囲気の配偶者の友人などもいた。何かしら手がかりを得たいと思い、つい「隠し立てしても、ためにならない」旨を告げたりもしたが、頑なな相手の対応は変わらず、押し問答となるばかりであって、結局、子と配偶者の行き先は分からなかった。

 配偶者に問い質す通信を重ねつつ、やむなく、警察署に行って、行方不明者の捜索届を出したが、その後も何も情報を入らなかった。


 数週間後にたまたま必要があって住民票の発行を受けて記載をみると、配偶者と子の住民票が移されたが異動先の住民票を取得することは叶わないという。不条理なことだと憤りを覚えつつも、そういう決まりですのでとの一点張りに押し問答を続けても意味がないと考えて、知人の弁護士をしている真臼まうすに相談しようと事務所に電話をかけ、事務員に対し近いところで予約を入れ、当日、彼の事務所を訪れた。

 私が真臼に対し、配偶者と子の所在がしれないので何かしらの法的な手段によって探し出すことができないかと尋ねた。真臼は、いくつか前提を確認したいと言って、失踪前の家庭の状況や親子・夫婦関係を質問してきた。

 私としては、探す方法を教えてくれるか、探す手段を取ってくれれば良いのであって、いささか煩わしく感じながらも、特に問題はなかったと思う、子供達にはしっかりと躾をしてきたし、子供達も素直に従っているなどと返した。また、配偶者とは共働きであり、自分が忙しい時期には家事・育児ではある程度の負担は相手にもあったが基本的には自分の負担が大きかったこと、たびたびあった子供の急病などのときの通院などは自分がやっていたこと、ほかにも、身支度、宿題、生活習慣、日常の整理整頓などは、子供ができるように躾けてきたこと、学校行事等も出来るだけ参加できるようにしてきたこと。などなど。

 真臼は、いろいろと頷きながら話を聞き、ところどころ質問を挟み、聞き終えた。突然近くの道路で、ウーウーというサイレンが鳴り、道を開けてくださいという声が聞こえてきた。サイレンがしばらく鳴り響き、会話がしばし中断された。

 普通の静けさが戻ってしばらくしたところで、真臼はうーんと唸りながら、「それで、あなたとしては、夫婦関係なり家族関係なりをどうしたいのか。」と聞いてきた。私は、向こうの横暴でこれだけ困らされているのであるから、「まず相手に謝罪をさせ、元の生活に戻らせて、迷惑をかけた分について、今後の生活で上乗せして頑張ってもらいたい。」と告げた。

 真臼は、もう一度、うーんと唸ると、「家族関係はそれぞれに言い分があって大きな紛争になってしまっていることも多い。配偶者からも考えなり思いが出てくることもあると思うが、今の話だとどれが最優先でどれなら譲歩できるかと今のところを確認しておきたい。」と言葉を重ねてくる。私は、「今の要望も自分なりの要点で、最低限のところを上げたから、いきなりどれかを取り下げさせようとしても、どれも大事だとしか、言えない。」と言い、まるで配偶者の肩を持つかのような物言いに不満を口にすると、真臼は、そういうつもりではなかった、先の見通しを少し先走って考えてしまったので申し訳無いとの詫びが入った。


 真臼からは、「夫婦の間のコミュニケーションに何かしらの問題があったようにも思われるということで、その話し合いという体で、私のほうからあちらの実家辺りに連絡をもう一度取らせてもらいたい。」と話があり、そして、「これで、とりあえず連絡を付き、直接のやり取りに移行できれば、あなたの最低限の要望は果たせるね」と確認され、「連絡が取れるようになるなら上後は自分のやることなので、そこまでで良い。ただ連絡が取れなかったとして、それで終いとされても困るが」と尋ねる。


 真臼は、「それで難しいなら、夫婦関係調整の調停でも申し立てて相手からの反応があればそこでやりとりしてわだかまりを解決するという方法をとるこのもあり得ると思う。したがって、奏効しなかった場合には、夫婦関係調整の調停手続を行うというのを、私の方で代理することまではできる。」と言う。調停という公的な手続を利用するので、相手の直接的な反応が得られる可能性が上がるのでないかと期待したい、相手方の住所連絡先がこちらで分からなくても家裁が間に立つため、家裁で連絡先を把握できれば、こちらの申立てを通知してもらって手続が進められるといった説明もなされた。

「ただ、もし、この調停手続で上手くいかないとなると、手詰まりになるとも思われるので、さらに何をできるかどうかは、その時点で改めて考えることになるとは思う。」という見通しも確認された。もちろん、委任する場合の着手金や報酬の話もされた。結局は、私にとって、ぱっとこちらの困り事を解決できる方策はなく、回りくどくやらざるを得ないことに不満を覚えつつ、自ら行う手間も考えて、ひとまず、任意の連絡につき正式に委任契約をして、真臼を私の代理人とすることになった。また、それが駄目な場合の調停申立てについてもその時が来れば正式に契約することを約して、細かい事務手続の処理をして事務所を後にすることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ