●刑事裁判控訴審(問題編)
教員「さて、さきほどは、一審判決を受けた被告人が、その結論に不服を持ち、控訴した場合の、本人が受ける手続を簡単に見てもらった。」
教員「これを踏まえて、今日は、日本の刑事裁判、それも控訴審に関係する部分について、基本的な知識等を確認していきたい。」
このあと、教員は以下のそれぞれの問題を三回繰り返して読み上げた。
教員「それでは第1問。この事案では原審弁護人が控訴申立書と保釈請求書を出しているが、その提出先の組み合わせとして正しいものは次のうちどれか。」
教員「ア、控訴申立書も保釈請求書も△△高裁。イ、控訴申立書は△△高裁で、保釈請求書は○○地裁。ウ、控訴申立書も保釈請求書も○○地裁。エ、控訴申立書は○○地裁で、保釈請求書は□□簡裁。」
教員「続いて第2問。第一審判決の宣告日が4月15日(金)だとした場合、被告人はいつまで控訴ができるか。なお、4月は30日で終わって翌日は5月1日になり、この辺りの祝日は、4月29日(金)が昭和の日、5月3日(火)が憲法記念日、5月4日(水)がみどりの日、5月5日(木)がこどもの日である。」
教員「この事案を離れて、第3問。次に挙げる者の中で控訴の権限が無いのは誰か。」
教員「ア、原審弁護人。イ、被告人。ウ、第一審判決後に選任された私選弁護人。エ、勾留理由開示を申し立てた配偶者。」
教員「第4問。次の中から控訴の利益が否定されない者を全て選べ。」
教員「ア、有罪判決を受けた被告人。イ、起訴状記載の公訴事実のとおりに罪となるべき事実が認定され、求刑どおりの量刑が言い渡された場合の検察官。ウ、無罪判決を受けたがその理由が被告人主張の正当防衛ではなく、心神喪失だったときの被告人。」
教員「第5問。控訴趣意書において、『原判決の量刑はその当時としては相当である。ただし、原判決後に被害者との間で示談をし宥恕を受けるに至ったことから、原判決を破棄して執行猶予付きの判決を宣告するのが相当である。』のみ記載されていた場合の高裁の処理として、次のうち、考えられる場合には○を、考えられない場合には×をしなさい。」
教員「ア、控訴の理由がないとして控訴棄却決定を行う。イ、職権で取り調べて量刑の当否を判断する。ウ、控訴趣意書に対して補正命令を発する。」
教員「第6問。控訴趣意書が期限までに完成させられないとき、控訴審弁護人として望ましくない行動は次のうちどれか。」
教員「ア、控訴趣意書提出の最終日は努力目標であって、期限後可能な限り速やかに出す。イ、控訴趣意書提出の最終日の1週間くらい前に、被告人の移送が遅れた、主張が多岐にわたり整理に時間を要しているなどと理由を記載し、今後の活動と提出可能な期限の見込みを明らかにして控訴趣意書提出の最終日の延長を申請する。ウ、控訴の理由等の、主要な項目・内容を記載した控訴趣意書の概要を提出し、理由の詳細は速やかに控訴趣意書の補充書を追完して行う。」
教員「第7問。高裁の公判審理において、次に挙げるものの中で、被告人自身の活動として手続上認められるものを全て選べ。」
教員「ア、起訴状記載の事実に対して意見を述べること(罪状認否)。イ、自身で控訴趣意書を作成して提出すること。ウ、高裁で調べた事実も踏まえた弁論を陳述すること。エ、判決宣告後、上告に関する説明を受けること。」
教員「第8問。検察官が弁護人の事実取調べ請求に対し、本件のように『やむを得ない事由なし』との証拠意見を出した場合の、その意味内容を説明せよ。」
教員「第9問。第一審と同様の手続で行うものは次のうちのどれか。」
教員「ア、被害者等による心情に関する意見陳述の採否。イ、原審で取調済みの証人を再度証人尋問する際の、宣誓や偽証罪の告知等。ウ、被告人の最終陳述。エ、アないしウはいずれも異なる。」
教員「第10問。刑事控訴審の原則的な審理手続のあり方を何というか?○○審という表現で答えよ。」
教員「第11問。令和5年の法改正施行として誤っているものを選べ。」
教員「ア、控訴審では、保釈中の被告人に対しては、原則として判決宣告期日への出頭命令を出すこととなった。イ、裁判の執行に関して、強制の処分を新設するなどして調査方法の充実が図られた。ウ、第一審判決後の保釈に関して、考慮の順序・要素が具体化・明確化された。エ、被告人が正当な理由なく公判期日に出頭しなかった場合の罰則が定められた。オ、第一審判決後に保釈された者は、原則として保釈中の生活状況、就労状況、家族関係等につき、月1回報告しなければならなくなった。」
教員「以上で出題を終える。解答の終わった者は解答用紙をこちらまで提出するように。」
教員は、教室内にわずか3名の出席者に対してそう声をかけた。
(参考文献等)
基礎からきちんと控訴審(前編)第2東京弁護士会
https://niben.jp/niben/books/frontier/backnumber/201905/post-19.html
基礎からきちんと控訴審(後編)第2東京弁護士会https://niben.jp/niben/books/frontier/backnumber/201906/post-24.html
など




